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5、角うさぎの丸焼き

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「トワロ、また森へ行きましょう! 」
「慌ただしいですね、朝葉様」
そう言うとトワロはナプキンで口元を拭った。

「だって、お肉食べたいんだもん」
「はい、はい」
トワロも朝葉の性格が分かってきたのか、扱いが少し雑になった。

「では、出かけましょうか」
トワロはそう言うと、剣を手にした。
「うん、トワロ」
私は頷いて、勢いよくドアを開けた。
駆け出そうとする私をトワロが制する。

「朝葉様、鍵をかけて下さい。不用心ですよ」
「はい」
私は赤面しながら鍵をかける。一応空かないことを確認して、また森に向かった。

今度の獲物は角ウサギだ。
森の中にいっぱいいるってトワロは言っていた。
私は角ウサギは丸焼きにしようと思って、香草を探した。

「ねぇトワロ、良い香りの草って生えてる場所何処? 」
「そうですねぇ、南の草原には良い香りの草が生えていますが、何に使うんですか? 」
「決まってるじゃない、料理よ」
「はい、はい」

そう言いながら南の草原に歩いて行く。
「角ウサギも南の草原にもよく現れますから、お気をつけて」
「鴨が葱をしょってやってくる感じね」
「少々その例えは私にはわかりにくいのですが」

するとそのとき、角ウサギが現れた。
私にだって分かるくらいシンプルに、角の生えたウサギだ。
でも、私が見たことがあるウサギより三倍は大きい。

「朝葉様、先ほどは見事な解体のスキルを発揮されていましたが今回はどうですか?」
「ちょっとまって、トワロ。 えっとね・・・・・・」
私はそう言って角ウサギを観察した。
すると、スライムと同じように、光の筋が見えた。
「危ない、朝葉様!!」

トワロの声に我に返る。
角ウサギの角で頬を傷つけられた。
結構痛い。

「よくもやったわね!」
私は角ウサギに剣をかざし、光の線をおった。
角ウサギはすばしこくて結構難しかったけど、なんとか勝利した。
すでに解体のスキルで、肉と内臓、毛皮がきちんと切り分けられている。

「後は香草ね」
「このあたりがよい香りの草ですが」
「どれどれ?」
トワロから渡されたのは、ローズマリーに似た草だった。
毒の見識スキルでは無毒。

「じゃあ、ウサギがパンパンになるくらいこの草を摘んでちょうだい」
「わかりました、朝葉様」
トワロはもう疑いの目で見たりしなかった。
すぐに二人の鞄がパンパンになった。

「それじゃ家に帰りましょう」
「はい、朝葉様」
二人は家に帰ると、私はすぐに手を洗って料理を始めた。
一階はレストラン用の台所と言われただけあって、オーブンもおっきな角ウサギが丸々入りそうだ。
私は角ウサギに、胡椒と塩で下味をつける。
そして、摘んだばかりの香草を角ウサギのお腹に詰め込んだ。

「これでオーブンで焼けばできあがり」
小一時間たった頃、良い匂いがしてきた。
一応、毒の見識のスキルを使う。無毒。
やっぱり野生の生き物は寄生虫とか怖いもんね。

「出来ました!」
私がオーブンを開けると、部屋中にお肉が焼けたよい香りが漂った。
大きなお皿に角ウサギの丸焼きをのせる。
「お肉! お肉!」
「はい、はい」

トワロは関心半分、呆れ半分の目で私を見ていた。
「ね、一緒に食べましょう」
「はい」
私はトワロのお皿に角ウサギを切り分けた。
表面がパリパリと言っている。
これはきっと美味しく出来ているはずだ。

「それじゃ、頂きます」
「頂きます」
私とトワロは角ウサギを口に含むと、顔を見合わせた。
「美味しい」
「肉汁があふれてきます。それに表面がカリカリして美味しい」

二人は満足そうな笑みを浮かべた。


でもどうしよう。
二人分には多すぎる。
ここはレストランだったといっても、城からモンスターの出る森の端をちょっと歩く。
危険な場所だ。美味しいからと言って、すぐにお客さんが来るとも思えない。

「トワロ、残った料理、どうしよう・・・・・・」
「そうだ、あそこに行きましょう」
トワロはそう言うと、思わせぶりに微笑んだ。
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