異世界ファンタジーまとめ3【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
77 / 81

破棄された婚約と、王子の正気

しおりを挟む
ルルフェイアはため息をついた。豪華な鏡の前に立つ自分の姿は、まるでガラス細工の人形みたいだ。美しい、とは誰からも言われるけれど、この美しさに、どれほどの重圧がのしかかっているのか、誰も知らない。

父である公爵は、婚約者であるサティアス王子に、まるで商品でも扱うように接する。「未来の王妃として、相応しい振る舞いをするように」と、いつも厳しく言い聞かせる。ルルフェイアは王室のしきたりやマナーにうんざりしていた。華やかな舞踏会も、笑顔で交わす会話も、全てが息苦しい。

特に最近、王子が寵愛しているというアリエナという女性の存在が、ルルフェイアをさらに悩ませていた。アリエナは、ルルフェイアとは正反対の、明るく奔放な性格で、王子を虜にしているらしい。

「アリエナ様を、側妃に迎え入れるおつもりでしょうか?」

ルルフェイアは、公爵の屋敷でアリエナを呼び出した。しかし、アリエナは一人では来なかった。サティアス王子と、彼の側近たちが大勢、彼女を取り囲んでいた。

「ルルフェイア。何をしているんだ?」

サティアス王子は、ルルフェイアを鋭い視線で睨んだ。彼の顔には、いつもの優しさは微塵も感じられない。むしろ、冷酷さすら漂っている。

「王子殿下。婚約…解消しましょう」

ルルフェイアは、溜息をつきながら言った。もう、この息苦しい状況に耐えられない。王室のしきたり、父の圧力、そしてアリエナの存在。全てが、ルルフェイアを押しつぶしそうだった。

「何だと?」

サティアス王子は、驚いたように目を瞠った。側近たちも、ざわめき始めた。

「ええ。婚約解消です。もう、私は…耐えられません」

ルルフェイアは、決意を込めて言った。今まで我慢してきた感情が、一気に噴き出した。

しかし、サティアス王子の反応は、ルルフェイアの予想をはるかに超えていた。彼は、今まで見せたことのないような表情で、ルルフェイアを見つめた。それは、驚きや怒りではなく、深い悲しみと後悔の色だった。

「ルルフェイア…許してくれ」

サティアス王子は、初めてルルフェイアに、心の底からの謝罪を述べた。今まで、彼はルルフェイアの気持ちなど、全く理解していなかった。彼は、自分の地位や権力に縛られ、ルルフェイアを、ただの「王妃候補」としてしか見ていなかった。

しかし、最近彼は変わった。ある出来事をきっかけに、彼は自分の傲慢さに気づき、本当の幸せとは何かを考え始めたのだ。アリエナへの寵愛も、単なる気晴らしに過ぎなかった。彼は、ルルフェイアへの愛情に気づくのが遅すぎたことを、深く後悔していた。

「今まで、君を傷つけてしまった。本当に申し訳ない」

サティアス王子の言葉は、誠実で、ルルフェイアの心を揺さぶった。彼は、自分の過ちを認め、ルルフェイアへの愛情を改めて告白した。

「でも…アリエナ様は?」

ルルフェイアは、まだ戸惑っていた。アリエナの事は、依然として気にかかっていた。

「アリエナには、全てを説明した。彼女は理解してくれた」

サティアス王子は、アリエナとすでに話し合ったことを明かした。アリエナは、王子の気持ちを受け止め、二人の関係を静かに祝福してくれたそうだ。

ルルフェイアは、サティアス王子の言葉に、静かに涙を流した。今まで抱えていた重圧や不安が、溶けていくようだった。

「…もう一度、考えさせてください」

ルルフェイアの言葉に、サティアス王子は静かに頷いた。彼は、ルルフェイアに焦らず、ゆっくりと時間をかけて考えてほしいと願っていた。

ルルフェイアは、初めて自分の気持ちを素直に受け止め、サティアス王子との未来について、真剣に考え始めた。婚約解消という決断が、実は新たな始まりへの一歩だったことを、彼女はまだ知らなかった。

その夜、ルルフェイアは、静かに星を見上げた。今まで、王室のきらびやかな装飾にばかり目を奪われていたが、今夜は、静かに輝く星の光が、彼女の心を優しく包み込んでくれた。彼女は、自分の心と向き合い、そして、サティアス王子との未来を、ゆっくりと見つめ始めた。  今までとは違う、優しい光が、彼女の未来を照らしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。 その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。 全15話を予定

処理中です...