異世界レストラン ードラゴンパイの作り方ー

茜カナコ

文字の大きさ
16 / 48

16、巨大角うさぎのトマト煮込み

しおりを挟む
「冒険者の館に行って、新しい依頼を受けに行こう」
朝葉あさははそう言って、トワロとセリスに話しかけた。

「そうですね。いまは地道に騎士レベルを上げるのが先決ですね」
トワロはそう言って微笑んだ。
「もう、トワロを危ない目に遭わせたくないもん」
朝葉はそう言って、冒険者の館へと向かった。
トワロとセリスもついていった。

「よお、朝葉、コカトリスに負けたんだって? 」
冒険者の館に入ると、シンが開口一番にそう言った。
「うん、トワロが危ないところだったんだよ」
「そうか。まだ、コカトリスは早いだろうよ」
シンは頷きながら言った。

「今の私たちに丁度いい依頼は無い? 」
朝葉がそう言うと、シンは奥から台帳を持ってきた。
「そうだな、今は巨大角ウサギの討伐が良いんじゃ無いか?」
「巨大角うさぎ? 」
トワロが訊ねると、シンは依頼書を台帳から抜き出して、朝葉達に渡した。

「森の奥に普通の角ウサギの10倍デカい、巨大な角ウサギがでてるらしい」
シンがそう言うと、朝葉は目を輝かせた。
「そうなんですか!? 」
「ああ、コイツなら今の朝葉達でも倒せるだろう」

トワロが言った。
「そんな巨大な角ウサギなんて聞いたことがありません」
「そうだな、最近モンスターも増えているし、なんか起きているのかも知れないな」
シンはそう言って、顎を撫でた。

「じゃあ、この巨大角ウサギの依頼受けます。良いですよね?」  
朝葉がそう言うと、トワロとセリスが頷いた。
「ああ、じゃ、よろしく」
シンはそう言って、手を振った。

朝葉達は一度バンガローに寄って、装備を調えてから森の奥へ向かうことにした。
「よし。トマトはたっぷりあるから、巨大角ウサギはトマト煮込みにしよう」
朝葉はそう言うと嬉しそうに食材袋を二つ鞄の中に入れた。
「トマトって何だ?」
セリスが聞くと、朝葉は冷蔵庫から一個みずみずしい実を取り出した。
「この赤い実だよ」
トワロはそれを見て、頷いた。
「ああ、畑に沢山なっていましたね」

朝葉達は余分な荷物はバンガローに置いて、森の奥に向かった。
途中はたいしたモンスターも出ずに、サクサクと歩いて行けた。

「そろそろ森の奥ですね」
トワロがそう言うと、朝葉とセリスは武器を構えた。
「あそこ、なんか居るよ」
朝葉が指さした方向には、巨大な角ウサギがいた。
「大きい!?」

10倍大きいと聞いていたが、本物はもっと大きく感じた。
トワロは剣を構えた。
朝葉とセリスも武器を構える。
三方向から、巨大角ウサギをじりじりと追い詰めた。

そのとき、巨大角ウサギがセリスを蹴り上げた。
「痛い!!」
「大丈夫ですか!?」
「ああ、大丈夫だ」

朝葉は剣をかざして巨大角ウサギに躍りかかった。
巨大角ウサギの首の根元に剣が突き刺さる。
トワロがたたみかけるように、その胸に剣を突き刺した。

巨大角ウサギが倒された。
「ふう、おっきいね」
朝葉は汗を拭いながら解体に取りかかる。
トワロはセリスの傷に薬草をぬると、包帯をした。

「セリス、大丈夫ですか?」
「ああ、ちょっとびっくりしたけど大丈夫だよ」
トワロとセリスが立ち上がったとき、朝葉が言った。
「解体、終わったよ」

朝葉は持ってきていた袋二つに、巨大角ウサギの肉と角と毛皮を詰め込んだ。
「角と毛皮も売れるって、シンが言ってたから持って帰るよ」
朝葉がにこやかにそう言うと、トワロとセリスが頷いた。

帰り道は荷物が多かったが、敵に襲われることも無く無事バンガローに着いた。
「さあ、荷物を片付けたら、巨大角ウサギのトマト煮込みを作るよ!」
朝葉はそう言って、巨大角ウサギの肉を切り分けた。
そして、ニンニクとオリーブオイルと香草で肉を炒めると、大きな寸胴なべに炒めた肉を入れた。
トマトも粗く刻んで、オリーブオイルで炒めてから、塩胡椒で味付けして、肉の入った寸胴鍋に入れる。

