黄昏一番星

更科二八

文字の大きさ
310 / 520
2章 終末を呼ぶ狼

307話 ゴーストの発生源

しおりを挟む
「本当に地下なんてあったんですね・・」

屋敷の右棟の奥にある階段を調べると、荷物を置かれていたスペースの下に扉が隠されていて地下へと続く階段があった。

「使用人の住居スペースだろうとか聞いたけど」
「昔の貴族は使用人の存在を隠したがってましたからね。それの名残なのかもしれません」
「地下は建て替える以前のものをそのまま使ってるらしいから、ちょっと怖いな」
「慎重にいきましょう」

長く放置されていた場所に入るというのはちょっと怖い。
何が出てくるのか分からないのでしっかりと警戒は怠らないようにする。
下半身の警戒体制がまるでない状態なのだが・・・。

階段を降りると木でできた扉があり慎重に開いて、カーティス氏が中を魔法で照らす。

「臭え」

じめっとしたカビ臭い臭いと動物の糞のような臭いも感じる。

「清掃依頼出した方がいいですね」

全くその通りだろう。
清掃部門の仕事ってこんなこともするんだな。
3人躊躇いつつも地下室へと踏み込んだ。
入ったすぐは広いスペースがあり椅子や机が置かれている。
部屋の隅には干からびたネズミの死体や虫の死骸が溜まっている。
見たいものではないな。
ゴーストもいたが、ガルシアさんが速攻で浄化の火魔法をぶつけて燃やしてしまった。
ガルシアさんは火魔法多用するので聞いてみたらやっぱり火属性らしい。

「まだヤバそうなのは出てこねえな」
「もう強いのは出てきてほしくないな」

地下にはいくつかの部屋があってそこも順に確認していく。
話に聞いていた通り、倉庫や使用人の居住スペースだった。
ちゃんと片付けられていて余計なものは残っていなかった。
部屋の壁は一部ひび割れていたり水が染み出していたりしたのでしっかり補修が必要そうだった。

「ここも何もないですね」

一番最後の部屋を開いて確認しても狭い空間があるだけだった。

「んーなんか聞こえるような」
「聞こえるなー」
「ほほう、何でしょうねー」

微かにだがカチャカチャと音がする。
獣人の耳には聞こえるぐらいの微かな音だ。
しばらく前から聞こえていたのだがここが一番大きく聞こえると思う。

「やっぱり気のせいじゃないよな?床からか?」
「そうだな」

3人で床を探っていくと埋め込み式の取手が見つかった。
そこに手をかけて上に持ち上げる。

「うわっ!」
「こんにゃろ!」

床板を持ち上げると大量の人面が張り付いたようなデカいゴーストが潜んでいてビビった。
ガルシアさんがすかさず燃やしてしまった。

「はー心臓にわるい」
「ははは、僕も今のは驚きましたね」
「もう終わりにしてーぜ・・」

ゴーストがいなくなった床の下には更に地下へ続く階段があった。

「俺が図面で見た時は書いてなかったな」
「増設されたものなのか、めちゃくちゃ怪しいな」
「ワクワクしますねー」
「なんかいるのは間違いないから気をつけて確認するぞ」

