黄昏一番星

更科二八

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2章 終末を呼ぶ狼

270話 不安な1日

タイガが街を出てから16日目
今日は俺もガグも仕事は休みにした。

2人とも落ち着かない気持ちのまま仕事はできないと言う事で落ち着けるための1日だ。
ガグは今日の夕方、娼館が開く時間にカイルに会いにいくという。
カイルは結構人気がありあまり空いている時がないのだという。
俺が相手できたのは運がよかったのと、初めての客には良い相手をつけてくれる店なんだとか。
だいたい女目当ての娼館に男娼がいること自体特殊だ。
男とやりたいなら専用の店かハッテン場なるものがある。
興味はあったが、普人族の姿のときは俺は結構顔が広く、仕事に影響があると思い行った事がない。

話を戻して俺の予定はというと何もない。
ただダラダラ過ごしていては心配ばかりが募ってしまうので、外にでてとりあえず戦士兵団の詰め所を目指している。
モーガン達のことが気になるから何か情報得られないか聞きにいくのだ。
ガグも暇なので付き添ってくれている。
戦士兵団の詰め所は配達の仕事をしなくなってからは全く来なくなってしまった場所だ。
兵舎には世話になっていたが、これまで詰め所にいくならコリンズ団長などとも面識がある魔法兵団の方だった。
一応戦士兵団の団長は面識はないものの姿は見た事がある。
会う機会があれば兵舎で世話になっていたから礼は言っておきたいとは思っている。
そうこう考えているうちに、北街区の西側にある詰め所に到着した。

「兵士団の詰め所なんて初めてくるな」
「俺は前の仕事で配達にきてたから久しぶりだなー2ヶ月ぶりぐらいかな」

開け放たれた門を潜ると門の内側にいた兵士に要件を伝える。

「戦士兵団のモーガンって戻ってきてるかな?」
「モーガン?あいつは聖女様たちを妨害したとして手配犯になってるぞ、何の用だ?」
「えっ!手配犯!?いやー用って程でもないんだ、ただしばらく姿を見なくて気になってたから何かわかるかと思って来てみただけなんだ」
「なんだ、そういうことか。今の所は行方知れずで捜索中だ」
「そうなのか・・・モーガン・・・」
「気の毒にな、でもモーガンを見つけても決して匿おうなどと思うなよ。お前も罪に問われるからな」
「わかった、何かあれば知らせるようにするぜ」
「よろしく頼む」

モーガンたちの行動は既に兵士たちにバレていて手配までされているとは思わなかった。
余計に不安になるが、落ち着いて兵士たちに協力的な意思を示してこの場をやり過ごそうとした。
そして帰ろうとしたときだった。

「おおお!!なんだ、まて!やめろ!」

ガグが突然大きな声を上げ振り向くとガグの横には長い赤髪の女性がガグの首に剣を突きつけていた。
見覚えがある。戦士兵団長のサファイアさんだ。

「だっ団長!」
「むっ、人違いか。すまない」
「やめてくれよ、肝が冷えた・・・」

サファイアさんは持っていた剣を消すとガグにちゃんと頭を下げて謝っていた。

「団長・・戻って早々騒ぎ起こすのやめてください。というか戻ってくるの早くないですか?」
「んー似てたものでつい。戻らされたというべきか、不本意ながら戻ってきたわ」

なんとも煮え切らない返事をするサファイアの様子に違和感がある。
なんとなくタイガの気配みたいな感じがする。
ガグを誰かと勘違いしたところを見ても間違いなくタイガに何かされたんだろう。

「あ!あなたもしかしてあの鬼と一緒にいた犬!」
「え!俺!?」
「他のどこに犬がいるのよ。一時期うちの兵舎で匿ってたのはあなたでしょ?」
「その節はどうもお世話になりました」

礼を言おうと思っていたら凄いタイミング良く会えてしまったなと思いつつちゃんと礼を言う。

「それよりもあの鬼ってのはなんなの?あいつのせいでもうめちゃくちゃよ!」
「タイガがどうかしたのか?」
「そう!タイガよ!聖女様の行く手を悉く妨害するし兵士は誘拐するし、挙句私を眷属呼ばわりして、引き返したくてもできないまま戻ってこざるをえなかったわ」

まさかのタイガの様子が聞けてしまった。
かなり派手にやっているようだ。
サファイアの様子からはタイガの妨害はかなり効果を出しているようだ。
それなら予定通り王都に着くことを阻めていそうだ。
そしてサファイアが言った眷属という言葉にタイガの気配がしたことの理由がわかった。
同じ眷属同士ならこうやってわかるんだろうな。
眷属には命令して行動を強制させられると聞いたから、タイガは聖女の呪いを受けている人間を眷属にして無理やり解放してるのかもしれない。
なによりサファイアの魂をみると呪いを受けた特有の歪さになっている。

「眷属呼ばわりというか、眷属になってるんだぜ。タイガに命令されなければ特になんともないぞ」
「嫌よ、あんなのの眷属なんて!眷属辞める方法ないのかしら。もしこの街に戻ってきたらとっ捕まえてやる!今度こそ負けないわ!犬、いいこと、あいつがもしこの街に来たら必ず私に報告に来なさい、市民としての義務よ!」
「わ、わかった」
「よし、ぜったいよ!」

返事を聞いたサファイアはそのまま詰め所の奥へと向かって去っていった。
サファイアにめちゃくちゃ凄まれてつい返事をしてしまった。
タイガはとんでもない眷属を作ってしまったように思う。
でもサファイアに会って気づいたが、俺の中にある眷属としてのタイガとの繋がり。
これがなくなっていないという事はタイガは無事という事なんだろう。
その事がわかってめちゃくちゃ嬉しい。

予定ならば今日明日で聖女討伐が行われるだろう、妨害役のタイガの役目もじき終わる。
今日は眷属の繋がりをずっと意識しておこう。
タイガの方はちょっと落ち着いたが、モーガンは相変わらず心配だ。
街に帰ってきてはいるが兵士団は把握していないとなればスズナさんが匿っているのだろう。
貴族に匿われているなら大丈夫だとは思うが、いつになったら会えるのだろうか。
ちゃんと体が動かせる状態で会えるといいな。
感想 2

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