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六番線の終着駅
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廃線になった六番線。地元では「呪われた線路」なんて言われていて、近寄るものじゃねえって、そう爺さんが言ってた。俺は、別に怖がりじゃねえ。むしろ、そういう怪談話、大好きなんだ。だから、一人で六番線跡地へと向かった。
夕暮れ時。蝉の声がやかましい。廃線跡は、雑草が生い茂り、線路の錆びたレールがところどころ朽ちて地面に埋まっていた。空気は、じめっとして、不気味な静寂に包まれていた。
爺さんの話によると、六番線では、二十年前、事故があったらしい。列車が脱線し、乗客乗員全員が死亡。生き残りは、一人もいなかったんだって。しかも、その事故の犠牲者たちは、今もこの線路をさまよっている、と。
そんな話、信じるわけねえだろ、と最初は思ってた。でも、線路沿いを歩いていくうちに、妙な感覚に襲われた。背筋がゾッとするような、冷たい風が首筋を撫でる。まるで、誰かが見ているような、そんな気配。
さらに奥へ進むと、古い駅舎の残骸が見えた。壁は崩れ落ち、窓ガラスは割れて、廃墟と化していた。薄汚れた看板には、かすれて「六番線終着駅」と読めた。
駅舎の中に入ってみた。中は真っ暗で、埃っぽい空気が充満していた。足元には、割れたガラスや、朽ちた木片が散乱していた。何かが、ひっかかった。
それは、小さなぬいぐるみだった。真っ赤なクマのぬいぐるみ。埃をかぶり、ボロボロになっているけれど、それでも、可愛らしさは残っていた。
その時だった。
「…誰…?」
かすれた、小さな声が聞こえた気がした。俺は、心臓がバクバクと音を立てた。誰かがいる。間違いなく。
ゆっくりと、ゆっくりと、その声のする方へと近づいていった。
暗闇の中、何かが動いた。
それは、少女だった。
真っ赤なワンピースを着た、小さな少女。彼女の顔は、血まみれで、目は空洞のように黒く、まるで人形のようだった。
少女は、ゆっくりと、俺に近づいてきた。そして、血まみれの小さな手で、赤いクマのぬいぐるみを差し出した。
「…これ…あげる…」
少女の声は、まるで機械が壊れたような、ぎこちない声だった。
俺は、恐怖で体が震えた。逃げ出したい。でも、足が動かない。
少女は、俺の目の前にしゃがみこみ、赤いクマのぬいぐるみを俺の手に押しつけた。
その瞬間、少女の体が、みるみるうちに崩れていった。まるで、砂が崩れるように、消えていった。
残ったのは、赤いクマのぬいぐるみだけだった。
俺は、そのぬいぐるみを握りしめたまま、必死に駅舎から逃げ出した。
外に出ると、夕焼け空が、血のように赤く染まっていた。
それからというもの、俺は、あの赤いクマのぬいぐるみを、ずっと持っている。
時折、夜中に、少女の小さな声が聞こえることがある。
「…これ…あげる…」
俺は、もう二度と、六番線には近づかない。
そして、あの日見たものは、誰にも話さない。
あの少女は、一体何だったんだろう?
事故の犠牲者?それとも…何か、もっと恐ろしいもの?
わからない。何もわからない。
ただ、一つだけ確かなことは、あの赤いクマのぬいぐるみが、俺の傍に、ずっとあるということだ。
そして、六番線の終着駅には、今も、何かが、さまよっている…ということだ。
数日後、新聞で知った。六番線の廃線跡地で、少女の遺体が発見されたと。二十年前の事故の犠牲者、行方不明になっていた少女だった。赤いワンピースを着て、赤いクマのぬいぐるみを抱きしめていたという。
俺は、新聞記事を握りしめ、震える手で赤いクマのぬいぐるみを隠した。
あの少女は、俺に、何かを伝えようとしていたのだろうか?
あの赤いクマのぬいぐるみは、呪われた品物なのかもしれない。
でも、俺は、まだ、捨てられない。
夕暮れ時。蝉の声がやかましい。廃線跡は、雑草が生い茂り、線路の錆びたレールがところどころ朽ちて地面に埋まっていた。空気は、じめっとして、不気味な静寂に包まれていた。
爺さんの話によると、六番線では、二十年前、事故があったらしい。列車が脱線し、乗客乗員全員が死亡。生き残りは、一人もいなかったんだって。しかも、その事故の犠牲者たちは、今もこの線路をさまよっている、と。
そんな話、信じるわけねえだろ、と最初は思ってた。でも、線路沿いを歩いていくうちに、妙な感覚に襲われた。背筋がゾッとするような、冷たい風が首筋を撫でる。まるで、誰かが見ているような、そんな気配。
さらに奥へ進むと、古い駅舎の残骸が見えた。壁は崩れ落ち、窓ガラスは割れて、廃墟と化していた。薄汚れた看板には、かすれて「六番線終着駅」と読めた。
駅舎の中に入ってみた。中は真っ暗で、埃っぽい空気が充満していた。足元には、割れたガラスや、朽ちた木片が散乱していた。何かが、ひっかかった。
それは、小さなぬいぐるみだった。真っ赤なクマのぬいぐるみ。埃をかぶり、ボロボロになっているけれど、それでも、可愛らしさは残っていた。
その時だった。
「…誰…?」
かすれた、小さな声が聞こえた気がした。俺は、心臓がバクバクと音を立てた。誰かがいる。間違いなく。
ゆっくりと、ゆっくりと、その声のする方へと近づいていった。
暗闇の中、何かが動いた。
それは、少女だった。
真っ赤なワンピースを着た、小さな少女。彼女の顔は、血まみれで、目は空洞のように黒く、まるで人形のようだった。
少女は、ゆっくりと、俺に近づいてきた。そして、血まみれの小さな手で、赤いクマのぬいぐるみを差し出した。
「…これ…あげる…」
少女の声は、まるで機械が壊れたような、ぎこちない声だった。
俺は、恐怖で体が震えた。逃げ出したい。でも、足が動かない。
少女は、俺の目の前にしゃがみこみ、赤いクマのぬいぐるみを俺の手に押しつけた。
その瞬間、少女の体が、みるみるうちに崩れていった。まるで、砂が崩れるように、消えていった。
残ったのは、赤いクマのぬいぐるみだけだった。
俺は、そのぬいぐるみを握りしめたまま、必死に駅舎から逃げ出した。
外に出ると、夕焼け空が、血のように赤く染まっていた。
それからというもの、俺は、あの赤いクマのぬいぐるみを、ずっと持っている。
時折、夜中に、少女の小さな声が聞こえることがある。
「…これ…あげる…」
俺は、もう二度と、六番線には近づかない。
そして、あの日見たものは、誰にも話さない。
あの少女は、一体何だったんだろう?
事故の犠牲者?それとも…何か、もっと恐ろしいもの?
わからない。何もわからない。
ただ、一つだけ確かなことは、あの赤いクマのぬいぐるみが、俺の傍に、ずっとあるということだ。
そして、六番線の終着駅には、今も、何かが、さまよっている…ということだ。
数日後、新聞で知った。六番線の廃線跡地で、少女の遺体が発見されたと。二十年前の事故の犠牲者、行方不明になっていた少女だった。赤いワンピースを着て、赤いクマのぬいぐるみを抱きしめていたという。
俺は、新聞記事を握りしめ、震える手で赤いクマのぬいぐるみを隠した。
あの少女は、俺に、何かを伝えようとしていたのだろうか?
あの赤いクマのぬいぐるみは、呪われた品物なのかもしれない。
でも、俺は、まだ、捨てられない。
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