調律師カノン

茜カナコ

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2.魔法試験

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カノンの住むマジア王国では、魔法使いの育成に力を入れていた。
そのため、12歳を迎えた子どもは、かならず魔力量の測定が行われている。12歳になったカノンも例外ではなかった。

「カノン、お城に行く準備はできた?」
「うん、お母さん」
 カノンは持っている服の中から一番新しい服を選んで着替えた。
「それじゃ、俺がカノンを城に連れていく」
「おねがいします、あなた」
 カノンの父親も、正装をしていた。
 
 今日は、王宮で行われる魔力測定の日だった。
 カノンは父親に連れられて、魔力測定会の受付を済ませた。
「お父さん、僕、魔法使いになれるかな?」
「カノンにはむつかしいかもなあ。魔法なんて使ったことないからな」
 カノンと父親が話していると、名前を呼ばれた。
「カノン・ハリスさん、来てください」
 魔力量を測定している会場から声がした。

「じゃ、行ってきます。お父さん」
「ああ、魔力なんてなくても大丈夫だから、気楽に行ってこい」
 カノンは魔力の測定の場に一人で入っていった。
「カノン・ハリスさんですね」
 眼鏡をかけた、細身の男性がカノンに声をかけた。
「はい、よろしくお願いします」
 細身の男性はカノンをちらりと見てから、台座に置かれた水晶を指さした。

「それじゃあ、この水晶に触れてください」
「……はい」
 カノンが水晶に触れると、不協和音が部屋中に響いた。
「こ、これは!?」
「え!?」
 会場がざわついた。
「耳をふさげ!!」

 カノンが思わず目をつむった瞬間、水晶に亀裂が入り不協和音が消えた。
「魔力量が……測定不能? 魔力の種類も不明? 君は一体何者なんだ!?」
眼鏡の男性がとまどっていると会場の奥から、帽子をかぶった偉そうな人がカノンのもとにやってきた。
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