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朔
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約束の20分前に、輝夜は森に着いた。
夜空には満月が主役を買って出ている。
陽叶と出会った日もそうだった。
輝夜は満月を見上げながら、
久しぶりに会う陽叶に、
まず何と声をかけようか考えていた。
物思いにふける輝夜に向かって
凍て風が吹き、我に返った。
その時、後ろからカサっと
枯葉を踏む音が聞こえた。
振り返るとそこには、陽叶がいた。
陽叶はばつが悪そうに一言
陽叶「輝夜さん…ごめんなさい、
連絡を無視したりして。久しぶり。」
と言った。
話したいことを整理していたのに、
陽叶の顔を見たら安心して
頭が真っ白になってしまった。
輝夜「陽叶…来てくれてありがとう。
寒いだろう、これ。あの木に座ろうか。」
輝夜はポケットから
暖かいミルクティーを取り出し、
陽叶に差し出した。
それは、活動休止期間に
一緒に買い物へ行った時、
陽叶が好きだと言っていた
ミルクティーだった。
輝夜が覚えていてくれたことが
嬉しい気持ちと、
ミルクティーの暖かさに
陽叶は自然と笑顔になった。
輝夜「陽叶、俺…自分のことばっかりで…
俺なんかよりずっと辛い思いしてるのに、
心配ばかりかけて…陽叶が抱えてきた事を
打ち明けられる相手になれてなかった。
ごめん。いつも明るくて笑顔だったから
日野さんから聞いてびっくりしたよ。」
陽叶「謝らないでよ、輝夜さん。
俺、雷架を母さんから引き離すには
法的に罰せられるしかないと思って…
心理学を専攻したんだ。それだけの為に。
私怨を晴らしたいがために必死に
勉強してさ。馬鹿みたいだよね。
でも輝夜さんに出会って、自分が
学んできたことが役に立ったんだって…
何だか努力が報われた気がしてさ。
この人のために尽くしたい。
役に立ちたいって純粋に思ったんだ。」
輝夜「馬鹿なんかじゃない。陽叶は
本当に頑張ったよ。社会に出る前に、
一人の人間の人生を変えたんだから。
目指したきっかけは変えられないけど、
これから目指す方向はいくらでも
変えられる。
陽叶にはこれ以上苦しんでほしくない。
もう復讐に生きなくていいんだ。
ずっと言えて来なかったわがままも
欲しいものも、もう我慢しないで。
俺が全部受け止めるから。」
輝夜の言葉に、
陽叶は大粒の涙を流した。
子供のように泣く陽叶を
愛おしく思い、抱きしめた。
輝夜は陽叶の頭を撫でながら
優しく語りかける。
輝夜「今まで専属カウンセラーとか、
誤魔化すような言葉で陽叶を自分から
離れないようにしてた。ズルいよな。
本当の気持ちを伝えて、陽叶が
離れていくのが怖かった。
あの日以来連絡が取れなくなって
心の底から後悔したよ。
何で気持ちを伝えなかったんだって。
毎日毎日会いたくて、伝えたくて。
…陽叶。俺は、君が好きなんだ。
10年も恋愛ソングを歌ってきたのに
ずっと分からなかったんだよ、
人を好きになるって気持ちが。正直
そんなに人生変わるのかって思ってた。
でも今ならわかる。
差し入れが美味しければ陽叶に
食べさせてあげたくなるし、
外に出て吐く息が白ければ、
冬が来たことを1番に伝えたい。
今だって…空を見て。満月だよ。
一緒に眺められて嬉しいんだ。
陽叶と出会った日も満月だったね。
人を好きになると、こんなにも
人生が色付くものなんだって、
君を好きになって知ることが出来た。
例え陽叶の心がグレーがかっていても
俺が光を差せる存在でいたいと思う。
…陽叶の気持ちを聞かせてほしい。
記者から走って逃げた日、俺の手を
握ってくれたよね。
同じ気持ちと思っていいのかな。」
輝夜の気持ちを知り、嬉しくて
落ちついていた涙が途端に溢れ出す。
陽叶「俺も…輝夜さんが好きだよ。
あの日の歌う姿が頭から離れない。
満月が輝夜さんをスポットライトの
ように照らしていて、綺麗だった。
時折目に宿る陰のようなものを
俺が払いたいと思った。
今までずっと、何かが欲しいなんて
思わなかった。自分で無意識に欲に
蓋をしていたのかもしれない。
でもね、今の俺には無理だった。
母さんのことがあってもうあなたに
会ってはいけないんだって、自分に
言い聞かせれば言い聞かせるほど
会いたくなって…
あの日手を握ったのは、輝夜さんの
ことを離したくないと思ったから。
俺の腕を掴んで走る輝夜さんの背中を
見て、はっきり好きだって自覚した。
TV越しに歌う姿を見て、あんなに
欲のなかった自分が、この人を
独り占めしたいって思っちゃうんだ。
俺ってこんなに欲張りで
わがままだったんだって、気付いた。
だから…人生で初めて、本当に欲しいと
思うものを見つけたから…
俺のわがままを聞いてほしい。
輝夜さんの隣りにずっと居させて下さい。
俺は、あなたがほしいんだ。」
輝夜は、陽叶の初めての願いに
答えるようにキスをした。
輝夜「やっと言えたね。欲しいもの。
今度は誰のためでもなく、自分のための。」
唇を離し、そう話す輝夜を見て
陽叶は顔を真っ赤にしている。
陽叶「輝夜さん…あの……」
輝夜「さん付けされてるようでは
信頼関係はまだまだってことだな。
俺ら、もう恋人じゃないの?」
陽叶「…輝夜……?」
輝夜「照れて疑問形になってるじゃん。
可愛いな。やり直し。」
陽叶「もー!いじわるだな…輝夜…くん」
輝夜「はいやり直し。呼び捨てで呼んで?
