貴方を夢に見る~「身分違いの恋に悩むのは愚か者だ」とバートは考えていたはずだった~

茜カナコ

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5.仕事の邪魔

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「バート様、お食事に何か問題でもありましたか?」
「何故だ?」
 おびえるように距離をとりつつ愛想笑いを浮かべた料理長が、おずおずと私に言った。
「朝からもう五回もキッチンに顔を出されていらっしゃるので。……何かお気になることがあるのかと」
「いや、大したことではない。ちょっと……ドライフルーツを頼みたいのだが」
 バートは顎をさわりながら、料理長をちらりと見た。
「はい、頼んでおきます。果物の種類はいかがいたしましょうか?」
 バートは口元に手を当てて料理長から目をそらして言った。
「……自分で注文したいので、リンスコット商会のものが来たら教えてもらえるか? 私はしばらく書斎にいる」
「わかりました。承りました」
 頭を下げる料理長。バートはキッチンを離れ、書斎に向かった。

***

 バートは一人、書斎の事務机につき仕事をしていた。いくつかの書類を確認し、サインをしていると、ドアがノックされた音に気づき、振り返った。
「なんだ?」
 バートの返事をうけ、ドアが開けられた。
「バート様、リンスコット商会の者が来ました」
 バートの目が軽く見開かれた。
「ありがとう、今行く」

 バートは慌てて書類を片付けると、書斎を出てキッチンに向かった。

「バート様、こんにちは」
 にっこりと笑うアンナに、バートは内心の喜びを隠しながら微笑み返す。その様子を見た料理長が、一瞬目を丸くした。料理長はバートの視線に気づくと、さりげなく目をアンナとバートから逸らし、受け取った荷物を片付け始めた。

 アンナはメモを片手に、バートに問い掛けた。
「ドライフルーツのご注文があるそうですが、種類はいかがいたしましょうか?」
「そうだな……とりあえずアプリコットとイチジクを頼みたい」
「量はどのくらいにいたしましょうか?」
「味見程度でいいのだが」
「それなら、百……いえ、二百グラムずつお持ちいたしましょうか?」
「それで頼む」
「承りました」
 アンナがにこりと微笑む。バートも無意識で微笑み返した。

 アンナはメモを取り終わると、バートの目を見つめた。バートがたじろぐと、アンナは首をかしげて言った。
「ほかにもご注文が?」
「いや、大丈夫だ」
「それでは、ドライフルーツはまた来週お持ちいたしますね」
「ああ。よろしく頼む」

 アンナは生き生きとした笑顔で別れを告げた。
 アンナの後姿を見つめているバートに、料理長が声をかけた。
「バート様、ほかにもご用件がございますか?」
「いや、大丈夫だ」
 バートは笑みを消すと、何もなかったような表情でキッチンから出て行った。
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