Red Assassin(完結)

まさきち

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1章 時間の路

10話 揺れる心⑧

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レッド「結構早い攻撃だな。」
ナスナ「段々と切り刻んであげましょう。」



ナスナは次々と突きを繰り出してくる。かわし、弾きしながら何とか隙を窺う。流石はナスナ、今までの相手とはレベルが違う。


レッド「く…ガチで強いじゃないか。手加減どころじゃないぞ。」
ナスナ「こっちがもう少し手加減してやろうか?」
レッド「ふざけんな。パワーホールド!」


次のナスナの突きを大きく弾き飛ばした。そのまま足を切り裂いた。


ナスナ「ぐっ!?こんな奴に攻撃を許すとは!」
レッド「浅かったのか?」


ナスナは槍を振りかぶって斬り掛かってきた。アサシンに切られた怒りから攻撃が単純になっている。レッドはその攻撃が届く前に、一気に剣を振るった。


ナスナ「う…ぐ…」
レッド「し、しまった。やりすぎたか?」


実力が拮抗していた事もあり、一瞬の隙に焦り思いっきり攻撃をしてしまった。その一撃は完全にナスナの身体を切り裂いてしまっていた。ナスナはそのまま倒れる。




ナスナ「私も堕ちたものだ…しかし敗れたのがレッド・アサシンと言うのは悪くない、か。」
レッド「おい、お前に聞きたい事がある。」
ナスナ「聞きたい事だと?」
レッド「3年前にルーンの村を襲ったアサシン。そいつについて何か情報は無いか?」

ナスナ「ルーンの村…あの秘宝の村か。ハンターがどれくらい情報を得ているか知りたいのか?ふっふっふ…ハンターを甘く見ない事だな。」
レッド「…!?何か知っているんだな?」
ナスナ「くっ…どうしてお前がそれを知りたがっている?お前がアサシンに加入する前の事件だろう。」

レッド「それはお前には関係ない。」
ナスナ「…まあ良い。俺は既にハンターではない。だが、そう簡単にアサシンに情報をくれてやるとは思わない事だな。」
レッド「何だと。」



暫くの沈黙の後、ナスナ・クールは動かなくなった。


レッド「…死んだ。もしもの時の為に自害用の薬か何かを仕込んでいたのか。」


結局、肝心な事は何も聞く事が出来なかった。しかし情報の鍵はハンターにありそうだ。一定以上のハンターなら情報を持っている可能性がある。




冥福を祈っていると、遠くの方から人の走って来る音が聞こえる。このままでは見つかってしまうだろう。場合によっては始末しなければならない。



ナーダ「はあはあ…レ、レシア!」
レッド「ナーダ!?」


来たのはナーダだった。その後ろからは見慣れた女の姿が見えてきた。



レッド「…ブルー。」
ブルー「レッド?アンタ何でここに?」
レッド「これはどういう事だ?」
ブルー「依頼が入ったの。ナーダを消せって依頼がね。」
レッド「何だって…」


ブルー「貴方もアサシンなら分かるでしょ?仕事に私情を挟む訳にはいかないの。レッドには関係の無い事よ。」



レッド「……………」



どうする…?確かにアサシンとして、ブルーの邪魔をする事は許されない。邪魔をすれば俺は反逆者として扱われるかもしれない。

だが…ナーダが死んでも良いのか?村のたった一人の生き残りじゃないか。昔から知っている、妹みたいな存在なんだ…



レッド「……………」



レッドはナーダに背を向ける。


レッド「ナーダ。俺はアサシンだ。」
ナーダ「え…レシア?」
レッド「俺ではお前を助ける事が出来ない。」
ナーダ「レシア…どうして…」

レッド「俺がここでお前を助けてしまおう物なら、俺はアサシンに反逆者として狙われてしまうだろう。それじゃ駄目なんだ。俺は…村を襲ったアサシンを見付け、仇を討つ為だけに生きているんだ。」
ナーダ「そ、そんな…」


ナーダは逃げる気力すら無くなったのか、膝から崩れ落ちる。


ブルー「私が聞くのもなんだけど、良いのね?」
レッド「…ブルー、お前もアサシンだろう。」
ブルー「分かったわ。」



レッド「ナーダ…すまない。」



ナーダの泣く声を無視し、レッドは歩いて行った。その声を聞いているのが辛かった。



レッド「俺は…無力だ。ナーダを救う事も出来やしない。でも大丈夫だ。俺もその内にそっちへ逝くだろう。村の仇を取るって事はアサシンを殺すって事。そうなれば俺も殺されてしまうだろうから。」


何時の間にか、ナーダの声は聞こえなくなっていた。


レッド「仇さえ打てればそれでいい。あとはアサシンかハンターに殺される。…出来ればブルーかバダグにお願いしたいものだな。」




家に帰り布団に潜り込む。食欲も無い。ただただ塞ぎ込んだ。


現状として、ハンター長を含めハンター側が襲いに来るだろう。そうなると情報収集など言っていられなくなるかもしれない。


レッド「時間がない。いつハンター長に狙われるか分からない。ナーダを犠牲にしてまで掴んでいる命だ。決して無駄にする訳にはいかないんだ!」



何とか言い訳を作り、気持ちを落ち着かせる頃には朝になっていた。無理やりに食事を摂り、風呂に入った。鏡を見ると酷い表情になっていた。



コンコン


ドアがノックされ、返事もしない内にブルーが入って来た。何とも言えない表情を浮かべている。一応、気を遣っているのだろうか?


レッド「おはよう。」
ブルー「おはよう。昨夜は…」
レッド「気にするな。アサシンとしてするべき事をしただけだろう。」
ブルー「…そうね。」


ブルー「早速だけど、バダグが呼んでいるわ。」




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