対等でいたいんだ。どんな瞬間も。」
陽叶「…輝夜。好きだよ。」
輝夜「よく出来ました。俺も好きだよ。」
火照りが冷めない陽叶の頬を
寒さで冷えた輝夜の手が覆う。
二人は互いを愛おしそうに見つめ合い、
満月に照らされながら
何度も抱きしめあい、キスをした。
翌日の1月9日は、復帰ライブの初日。
陽叶は会場近くに日野さんと向かい、
ある人を待った。
日野「あ、あの人じゃない?おーい!」
その人は日野さんの声に気付き、
駆け寄ってきた。
陽叶の父親だ。
父「陽叶…久しぶり。大きくなったなあ。
ずっと会いたかった。こんな駄目な父親と
会ってくれて、本当にありがとう。」
陽叶「パパ…ごめんね。ずっと手紙を
くれてたのに、俺、読んだらパパに
会いたくなっちゃうと思って…今まで
読んでなかったんだ。
でも、日野さんがずっと取っておいて
くれて、この間全部読んだよ。
パパが変わらず俺を大事に思っていて
くれたことが伝わって、嬉しかった。
今日は返事の代わりに沢山話したい。」
陽叶からの返事がなかった理由を知り、
父は涙を流し、服の袖で必死に拭った。
父「こうして会ってくれたことが何よりの
返事だよ…もう会えないと思ってた。」
日野「もーこんな人混みで泣いて!!
皆見てるじゃない!恥ずかしいわね!
ほらこれ、ハンカチ使いなさい。
さ、ライブまで時間が勿体ないわ。
ゆっくり話せる場所に移動しましょ。」
陽叶は、日野さんに軽く叱られる父が
何だか可愛く見えて、笑みが溢れた。
父は陽叶の笑顔を見てまた、涙した。
ライブまでの数時間。
数十年ぶりに過ごした親子の時間は
あっという間で、
かけがいのないものとなった。
開演時間が迫り、指定の席に着くと
陽叶の隣には輝夜の父が座っていた。
輝夜の父「陽叶くん!久々だね!
そちらは、ご家族の方かな?
