異世界ファンタジーまとめ2【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
111 / 184

五歳の花嫁と、魔獣の影

しおりを挟む
こんなブサイクと婚約するのは嫌です。

七歳の第一王子、レオン殿下は、私の目の前でそう吐き捨てた。

私は五歳。でも、赤ちゃんの頃から大人の言葉が理解できた。だから、殿下の言葉が、どれだけ残酷なものか、ちゃんとわかっていた。

この婚約は、避けられない。国を守るため、魔獣を討伐するため、絶対に必要なものだった。

国境付近には、魔獣と呼ばれる、魔力を持った獣が出没する。普通の兵士じゃ太刀打ちできない。魔法使いだけが、魔獣を倒せるのだ。

魔法使いになれるのは、魔力を持った人間だけ。そして、魔力を持った人間同士の子どもは、魔力を持つ可能性が高い。だから、魔力を持つ貴族同士の結婚を推進することで、より多くの魔法使いを生み出そうという、国の政策が始まった。

その政策の皮切りとして、魔力を持つ平民の私と、魔力を持つレオン殿下は婚約させられた。政略結婚。愛も何もない、純粋な利害の一致だ。

レオン殿下の言葉に、怒りも悲しみも湧かなかった。ただ、嫌だった。こんなブサイクな人と、結婚するなんて、嫌だなぁ……と思っただけ。

レオン殿下は、本当にブサイクだった。いや、ブサイクというより、子供らしい顔立ちで、整ってはいるものの、私の五歳の目には、面白くもなんともない顔だった。

「婚約は決まっているのです。殿下」

私の侍女、リリアさんが、冷静に殿下に告げた。リリアさんは、いつも私を優しく見守ってくれる、頼もしい女性だ。

「でも、こんな子と結婚なんて!」

レオン殿下は、私の顔を見て、顔をしかめた。

「殿下、お言葉にご注意を。お相手は、将来、多くの魔法使いを生み出す、重要な存在なのです」

リリアさんは、毅然とした態度で殿下を諭す。

その後の宮殿での生活は、予想以上に退屈だった。レオン殿下は私を無視し、私は自分の好きな本を読んだり、庭で遊んだりして過ごした。

時々、レオン殿下が、私の魔力を見ようとしたり、魔法の練習をさせようとしたりした。最初は嫌だったけど、魔法を使うのは楽しかった。空を飛んだり、炎を操ったり、不思議な力を使うのは、とても気持ちよかった。

それから数年が過ぎた。私は十歳、レオン殿下は十四歳になった。

レオン殿下は、以前のような嫌悪感を抱かなくなり、むしろ、私の魔法の才能に驚いたり、私のことを気にかけるようになった。

「あの時、君の事をブサイクだなんて言って、本当にすまない」

ある日、レオン殿下は、そう言った。

「もう、そんなこと気にしません」

私は、淡々と答えた。

レオン殿下は、私の魔法の才能を伸ばすため、様々な魔法の書を与えてくれたり、優れた魔法使いを師としてつけてくれたりした。

そして、私は、魔法使いとして成長していった。

十五歳になった時、私たちは結婚した。

結婚式の日は、晴れやかだった。レオン殿下は、以前とは全く違う、凛々しい表情をしていた。

「君と結婚できて、本当に良かった」

レオン殿下は、そう言って、私を抱きしめた。

私は、彼の腕の中で、少しだけ、温かい気持ちになった。

国を守るため、魔獣を討伐するため、私たちは結婚した。しかし、その過程で、私たちは、お互いを理解し、愛し合うようになった。

私たちの子供たちは、皆、魔力を持って生まれた。そして、彼らは、将来、優れた魔法使いとなり、国を守るだろう。

レオン殿下の後悔と努力は、報われたのだ。そして、五歳の花嫁は、立派な魔法使いとなり、第一王子妃として、国を支えていった。  あの日の、残酷な言葉は、遠い過去のものになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...