【完結】再会 -最期の時に 最期の場所で-

華景和音

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第3章 追憶

捨て猫

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リクとナオは学校から帰宅する方向が一緒だった。2人は学校からの帰りに、よく近道で森の中を走っている道路を通って帰った。道路の上は木々が覆っており、途中に小さい神社があった。

ナオ「ここって涼しいわね。」

リク「山を吹き下ろす風は冷たいな。」

ナオ「やっぱ夏はこの道がいいわ。」

リク「日陰になってるし、風は涼しいしな。」

そう言ったときに、リクは昔も同じ会話をしたような感覚がした。

リク(この会話、昔したことがあるな・・・)

そのときナオが行った。

ナオ「ねえ、あれって?」

リク「何?」

ナオ「あのダンボールの中から猫の鳴き声がしない。」

ナオはそう言うとダンボールの方に走っていった。

ナオ「ほら、やっぱり猫だ。」

リク「え?猫?」

ナオ「これまだ小さい子猫だ。」

そう言ってナオは子猫を抱いた。ダンボールの中には猫の餌と水が入っていた。その横に紙の切れ端があった。リクはその紙を拾って読んだ。

紙(もし親切な方がいたら、この子をもらってあげてください。)

リク「これ、捨て猫だ。」

ナオ「えーっ!ひどいっ!こんなにも可愛い子なのに。どうしたらのいいの?」

そう言いながらナオはリクの方を見た。そのときリクの中に記憶が蘇った。その記憶では、アリスがそこにいた。

アリス「ねえ、どうしたらいいと思う?」

リク「え、ちょっと待って。携帯で調べるから・・・。」

そう言ってリクは携帯を取り出した。

リク「えっと。捨て猫を見つけた場合には、動物愛護センターに知らせるのがいいって。」

アリス「動物愛護センター? 」

リク「ああ、比奈市にはないけど、横浜の方にあるみたい。」

アリス「ちょっと遠いわね。」

リク「あと、動物愛護センターだと殺処分の可能性もあるって。」

アリス「殺処分っ!?ダメだよそんな。」

リク「それ以外だと、警察に届け出るとかかな?」

アリス「ねえ、リクのところで飼えないの?」

リク「ウチっ!?いやあ、猫を飼うなんて考えたことないかなー。」

アリス「私の周りに猫アレルギーの人がいるの。だからちょっと無理かな。」

そのとき喫茶店のルグレがくしゃみをして、それを見たイリアが「大丈夫?」と聞いた。

リク「ウチはどうか分からないけど、猫が欲しい人を探してみるのもありかもね。」

アリス「探すってどうやって?」

リク「オレたちの人間関係って学校しかないからな。クラスメイトか先生に聞いてみるしかないけど。」

アリス「じゃあ、一旦学校に行ってみる?」

そのとき猫が「ニャー。」と鳴いて、それを聞いた2人は笑った。

――

2人は学校に戻って職員室まで行った。職員室には担任のミクがいた。

ミク「どうした?」

リク「いや、ちょっと捨てられた子猫を拾いまして。」

ミク「拾ったって学校では引き取れないぞ。」

アリス「分かってます。もしかしたら先生方や職員の方に、猫を欲しがっている人がいないかなって。知り合いの方でも全然大丈夫なんですけど。」

ミク「聞くだけ聞いてみてもいいが、見つからなかった場合はどうする?」

ケント「その場合は、動物愛護センターに届けるつもりです。」

ミク「そうか。今日はもう遅いから、聞くのは明日になるな。」

アリス「大丈夫です。今日はとりあえずリクの家で預かってもらうんで。」

それを聞いてリクは「えっ!?」という顔をした。

アリス「じゃあ、また明日のこの時間に来ますね。」

ミク「分かった。それまでには聞いておく。」

リクとアリスは職員室を出た。

リク「オレの家に連れて来るのかよ。」

アリス「だって、それしかないんだもん。また元の場所に置いておいたら可哀想だし。」

リク「強引だな。」

アリス「ということで、今からリクの家まで行こう。」

リクとアリスは、途中、コンビニで猫の餌を買ってリクの家まで行った。


――

アリス「へえー。リクのウチっておしゃれだね。」

アリスは子猫を撫でながら言った。

リク「母親の趣味だよ。まあ、適当に座ってよ。何か飲む?」

リクがそう言うとアリスは笑った。

アリス「リクって何か女子みたいだね。」

リク「何で?」

アリス「女性的な気づかいをするから?」

リク「まあ、いつも母親がやってることを真似しただけなんだけど。」

アリス「あー。リクのお母さん、どんな人か想像できるわ。」

リク「まあ、気を遣う人だね。」

アリス「今日、親御さんいないんだ。」

リク「居た方が良かった?」

アリス「いや、いたら緊張するじゃん。」