初めまして。輝夜の父です。」
陽叶「パパさん!お久しぶりです。
父と、実家で家政婦として働いている
日野さんです。」
陽叶父「初めまして、陽叶の父です。
いつもお世話になっております。」
日野「初めまして。日野と申します。
輝夜さんには本当に色々とお世話に
なりまして…小日向家一同、大変感謝を
しております。」
輝夜父「そんな、お世話になってるのは
輝夜の方ですよ。陽叶くんには本当に
助けられてばかりで感謝してます。
陽叶くん…お父さんにそっくりだね!」
輝夜の父が何の気なしに言った
父に似ているという言葉が嬉しくて、
陽叶と父は笑顔を見せた。
ライブが終わったら食事に行こうかと
輝夜の父から提案があり、
三人が賛成し、何を食べようか、
それぞれ思い浮かぶものを
口々に上げていると
BGMが止まり、照明が暗くなった。
辺りには次々とペンライトが灯る。
4人が慌ててカバンからペンライトを
取り出していると、
ステージのど真ん中に1つ、
スポットライトが当たった。
輝夜がマイクスタンドに手をかけ、
まっすぐ前を見つめている。
歓声が輝夜を向かい入れると同時に、
辺りは輝夜のメンバーカラーである
黄色一色になった。
4人も、取り出したペンライトが
黄色になるまでボタンを押した。
その光景はまるで、
輝夜が月明かりに照らされているよう。
あの森での輝夜の姿に見えて、
陽叶は目を潤ませ、顔を覆った。
日野「ちょっと陽ちゃん!まだ輝夜さん
歌ってもいないわよ!」
慌ててコソッと耳打ちする日野さん。
陽叶と輝夜の父達は、
優しい笑顔で彼を見つめた。
輝夜「皆、お待たせ。」
そう一言輝夜が呟くと同時に、
バッグバンドによる演奏が始まった。
会場は、数分前の歓声を
更に上回る大歓声に包まれた。
輝夜のソロから始まったライブは、
MCを挟みつつ30曲以上を歌い上げた。
時間はあっという間で、
もうアンコールになってしまった。
ここでまた、輝夜一人に
スポットライトが照らされ、
観客もまた、それに応えるように
ペンライトを黄色く灯した。
輝夜「今日は来てくれてありがとう。
寂しいけれど、次の曲でいよいよ、
本当のラストになります。
去年は皆に沢山心配をかけました。
アイドルでいる以上、プライベートな
部分を打ち明けるというのはとても
勇気がいることでした。
事実ではないことが先に世に出回って
いたのに…こんなに多くの人が
俺の言葉を信じてくれたんだなって…
今とても感慨深いです。
皆、信じてついてきてくれて
本当にありがとう。
今日からまた、心を改めて
メンバーと一緒に頑張っていきます。
今から歌う曲は、活動休止中に
俺が作った曲です。
沢山の支えがあって今日という日を
迎えられた訳ですが……支えになって
くれた人の中には、もしかしたら
自分のことがちっぽけだと思うくらい、
大きな悩みを抱えてる人がいるかも
しれません。
たとえ相手が太陽のような笑顔を
向けてくれていても、心の中は
泣いているかもしれない。
そんな人の心を癒したい。
自分にしてくれたように、俺も
受け入れたいし、支えになりたい。
いつも無理して笑顔でいなくてもいい。
時にはわがままになってもいい。
君が俺を照らす太陽ならば、俺は
君の心をそっと照らす、月でありたい。
そんな思いを込めた曲です。
それでは聞いてください。曲名は、
『月明かりはスポットライト』」
夜空には満月が主役を買って出ている。
陽叶と出会った日もそうだった。
輝夜は満月を見上げながら、
久しぶりに会う陽叶に、
まず何と声をかけようか考えていた。
物思いにふける輝夜に向かって
凍て風が吹き、我に返った。
その時、後ろからカサっと
枯葉を踏む音が聞こえた。
振り返るとそこには、陽叶がいた。
陽叶はばつが悪そうに一言
陽叶「輝夜さん…ごめんなさい、
連絡を無視したりして。久しぶり。」
と言った。
話したいことを整理していたのに、
陽叶の顔を見たら安心して
頭が真っ白になってしまった。
輝夜「陽叶…来てくれてありがとう。
寒いだろう、これ。あの木に座ろうか。」
輝夜はポケットから
暖かいミルクティーを取り出し、
陽叶に差し出した。
それは、活動休止期間に
一緒に買い物へ行った時、
陽叶が好きだと言っていた
ミルクティーだった。
輝夜が覚えていてくれたことが
嬉しい気持ちと、
ミルクティーの暖かさに
陽叶は自然と笑顔になった。
輝夜「陽叶、俺…自分のことばっかりで…
俺なんかよりずっと辛い思いしてるのに、
心配ばかりかけて…陽叶が抱えてきた事を
打ち明けられる相手になれてなかった。
ごめん。いつも明るくて笑顔だったから
日野さんから聞いてびっくりしたよ。」
陽叶「謝らないでよ、輝夜さん。
俺、雷架を母さんから引き離すには
法的に罰せられるしかないと思って…
心理学を専攻したんだ。それだけの為に。
私怨を晴らしたいがために必死に
勉強してさ。馬鹿みたいだよね。
