異世界ファンタジーまとめ3【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
45 / 81

静寂のペテン師

しおりを挟む
灰崎正義、通称ジャスティス。元・いかがわしいコンサルタント会社社員。彼の異世界転移は、ある日突然、目の前に現れたキラキラ輝く(しかし、よく見ると若干錆びている)女神によって起こった。

「選ばれし者よ!この世界を救うため、私に力を貸しなさい!」

女神、名前はアフロディーテ(らしい)。その言葉にジャスティスは、内心「またかよ…」とため息をついた。だって、彼の前にもう二回、似たような状況に遭遇しているんだもの。一回目は、超絶イケメン勇者として、二回目は、賢者として召喚された。どちらも、予想以上に大変で、結局は「静かに眠りたい」という願望を叶えるため、適当に事を済ませて帰還したのだ。

「…あの、女神さん。ちょっと聞いて良いですか?」

「何でしょう?」

「この世界、平和ですか? そして、美味しいラーメン屋とかありますか?」

アフロディーテは、ジャスティスの質問に一瞬戸惑った後、

「…平和ではありません。ラーメン屋はありません。」

と、あっさり答えた。ジャスティスの期待は、あっけなく打ち砕かれた。

「そうですか…じゃあ、すみません。ちょっと用事があるので…」

ジャスティスは、アフロディーテを置いて、辺りを散策することにした。剣と魔法の世界、と聞いていたが、今のところ、見かけるのは雑草と、妙に生意気なスズメくらいだ。

「静かに暮らせる場所を探さなきゃな…」

そう呟きながら歩いていると、一人の男に声をかけられた。男は、いかにも悪そうな顔つきで、鋭い眼光をしていた。

「おい、そこの男!お前、俺の縄張りを歩いているぞ!」

男は、明らかにマフィア風の男だった。ジャスティスは、かつてコンサルタントとして培った交渉術を駆使して、男と交渉することにした。

「ちょっと待って下さいよ。私は、この土地に詳しいわけじゃないんで、ただ通り過ぎただけなんです。」

「嘘つけ!お前、何か企んでいるな!」

男は、拳を握り締めた。ジャスティスは、冷静に状況を分析した。相手は力ずくで押さえ込める相手ではない。ならば、知略で勝負だ。

「実はですね、私は、この土地の所有者を探しているんです。もし、あなたがこの土地の所有者なら、土地を売ってくれるかもしれませんよね? かなり高値で買い取りますよ!」

男は、ジャスティスの言葉に一瞬戸惑った。土地の所有者? 高値?

「…土地の所有者か…確かに、俺が管理している土地だけど…」

男は、少し考え込んだ後、

「…いくらで買うんだ?」

と、尋ねてきた。ジャスティスは、事前に調べておいた土地の価値を元に、適当な金額を提示した。男は、その金額に満足したのか、すぐに承諾した。

こうして、ジャスティスは、この異世界で初めて自分の土地を手に入れた。しかし、彼の平穏な生活は、ここで終わらなかった。

土地を手に入れたことで、今度は隣接する領地の領主から、領土拡張の要求を突きつけられたり、謎のモンスターが襲ってきたり、さらに、あのアフロディーテが、再び現れて「やっぱり世界を救って!」と懇願してきたりと、次々と災難が降りかかってくる。

ジャスティスは、嘘と策略、そして、かつてコンサルタントとして磨いた交渉術を武器に、それらの困難を乗り越えていく。彼の目的は、あくまで「静かに眠ること」。だが、彼の周囲では、いつしか「静寂のペテン師」という異名が囁かれるようになっていた。そして、彼は気づいた。自分が、この世界の平和に、少なからず貢献していることに。

静かに眠ることは、もしかしたら、もう少し先のことになるかもしれない。しかし、ジャスティスは、それでも構わなかった。だって、彼は、すでにこの異世界で、自分なりの「平和」を見つけていたのだから。ラーメン屋はまだないけれど。  彼は、いつか、この世界で自分だけのラーメン屋を開くことを、密かに夢見ていた。それは、彼の新たな目標であり、静かな生活への、また別の道筋だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。 その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。 全15話を予定

処理中です...