「さあ、あとは煮込むだけ。その間に冒険者の館に行ってこよう!」
「はい、朝葉様」
三人は冒険者の館に向かった。

「おお、朝葉! あいかわらず早いな!」
館に入るとシンが笑って出迎えた。
「はい、角と毛皮だよ」
朝葉はシンに、巨大角ウサギの毛皮と角を渡した。

「おお。これはデカいな」
シンは代金として10000ギルを朝葉に手渡した。
「ところで朝葉、レストランは本当に開業しないのかい?」
シンが訊ねると朝葉は渋い顔をした。
「料理を作るのはいいけど、接客が大変だって言ったでしょ?」
シンは頭を掻いた。

「前にも言ったけど、俺の店はレストランじゃねえんだよ」
トワロが頷いた。
「そうですね。確かに最近客層が変わってきてますね」
「だろう? 」
朝葉はちょっと考えてから言った。

「それじゃ、週末だけのレストランなら良いですよ」
トワロはそれを聞いて驚いた。
「朝葉様、騎士のレベルアップはいかがするおつもりですか!?」
朝葉は笑って答えた。
「休日以外は冒険をするよ。それでいいでしょ?」
「それはいいな」
シンがそう言って笑った。

「そろそろ、トマト煮込みが心配だから、帰るね」
朝葉がシンにそう言うとシンが答えた。
「ああ、また料理を持って来てくれ」

朝葉達がバンガローに戻ると、トマト煮込みの良い匂いが部屋中に立ちこめていた。
「お腹空いた!!」
朝葉はそう言って、巨大角ウサギのトマト煮込みの味見をすると、すこし塩と胡椒を足して、味を調えた。

「さあ、出来たよ」
トワロとセリスは席に着くと、朝葉の取り分けたトマト煮込みをじっくり見た。
「これがさっきの巨大角ウサギ」
セリスが呟いた。

「さあ、いただきます!!」
朝葉が元気よく言うとトワロとセリスも続けて言った。
「いただきます」
「うん、トマトの酸味と、巨大角ウサギの脂の甘みが合わさって美味しい!」
朝葉は満足げにそう言うと、パクパクとトマト煮込みを食べていった。

「トワロ、こうしてモンスターを食べても体に異常はないのかい?」
セリスも美味しそうにトマト煮込みを食べながらトワロに訊ねた。
「はい、今のところは問題ありません」
トワロも舌鼓を打っている。

「問題は、朝葉様の騎士レベルより、調理師レベルの上がり方が早いこと位でしょうか」
トワロはそう言って、ため息をついた。
「それにレストランを開くのなら、お城に相談に行く事も考えなければいけません」
トワロはそう言って、朝葉の料理を口に運んだ。
「そっか、朝葉は勇者だもんね。料理人になっちゃ困るよねえ」
セリスはそういいながら、トマトのスープを飲み干した。

「美味しかった!」
朝葉はそういって空のお皿を満足げに見ていた。
「ねえ、トワロ、レストラン開かなきゃいけなそうだね」
「そうですね、朝葉様」
「お城に連絡しないといけないかな?」

「はい、朝葉様。女王様の許可を取らないといけません」
トワロと朝葉が話し込んでいると、セリスがあくびをした。
「私はそろそろ家に帰るよ。朝葉、ごちそうさま」
「はい、セリスさん、ありがとうございました。

セリスはバンガローを後にした。
トワロと朝葉は明日、王宮に顔を出すことを決めた。
「なんだか大事になってきちゃったね」
「朝葉様、騎士のレベルアップについても真面目にお考え下さい」
「はーい」
トワロはそう言ってから、バンガローを後にした。

朝葉は一人になってから、調理器具や食器を洗った。
「こんな町外れまでくるお客さんなんているのかな?」
一人呟いてから、シャワーを浴びて、寝る準備をした。

明日は朝から忙しくなりそうだと朝葉は思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……

ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。  そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。 ※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。 ※残酷描写は保険です。 ※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

Emerald

藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。 叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。 自分にとっては完全に新しい場所。 しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。 仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。 〜main cast〜 結城美咲(Yuki Misaki) 黒瀬 悠(Kurose Haruka) ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。 ポリン先生の作品はこちら↓ https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911 https://www.comico.jp/challenge/comic/33031

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...