でも輝夜さんに出会って、自分が
学んできたことが役に立ったんだって…
何だか努力が報われた気がしてさ。
この人のために尽くしたい。
役に立ちたいって純粋に思ったんだ。」
輝夜「馬鹿なんかじゃない。陽叶は
本当に頑張ったよ。社会に出る前に、
一人の人間の人生を変えたんだから。
目指したきっかけは変えられないけど、
これから目指す方向はいくらでも
変えられる。
陽叶にはこれ以上苦しんでほしくない。
もう復讐に生きなくていいんだ。
ずっと言えて来なかったわがままも
欲しいものも、もう我慢しないで。
俺が全部受け止めるから。」
輝夜の言葉に、
陽叶は大粒の涙を流した。
子供のように泣く陽叶を
愛おしく思い、抱きしめた。
輝夜は陽叶の頭を撫でながら
優しく語りかける。
輝夜「今まで専属カウンセラーとか、
誤魔化すような言葉で陽叶を自分から
離れないようにしてた。ズルいよな。
本当の気持ちを伝えて、陽叶が
離れていくのが怖かった。
あの日以来連絡が取れなくなって
心の底から後悔したよ。
何で気持ちを伝えなかったんだって。
毎日毎日会いたくて、伝えたくて。
…陽叶。俺は、君が好きなんだ。
10年も恋愛ソングを歌ってきたのに
ずっと分からなかったんだよ、
人を好きになるって気持ちが。正直
そんなに人生変わるのかって思ってた。
でも今ならわかる。
差し入れが美味しければ陽叶に
食べさせてあげたくなるし、
外に出て吐く息が白ければ、
冬が来たことを1番に伝えたい。
今だって…空を見て。満月だよ。
一緒に眺められて嬉しいんだ。
陽叶と出会った日も満月だったね。
人を好きになると、こんなにも
人生が色付くものなんだって、
君を好きになって知ることが出来た。
例え陽叶の心がグレーがかっていても
俺が光を差せる存在でいたいと思う。
…陽叶の気持ちを聞かせてほしい。
記者から走って逃げた日、俺の手を
握ってくれたよね。
同じ気持ちと思っていいのかな。」
輝夜の気持ちを知り、嬉しくて
落ちついていた涙が途端に溢れ出す。
陽叶「俺も…輝夜さんが好きだよ。
あの日の歌う姿が頭から離れない。
満月が輝夜さんをスポットライトの
ように照らしていて、綺麗だった。
時折目に宿る陰のようなものを
俺が払いたいと思った。
今までずっと、何かが欲しいなんて
思わなかった。自分で無意識に欲に
蓋をしていたのかもしれない。
でもね、今の俺には無理だった。
母さんのことがあってもうあなたに
会ってはいけないんだって、自分に
言い聞かせれば言い聞かせるほど
会いたくなって…
あの日手を握ったのは、輝夜さんの
ことを離したくないと思ったから。
俺の腕を掴んで走る輝夜さんの背中を
見て、はっきり好きだって自覚した。
TV越しに歌う姿を見て、あんなに
欲のなかった自分が、この人を
独り占めしたいって思っちゃうんだ。
俺ってこんなに欲張りで
わがままだったんだって、気付いた。
だから…人生で初めて、本当に欲しいと
思うものを見つけたから…
俺のわがままを聞いてほしい。
輝夜さんの隣りにずっと居させて下さい。
俺は、あなたがほしいんだ。」
輝夜は、陽叶の初めての願いに
答えるようにキスをした。
輝夜「やっと言えたね。欲しいもの。
今度は誰のためでもなく、自分のための。」
唇を離し、そう話す輝夜を見て
陽叶は顔を真っ赤にしている。
陽叶「輝夜さん…あの……」
輝夜「さん付けされてるようでは
信頼関係はまだまだってことだな。
俺ら、もう恋人じゃないの?」
陽叶「…輝夜……?」
輝夜「照れて疑問形になってるじゃん。
可愛いな。やり直し。」
陽叶「もー!いじわるだな…輝夜…くん」
輝夜「はいやり直し。呼び捨てで呼んで?
対等でいたいんだ。どんな瞬間も。」
陽叶「…輝夜。好きだよ。」
輝夜「よく出来ました。俺も好きだよ。」
火照りが冷めない陽叶の頬を
寒さで冷えた輝夜の手が覆う。
二人は互いを愛おしそうに見つめ合い、
満月に照らされながら
何度も抱きしめあい、キスをした。
翌日の1月9日は、復帰ライブの初日。
陽叶は会場近くに日野さんと向かい、
ある人を待った。
日野「あ、あの人じゃない?おーい!」
その人は日野さんの声に気付き、
駆け寄ってきた。
陽叶の父親だ。
父「陽叶…久しぶり。大きくなったなあ。
ずっと会いたかった。こんな駄目な父親と
会ってくれて、本当にありがとう。」
陽叶「パパ…ごめんね。ずっと手紙を
くれてたのに、俺、読んだらパパに
会いたくなっちゃうと思って…今まで
読んでなかったんだ。
でも、日野さんがずっと取っておいて
くれて、この間全部読んだよ。
パパが変わらず俺を大事に思っていて
くれたことが伝わって、嬉しかった。
今日は返事の代わりに沢山話したい。」
陽叶からの返事がなかった理由を知り、
父は涙を流し、服の袖で必死に拭った。
父「こうして会ってくれたことが何よりの
返事だよ…もう会えないと思ってた。」
日野「もーこんな人混みで泣いて!!