ガルシアさんと俺は武器を構えて階段を降りて先にある扉をゆっくりと開いて中に魔法で明かり灯す。
ずっと聞こえていたカチャカチャという音が大きくなる。

「わースケルトン!」
「なんでた?」
「この部屋かなり魔力が濃いぞ」

地下二階となる部屋は狭く、2体のスケルトンと呼ばれる人骨の魔物が徘徊していた。

「ガルシアさん、骨は残るようにしてもらってもいいですか?」
「趣味用じゃないよな?」
「ちゃんと供養する為です」
「了解」

ガルシアさんが部屋へ踏み込むと相変わらずの魔法の速さで普通の浄化の魔法をスケルトンに浴びせて倒してしまった。

「流石です」
「普通の浄化の魔法は火魔法よりコントロールがむずいな」
「掃除用の魔法で倒すんですから凄いですよ」
「中に入ってみるとわかるけど凄い嫌な感じの魔力だな」
「何かの研究でしょうかね?壁に呪文が書かれてますね?」
「いや、これは保存の魔法っぽいな。これだけならただの倉庫でもあるんだが、スケルトンだからな、死体置きっぱなしにしたのか」
「死体の魔力も霧散せずにここに保存されて澱んでしまったわけですね。ゴーストの発生元もここでしょうね」
「だろうな。それにしても魔力が濃いな。死んだやつは相当な魔力持ちか?」
「2人ともよく平気だよな・・人が死んでると思うとしんどい」
「俺は仕事で何度かこんな現場見てきたからな」
「詳しく聞きたいです!」
「話せねえよ!」

確かにガルシアさん兵士だし、色々経験あるか。
俺もきっとこの先呪いの獣と関わる可能性がある以上は人が死ぬ現場に居合わせる可能性もある。
気をしっかり持てるようにしておかないと。

気を引き締めて改めて部屋をしっかりと確認する。
壁と天井には呪文が書かれているのはカーティス氏の言った通り。
気になるのは床。
部屋全体魔力が濃いが床からは更に強い魔力を感じる。

「床下なんかないか?」
「まだなんかあるか?」
「ここの床板外せますね」
「はー絶対良くないの出てきそう」

うんざりとした気持ちで床板の隙間に剣を突き立てて床板を持ち上げる。

「・・・朝一で衛兵呼んでこないとな」
「ギルドの方にも神官様を呼んでもらうように手配しないとですね・・」
「俺案件かも、シモンさんに報告出さないと」

床下からは複数のミイラと魔石がでてきた。

「幽霊屋敷になるはずだわ」
「人為的にしていたってことですよね」
「だろうな、死体隠すだけなら魔石と一緒にしないだろ」
「カーティスさん真似したらダメだぞ」
「流石に人の道を逸れるようなことはしませんよ」
「とりあえず部屋中浄化するぞ。ちゃんと供養までしたらゴーストは発生せんだろ」
「ですねー浄化のほうはお願いします」

ガルシアさんは苦い表情のまま部屋とミイラに浄化の魔法をかけていった。

「エドガーがおもろいから気が楽になるぜ」
「滑稽ってか?」
「まあこの状況じゃそうだな」

俺は靴だけ履いて裸だからな。
まあガルシアさんの気を楽にできているのであれば丸出しになっている甲斐もあるだろう。

「ガルシアさんも脱げば?」
「俺はそんな趣味ねえよ」
「俺も無いけど!」
「わはは!よくいうぜ!」
「後で服探すの手伝ってくれよ」
「おー明日な」
「まあそれでいいけどさ。流石に疲れたな」
「あとの面倒事はサボり2人に任せようぜ」
「だなー」
「さて!浄化おわり!」
「お疲れ様でした。ゆっくりと休んでください」

終わったと思うと体が一気に重たくなる。
生首と戦ったときからかなり気合で体動かしてたからその反動が一気に来たが部屋までは気合いを保って移動した。

「なあ、エドガー」
「なんだー?」
「エドガーの部屋で寝ていいか?」
「いいぞー」
「そんじゃ着替えたらそっちいくわ」
「わかった」

ガルシアさんが意外な申し出をしてきたが、正直ありがたかった。
ずっと気を張っていたのだが正直ずっと怖かった。
1人は心細いと思っていたから俺からもガルシアさんに頼もうかと思っていたぐらいだ。
1人部屋に入ってガルシアさんを待っているのはかなりドキドキした。
落ち着かないので荷物整理をしたり、盛り塩の確認をしながら待った。
肌着ぐらいは替えを持ってきていたのでパンツだけ穿いた。
凄い落ち着く。
そうこうしている間にノックがなった。

