Red Assassin(完結)

まさきち

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4章 疑惑

40話 転機⑦

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レシア「シヴァ、しっかりしろ。」
クラスタ「ふふふ、どれだけ呼び掛けても無駄だ。お前の声はコイツには届かない。」
ナーダ「レシア、何か様子が変だよ。」
レシア「シヴァ…まさか。」


シヴァは生気の無い表情をしており、ぎこちない動きで襲いい掛かってきた。レシアは攻撃を受け止めて払い除ける。


レシア「やっぱりそうだ。ナーダ、シヴァはもう…」
クラスタ「ふふふ、気付いたか?そうだ。魂縛り、使者を操る秘伝の技だ。」
ナーダ「死者…じゃあ?」
レシア「そうか…あの一撃で事切れてしまっていたのか…」


痛みも何も無いのか、少々斬られても全く怯む事無くシヴァは襲い掛かって来る。死者を無理やり動かしている所為なのか、動きは単調でぎこちない。


レシア「どんだけ攻撃してもキリがない…動けない様に足を切り落とすしか無いのか。」
ナーダ「そ、そんな…」
クラスタ「お前にそんな事が出来るかな?アサシンだった頃のお前ならいざ知らず、今のお前が知り合いを再び殺そうと言うのか?」
レシア「くっ…出来るっちゃ出来るけど。出来ればしたくないのも事実か。」


レシアはルーンソードの気弾を連発し、シヴァを吹っ飛ばす。それでもシヴァはゆっくりと起き上がりこちらへ向かって来た。


クラスタ「さあ、大人しく殺されてしまうが良い。いけ、シヴァ!」
レシア「…仕方ない。足でも首でも落としてやるしか無い。」


その時、シヴァの動きが止まった。


クラスタ「ん?どうなっているんだ?」
ナーダ「シヴァさん…」
シヴァ「……レ…レシ…ア……」
レシア「…!?シヴァ。」

ナーダ「生き返ったの?」
シヴァ「ナーダ…これで俺を…」


シヴァが何かを投げつけてきた。それは小さなルーン鉱石だった。純度が高いのは少し見ただけでも分かる。鉱石は光り輝き、ナーダに向かって行った。そして、ナーダの首から下げているペンダントに吸収されていった。


レシア「あのペンダントは…ルーン鉱石?俺と同じヤツじゃないか。」
ナーダ「うん。前にレシアにプレゼントした物だよ。あれから私も同じのを見に付けてたの。」
レシア「そうだったんだ…」

クラスタ「どういう事なんだ?シヴァ、奴らを殺すのだ!」
ナーダ「分かる…ルーンの力が共鳴してる。」
レシア「共鳴?そ、そうか。ナーダはルーンナーの修行をした事があったんだよな。」
ナーダ「ちょっとだけ…だけどね。」

シヴァ「その力で俺を…俺はもう…死んで……」
ナーダ「…分かりました。」


ナーダは杖をシヴァに向ける。杖の先とナーダのペンダントが同時に光り輝く。


レシア「何が起こるんだ…」
ナーダ「ルーンは魔除けの力もあるの。この力がクラスタの技を打ち破って、シヴァさんを救ってくれるのが分かる。」
シヴァ「……」



ナーダ「ルーンクラッシュ!」


杖から光が弾け飛び、シヴァを包む。光は輪を作り上げシヴァに吸い込まれる。そしてすぐにシヴァが大きな光に包まれた。


クラスタ「な…何なんだこれは。」
シヴァ「…あり…がとう……」
レシア「シヴァ!」


光が収まった時、シヴァは地面に倒れていた。


レシア「シヴァ、今度こそ逝ったのか…安らかに眠れ。」
ナーダ「シヴァさん…」
クラスタ「く…」

レシア「クラスタ、今度こそ終わりだ。もう逃げ場は無いぞ。」
クラスタ「逃げ場が無いだと?ふふふ、甘いな。逃げ場は作る物なのだ。霧隠れ!」


クラスタは霧に包まれて姿を消した。


クラスタ「今回は見逃してやろう。次は本気で戦わせて貰う。」
ナーダ「どこ…?」
レシア「……クラスタの気配が遠ざかっていく。逃げたのか。」


暫く辺りを窺ったが、クラスタの気配は完全に消え去ってしまっていた。


レシア「…ふう。何とか終わったな。」
ナーダ「そう…なの?私は気配とか分からないの。」
レシア「まあ、実践を重ねた者にしか分からないのかもな。」



ハンターの長であったシヴァが死に、レシア達に隠れる場所はもう無くなったのかもしれない。それでもやるべき事が朧気ながら見えて来ていた。


レシア「あの時にシヴァが言い掛けた言葉…【ダーク・アサシンの正体はブラックの】ってヤツだが。」
ナーダ「でもそのブラックって人は違うんでしょ?」
レシア「そうだな。つまりブラック本人では無いが、ブラックの関係者って事だ。」
ナーダ「関係者って言っても幅が広くない?」
レシア「さらに言えばシヴァの憶測が合っている、という条件付きだしな。でもそれを信じるとしたら、ブラックに聞けば良いって事だ。」

ナーダ「そのブラックって人の居場所は知っているの?」
レシア「ああ。アサシンを引退して形式上は一般人に戻っているが、様々な情報を持っている。一定以上のアサシンであれば、居場所は皆知っている。実際にバダグとブラックの会合に付き添いで行って、会った事もあるしな。」
ナーダ「じゃあ顔も知ってるんだ。」
レシア「勿論だ。あの時はヤツは既に引退してたから、今の俺の状況を知っているかは分からないがな。」


シヴァに向かって手を合わせた。


レシア「シヴァ、後は俺に任せろ。ゆっくり休め。」
ナーダ「俺、じゃなくて俺達でしょ?」
レシア「…そうだな。さっき使用したルーンクラッシュは普通の人間には効果無さそうだけど、魔物にならダメージを与えられそうだったし。戦力アップだな。」
ナーダ「やった。」


レシア「よし、ブラックの住んで居るビルへ向かおう。」




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