異世界ファンタジーまとめ2【短編集】

テタの工房

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辺境の魔剣士

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俺は、アルフィーネの影だった。

一緒に育ち、一緒に冒険者になった幼馴染で、恋人でもあるアルフィーネ。絶世の美女で、剣聖の称号を持つ彼女は、まさに剣の女神。王国から騎士として認められ、貴族になったほどのすごい女だ。その一方で、俺はというと、彼女の付属物。罵詈雑言、パワハラ、あらゆる嫌がらせを浴びせられ、冒険者としての誇り、男としての尊厳、人としての尊厳、全てを失っていた。恋人というより、世話係。それが俺の役目だった。

毎日、彼女の機嫌を伺い、指示に従い、雑用をこなす。彼女の輝きに比べれば、俺は塵芥のように存在感が薄かった。それでも、アルフィーネを愛していた。彼女が世界の全てだったから。

しかし、変化が訪れた。王国の騎士として多忙になったアルフィーネは、冒険に出られなくなった。その結果、俺が一人で依頼を受ける機会が増えた。最初は戸惑ったが、次第に、自分自身の力で仕事をし、報酬を得る喜びを知った。依頼主からの感謝の言葉、仲間との協力、そして、自分の腕でモンスターを倒す達成感。それらは、アルフィーネから奪われたものを少しずつ取り戻していくような感覚だった。

一人で生きていくこと、自分自身で道を切り開くこと。それらを経験するうちに、俺は初めて気づいた。アルフィーネとの関係が、どれだけ異常だったのかに。彼女は俺を愛していたのではなく、自分の都合のいいように操っていただけだった。

決意した。彼女と別れると。

これまでの装備一式、そして、冒険者になった時にお互いに贈り合った剣。それらをアルフィーネに突き返した。「もう、二度と会わないでください」そう言って、俺は彼女のもとを去った。

振り返らなかった。涙も流さなかった。ただ、前だけを見て、歩き続けた。

辺境を目指した。名も容姿も変え、誰にも知られずに暮らす。それが、俺の望みだった。

辺境は、想像以上に荒々しく、美しい場所だった。豊かな自然、そして、温かい人々。アルフィーネのような、人を小馬鹿にする人間は、ここにはいなかった。

最初は小さな依頼から始めた。モンスター退治、護衛、資源採取。一つ一つの仕事に全力を注ぎ、少しずつ評判を得ていった。俺の腕前、そして、誠実な人柄が、人々の信頼を勝ち取った。

いつしか、俺は辺境一の大冒険者と呼ばれていた。

そして、驚くべきことが起きた。辺境伯の令嬢、エリザベス。彼女も冒険者で、俺に求婚してきたのだ。

エリザベスは、アルフィーネとは全く違う女性だった。明るく、優しく、そして、俺を尊重してくれる。彼女の瞳には、アルフィーネにはなかった、温かい光が宿っていた。

俺は、エリザベスと結婚した。辺境で、静かで幸せな日々を送っている。

アルフィーネのことは、もう思い出さない。いや、思い出そうとも思わない。彼女は、過去のこと。俺の人生には、もはや関係のない人だ。

辺境の空の下、俺は自由だ。誰にも縛られることなく、自分の意志で生きている。

あの時、アルフィーネと別れて、辺境で出直す決意をしたことが、俺の人生を大きく変えた。

それは、間違いなく、正しい選択だった。

今では、あの時の決断に感謝している。あの時、勇気を出して、彼女を捨てて、辺境に来たからこそ、今の幸せがあるのだから。  辺境の優しい風を感じながら、俺は静かに微笑んだ。  この自由を、この幸せを、これからもずっと大切にしたい。
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