悠々自適異世界農場

テタの工房

文字の大きさ
1 / 1

第1話

しおりを挟む
アルフレッドは、十年間の病床生活の果てに息を引き取った。意識が途切れる直前、脳裏に浮かんだのは、愛してやまないアイドル、リリア・ベルモントが笑顔でトマトを収穫する姿だった。リリアの農業番組は、彼の辛い日々を照らす唯一の光だった。

そして、彼は目覚めた。若々しい体で、見慣れない風景に包まれて。ここは、中世ヨーロッパ風の異世界。森に囲まれた小さな村で、優しい老夫婦に拾われた彼は、自分の人生を改めて見つめ直す時間を得た。

「……あの番組みたいに、農業でもやってみようか」

闘病中、何度もリリアの番組を見ては、いつか自分もこんな風に穏やかな生活を送りたいと願っていた。その夢が、現実になったのだ。老夫婦から借りた小さな畑で、彼はまず、じゃがいもを植えた。前世の記憶と、番組で得た知識を頼りに、土壌の状態を調べ、肥料を与え、丁寧に苗を植えていった。

収穫は想像以上に豊かだった。大きくて立派なじゃがいもは、村人達にも評判になり、アルフレッドはたちまち村の人気者となった。彼の畑には、次々と新しい作物が植えられていった。小麦、大麦、そして様々な野菜たち。彼の勤勉さと、何よりも「美味しい」という結果が、彼の農業を支えていた。

やがて、アルフレッドの評判は村を越え、周辺の領地にも届くようになった。近隣の貴族、エドワード卿は、彼の農業技術に強い関心を示し、広大な領地の一角を彼に貸し与えた。アルフレッドは、大規模な農場経営に乗り出した。

エドワード卿の紹介で、様々な人材が集まってきた。精霊と契約できるエルフの女性、アリアは優れた農業技術を持ち、力自慢のドワーフ、ボルグは農具の製作に長けていた。人懐っこいドレイク、ファルコは、農作業の補助として大活躍。彼らは、アルフレッドの農場を支える大切な仲間となった。

農場は、順調に拡大していった。アルフレッドは、最新の技術を駆使し、効率的な農業システムを構築した。前世で培った知識と、異世界の魔法が融合し、驚くべき成果を生み出した。彼の農場は、豊饒の象徴となり、周辺の村々を潤した。

ある日、アルフレッドは、森の中で一匹のドラゴンと出会った。それは、巨大な体躯を持ちながら、穏やかな性格の老ドラゴンだった。彼は、アルフレッドの農場を気に入り、時折、農作業を手伝ってくれるようになった。ドラゴンの力強い爪で耕された畑は、驚くほどの豊作をもたらした。

アルフレッドの農場は、異世界でも屈指の規模となり、彼の名は広く知れ渡るようになった。しかし、彼は決して驕ることなく、いつも穏やかな笑顔で、仲間たちと協力しながら、農業を続けていた。

彼の生活は、決して華やかではない。しかし、そこには、穏やかな幸福が満ち溢れていた。リリアの番組で見た、理想の生活が、現実のものとなっていたのだ。太陽の光を浴び、土の匂いを嗅ぎ、仲間たちと笑い合う。それが、アルフレッドにとって、何よりも大切な時間だった。

ある晩、満月が夜空に輝いていた。仲間たちが集まり、収穫を祝う宴が開かれた。エルフの女性は、美しい歌声を響かせ、ドワーフは力強い踊りを披露し、ドレイクは、焼けた肉を運んできた。そして、老ドラゴンは、遠くから、温かい視線を送っていた。

アルフレッドは、満天の星を見上げながら、静かに酒を味わった。十年間の闘病生活、そして異世界での新たな人生。様々な出来事を経て、彼は、本当の幸せを見つけたのだ。それは、大金持ちになることでも、偉大な英雄になることでもなく、ただ、大切な仲間たちと、穏やかな日々を送ることだった。

彼の農場は、これからも、この地を豊かにし続けるだろう。そして、その中心には、いつもアルフレッドの温かい笑顔があった。それは、異世界に咲いた、小さな幸せの花だった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

男装して過ごしてたら、学園内でも札付きの悪で有名な男子に顔面殴られて、更に女だとバレて責任取るって土下座された話

一樹
ファンタジー
タイトル=あらすじ、です。 つまりはそういう内容です。

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

処理中です...