皆見てるじゃない!恥ずかしいわね!
ほらこれ、ハンカチ使いなさい。
さ、ライブまで時間が勿体ないわ。
ゆっくり話せる場所に移動しましょ。」
陽叶は、日野さんに軽く叱られる父が
何だか可愛く見えて、笑みが溢れた。
父は陽叶の笑顔を見てまた、涙した。
ライブまでの数時間。
数十年ぶりに過ごした親子の時間は
あっという間で、
かけがいのないものとなった。
開演時間が迫り、指定の席に着くと
陽叶の隣には輝夜の父が座っていた。
輝夜の父「陽叶くん!久々だね!
そちらは、ご家族の方かな?
初めまして。輝夜の父です。」
陽叶「パパさん!お久しぶりです。
父と、実家で家政婦として働いている
日野さんです。」
陽叶父「初めまして、陽叶の父です。
いつもお世話になっております。」
日野「初めまして。日野と申します。
輝夜さんには本当に色々とお世話に
なりまして…小日向家一同、大変感謝を
しております。」
輝夜父「そんな、お世話になってるのは
輝夜の方ですよ。陽叶くんには本当に
助けられてばかりで感謝してます。
陽叶くん…お父さんにそっくりだね!」
輝夜の父が何の気なしに言った
父に似ているという言葉が嬉しくて、
陽叶と父は笑顔を見せた。
ライブが終わったら食事に行こうかと
輝夜の父から提案があり、
三人が賛成し、何を食べようか、
それぞれ思い浮かぶものを
口々に上げていると
BGMが止まり、照明が暗くなった。
辺りには次々とペンライトが灯る。
4人が慌ててカバンからペンライトを
取り出していると、
ステージのど真ん中に1つ、
スポットライトが当たった。
輝夜がマイクスタンドに手をかけ、
まっすぐ前を見つめている。
歓声が輝夜を向かい入れると同時に、
辺りは輝夜のメンバーカラーである
黄色一色になった。
4人も、取り出したペンライトが
黄色になるまでボタンを押した。
その光景はまるで、
輝夜が月明かりに照らされているよう。
あの森での輝夜の姿に見えて、
陽叶は目を潤ませ、顔を覆った。
日野「ちょっと陽ちゃん!まだ輝夜さん
歌ってもいないわよ!」
慌ててコソッと耳打ちする日野さん。
陽叶と輝夜の父達は、
優しい笑顔で彼を見つめた。
輝夜「皆、お待たせ。」
そう一言輝夜が呟くと同時に、
バッグバンドによる演奏が始まった。
会場は、数分前の歓声を
更に上回る大歓声に包まれた。
輝夜のソロから始まったライブは、
MCを挟みつつ30曲以上を歌い上げた。
時間はあっという間で、
もうアンコールになってしまった。
ここでまた、輝夜一人に
スポットライトが照らされ、
観客もまた、それに応えるように
ペンライトを黄色く灯した。
輝夜「今日は来てくれてありがとう。
寂しいけれど、次の曲でいよいよ、
本当のラストになります。
去年は皆に沢山心配をかけました。
アイドルでいる以上、プライベートな
部分を打ち明けるというのはとても
勇気がいることでした。
事実ではないことが先に世に出回って
いたのに…こんなに多くの人が
俺の言葉を信じてくれたんだなって…
今とても感慨深いです。
皆、信じてついてきてくれて
本当にありがとう。
今日からまた、心を改めて
メンバーと一緒に頑張っていきます。
今から歌う曲は、活動休止中に
俺が作った曲です。
沢山の支えがあって今日という日を
迎えられた訳ですが……支えになって
くれた人の中には、もしかしたら
自分のことがちっぽけだと思うくらい、
大きな悩みを抱えてる人がいるかも
しれません。
たとえ相手が太陽のような笑顔を
向けてくれていても、心の中は
泣いているかもしれない。
そんな人の心を癒したい。
自分にしてくれたように、俺も
受け入れたいし、支えになりたい。
いつも無理して笑顔でいなくてもいい。
時にはわがままになってもいい。
君が俺を照らす太陽ならば、俺は
君の心をそっと照らす、月でありたい。
そんな思いを込めた曲です。
それでは聞いてください。曲名は、
『月明かりはスポットライト』」
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