「どうぞー」
「よー、すまねえな」

ゴーストかもしれないと少し身構えたがちゃんとガルシアさんがやってきた。

「格好つかねえが、1人は怖くてな」
「俺も怖かったからありがたいぜ」
「わはは、だよな!俺だけじゃなくてよかったぜ」

ガルシアさんは部屋着姿で、ベッドに敷かれてた薄いマットを担いできてい来ていた。
それを俺のベッドの隣に設置して体を横にした。

「パンツ穿いたんだな」
「丸出しのほうがよかった?」
「落ち着かねえから穿いてた方がいいな」

まあ普通の感覚ならそうだろうな。
タイガやガグなら俺の見て喜ぶけど。

「今日は本当助けられたぜ。ありがとな」
「それは俺のほうこそ。ガルシアさんがいなかったらゴースト倒せないし」
「エドガーは勇気があるよな」
「ガルシアさんだって」
「俺は場数踏んできてるだけだ。エドガーは剣を習って2ヶ月ぐらいなんだろ。すげえよ」
「へへへ、必死なだけだけどな。生首の時だって動かないと死ぬだろ。せっかくタイガにもらった命だから簡単には諦めたくないんだ」
「生首の話はやめてくれ。マジで怖かったんだ。でもそうだな、生きることを諦められねえよな。つーか俺はタイガの野郎から死ぬなっつう命令されてるからな。俺の意思で諦められねえんだ」
「自殺なんてするから」
「まったく何考えてたんだかな。バカなことしたぜ」
「へへへ、そう考えられてるならもう大丈夫だな」
「そうだな」

聖女の呪いの影響が濃かったときはかなりきつかったそうだ。
タイガが眷属として無理矢理命令したことで聖女の呪いに抵抗できるようにしてくれている。
ほんとタイガは凄い。
タイガがゴーストの前で脱いだらあの生首だって消し飛んでたかもな
いや脱ぐ必要すらないか。
そう考えたら生首も少し怖くなくなった気がした。

「エドガー、おやすみ」
「ああ、おやすみガルシアさん」

ベッドはダブルで広いのだが、一緒に寝ようとは誘えなかった。
下心も無くはないが、それ抜きにしてもタイガやガグのように、ガルシアさんもお互い気遣いしない関係になれたらいいな。
外はもう明るくなり始めている頃俺とガルシアさんは長かった夜を終えて眠りについた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合系サキュバス達に一目惚れされた

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

精霊界移住相談カフェ「ケルークス」

空乃参三
ファンタジー
 精霊は契約した相手の前でのみ、自らの本性をさらけ出すことができる。  本性をさらけ出すことのできない精霊は「揺らいで」いき、「揺らぎ」が限界を超えると自身が司る何かに多大なる損害を与えてしまう。  これを問題視した精霊たちは、彼らの契約相手の候補として人間に目をつけた。  人間を精霊の契約相手にするためには、人間を彼らが住む「存在界」から精霊の住む「精霊界」へ移住させる必要がある。  移住を促進するため、精霊たちは何ヶ所もの「精霊界移住相談所」を設立した。  「ケルークス」はそのような「精霊界移住相談所」のひとつに併設されるカフェである。  存在界から精霊界への移住は無期限の片道切符。一度移住すれば戻ることはできず、永遠に精霊界で過ごすことが求められる。  あなたはこの移住にチャレンジしますか? ※本作品はフィクションです。実在の人物、団体、法規制、および事件等とは関係ありません。 ※本作品は、ノベルアップ+様でも同様の内容で掲載しております。 ※毎週火曜20:40更新予定です。

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

独孤皇后物語~隋の皇帝を操った美女(最終話まで毎日複数話更新)

結城 
歴史・時代
独孤伽羅(どっこ から)は夫に側妃を持たせなかった古代中国史上ただ一人の皇后と言われている。 美しいだけなら、美女は薄命に終わることも多い。 しかし道士、そして父の一言が彼女の運命を変えていく。 妲己や末喜。楊貴妃に褒姒。微笑みひとつで皇帝を虜にし、破滅に導いた彼女たちが、もし賢女だったらどのような世になったのか。 皇帝を操って、素晴らしい平和な世を築かせることが出来たのか。 太平の世を望む姫君、伽羅は、美しさと賢さを武器に戦う。 *現在放映中の中華ドラマより前に、史書を参考に書いた作品であり、独孤伽羅を主役としていますが肉付けは全くちがいます。ご注意ください。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

処理中です...