リク「帰って来るのが夜の9時くらいだよ。だから当分大丈夫。」

アリス「こんなに綺麗にしている家だから、子猫なんて連れて帰ってきたら怒られるかな。」

リク「ここに連れて来るって言いだしたの、アリスだけど。」

アリス「それ知ってる。」

そう言ってアリスは笑った。そして、アリスは子猫の方を見て、「この家で良かったでちゅねー。」と言った。

リク「ちょっと新しいダンボール探してくる。」

リクは奥の部屋からダンボールを持ってきた。

リク「とりあえず、これに入れておこう。」

アリス「そんな小さなところに閉じ込めておくの?」

リク「だって、壁紙とか引っかいたりしたら大変だし。」

アリス「まあ、そうだね。」

アリスはダンボールの中に子猫を置いて言った。

アリス「キッチン借りてもいい?」

リク「いいよ。」

アリス「本当に?」

リク「うん。何で?」

アリス「いや、他人に台所立たれると嫌な人っているから。」

リク「ウチの人間は気にしないと思う。」

アリス「そう。」

アリスはコンビニで買ってきた猫の餌が入った袋を開け始めた。

アリス「餌を入れてもいいお皿とかある?」

リク「ああ、これなら大丈夫だと思う。」

そう言ってリクは流しに置いてあったお皿を洗い始めた。

アリス「私、男子と一緒にキッチンに立つの初めてかも。」

リク「ああ、なかなか無いシチュエーションだな。」

リクは照れた。

リク「オレも女子と一緒にキッチンに立つのは初めてかも。何か変な感じがするな。」

リクが洗ったお皿を布巾で拭いた。お皿をアリスの前に置き、アリスがお皿に餌を盛るために身体を傾けたときに、アリスの肩がリクの腕に当たった。アリスからはいい匂いがした。アリスは餌を乗せたお皿を子猫のところに持っていった。子猫は餌の匂いを嗅いだ後、餌を口に入れて食べはじめた。アリスとリクはしゃがんで餌を食べる子猫を眺めていた。

リク「大人用の餌だから心配だったけど、案外食べるもんだな。」

アリス「猫用の離乳食ってあるのかしら。」

リク「あるけど、こいつは歯が生えてるからな。柔らかい餌なら大丈夫だと思う。」

アリス「そう。」

しばらくリクとアリスは猫が餌を食べる様子を眺めていた。アリスが不意に言った。

アリス「ねえ、変なこと言っていい?」

リク「何?」

アリス「結婚生活ってこんな感じなのかな。」

リクは驚いて噴き出した。

リク「おいっ!突然、何言い出すんだよ。」

アリスは笑った。

アリス「今、ちょっとドキッとしたでしょ。」

リク「びっくりした!」

アリス「いや、離乳食はいつからいつまでとか、子猫が食事をする様子を見守りながら、健康に育てばいいなーとか、大人になったらそんなことを思うのかなーって。そんな自分、今は全然想像できないけどね。こんな感じなのかなーって。」

リク「まあ、オレも想像つかないけど。可愛いい子供の将来を考える点では同じなのかもな。」

アリス「じゃあ、お父さん、この子のことよろしくね。」

リク「おい、この子の父親をやるのは今日だけだぞ。明日は誰かの家に連れていく。」

アリス「じゃあ明日、引き取り手が見つかるといいね。」

リク「何で他人事のように言うの?」

アリスは笑った。

――

翌日の放課後、リクとアリスは職員室に行った。

リク「先生、猫の件、どうでしたか?」

ミク「ああ、それなんだが、一応貰い手が見つかった。」

アリス「良かったー。それで、誰ですか?」

ミク「体育の山田先生だ。」

それを聞いて2人は固まった。体育の山田と言えば髭ゴリマッチョで、子猫を抱いている姿をイメージできなかったからだ。

ミク「山田先生は大の猫好きだ。もう2匹いる。これで3匹目だ。」

リク「そうなんですね。」

アリス「それは良かったです。」

そう言ったものの、リクもアリスも複雑な表情を浮かべていた。

リク「じゃあ、後で連れてきますね。」

そう言ってリクとアリスは職員室を後にした。

アリス「山田先生かー。」

リク「まあ、見た目と猫に対する愛情は関係ないよね。」

リクは自分に言い聞かせるように言った。

アリス「そうなんだけど、私が猫だったらと考えると、何か複雑な気持ちだわ。」

リク「あの子猫って性別は?」

アリス「メスだったわよ。」

リク「まあ、山田先生って結婚してみてるみたいだし・・・。」

アリス「そうなのっ!じゃあいいかもっ!」

リク「どんな基準で考えてるの?」

アリス「まあ、私の勝手なイメージ?」

リク「何それ?」

アリス「山田先生がダメでも、奥さんがいい人かもよ?」

リク「山田先生ってもうダメ確定なの?」

アリスが笑って、リクもつられて笑った。

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