異世界ファンタジーまとめ3【短編集】

テタの工房

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転生勇者の残響

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俺は、山田太郎。元・平凡な市役所の職員。書類の山と、上司の理不尽な要求に毎日追われていた、ごく普通の男だ。

ある日、いつものように通勤電車に乗っていたら、突然、眩しい光に包まれた。気が付いたら、そこは……中世ヨーロッパ風の世界。森の中だった。

「おいおい、冗談だろ…」

俺は、転生とか異世界転移とか、そんなの全く信じていなかった。まさか自分が、小説や漫画でしか見たことのない世界に放り込まれるなんて。

しばらくして、一人の女性に出会った。彼女は、エルフ族の女性で、名前はリリア。彼女は、俺に優しく話しかけてくれた。

「あなたは、迷子ですか?」

リリアは、俺が言葉を話すことに驚きながらも、親切に案内してくれた。彼女の話によると、この世界は、かつて魔王の襲来に苦しんでいたらしい。しかし、数年前、一人の勇者によって魔王は倒され、今は平和な時代を迎えているとのことだった。

「勇者様…って、誰?」

俺の質問に、リリアは誇らしげに答えた。

「それは、日本の英雄、佐藤勇太様です!彼は、魔法の力と圧倒的な剣技で魔王を打ち破り、この世界を救ったのです!」

佐藤勇太…その名前を聞いた瞬間、俺は背筋が凍る思いがした。なぜなら、俺は、勇者の活躍を記したニュース記事をネットで見かけたことがあったからだ。

「現代日本の知識」を、不用意に勇者が広めたため、この世界には現代の知識が溢れかえっていた。それは、良いことばかりではなかった。

リリアの案内で辿り着いたのは、王都だった。しかし、そこは、想像をはるかに超える混沌とした状態だった。

道路には、ゴミが散乱し、街のあちこちで建設中の建物が放置されていた。人々は、現代の技術を理解できず、混乱していた。

「……つまり、私は勇者さまの尻ぬぐいをするというわけですか」

俺は、王宮の重臣、老練な魔法使いであるアルバート卿にそう言った。

アルバート卿は、苦い笑みを浮かべて頷いた。

「佐藤勇太様は、確かに魔王を倒しました。しかし、彼は、現代の知識をこの世界に持ち込み、様々な問題を引き起こしたのです。技術は進歩しましたが、人々はそれを使いこなせず、社会は混乱しています。我々は、彼の残した問題の解決に追われているのです。」

俺の仕事は、現代の技術と、この世界の文化・技術の融合、そして、社会の混乱の収拾だった。

最初は戸惑った。俺は、ただの市役所職員だったのだ。魔法も使えないし、剣も振れない。

しかし、アルバート卿やリリア、そして王都の人々の協力もあり、俺は少しずつ、この世界の課題に取り組んでいった。

現代の知識を、この世界に合った形で活用する方法を考え、技術指導を行い、社会システムの改革を進めた。

例えば、現代の農業技術を導入することで、食糧生産を増やし、飢餓問題を解決。現代の医療技術を用いることで、病気の治療率を向上させた。

最初は、抵抗もあった。保守的な人々は、現代の技術を「邪悪なもの」だと警戒した。しかし、俺の誠実な態度と、目に見える成果が、少しずつ人々の心を動かしていった。

リリアは、俺の活動を陰で支えてくれた。エルフ族特有の優れた魔法能力と、人々とのコミュニケーション能力を駆使し、俺の仕事をスムーズに進めてくれた。

困難なこともあった。現代の技術を理解できない者、現代の技術を悪用しようとする者、様々な問題に直面した。

しかし、俺は諦めなかった。俺は、平凡な市役所職員だったかもしれない。魔法も使えないし、剣も振れない。でも、俺は、現代社会で培った知識と経験、そして、人々を助けるという強い意志を持っていた。

何年もかけて、王都は徐々に変わっていった。ゴミは減り、道路は整備され、人々の顔には笑顔が増えた。

ある日、リリアが俺に言った。

「山田さん、あなたは、この世界の本当の勇者です。」

俺は、照れくさそうに笑った。

俺は、魔法も使えないし、剣も振れない。でも、俺は、この世界の人々を救うことができた。

それは、もしかしたら、佐藤勇太という「勇者」が、無意識のうちに残した、もう一つの「奇跡」なのかもしれない。  俺は、これからも、この世界で、人々のため、そして、自分自身の幸せのために生きていこうと決めた。  この異世界での、俺の物語は、まだ続いている。
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