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4、ユーリとの出会い

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「後は、ユーリに紹介するわ」
ミクルは言った。
「ユーリさんですか」
司が繰り返す。
「ええ。この宮殿には特に優れた冒険者を勇者見習いとして住まわせて居るのよ」
ミクルは自分のことを自慢するように言った。

「ここがユーリの部屋」
「立派ですね」
ミクルはドアをノックした。
「ユーリ、居る?」
「はい、どうぞ」
ドアが開いた。

そこには髪の長い少年が立っていた。
年はミクルと同じく16才位に見えた。
「そちらの方は?」
「召喚魔法で呼び出した、結城司よ」
「はじめまして、司です」
「どうも、よろしくお願いします。ユーリです」
ユーリは丁寧に頭を下げた。

「人間の方ですよね?」
ユーリは一応、司に尋ねた。
「はい」
司は返事をした。

「ユーリはこう見えて、剣の達人なのよ」
ミクルに言われて、ユーリは俯いた。
「僕は両親が騎士だったから、幼いときから剣を持つ習慣があっただけです」
ユーリはボソボソとしゃべった。
「そんなこと言ってるけど、冒険者の剣術大会で優勝したじゃない」
ミクルは軽くユーリを睨み付けた。

「ミクルさんが魔法使いで良かったです。僕じゃ勝てませんから」
ユーリの言葉にミクルが頷く。
「当然でしょ」
司はユーリに微笑みかけてみた。
するとユーリは微笑み返した。

「魔術師の大会では私が優勝したのよ」
ミクルは得意げに言った。
「だから、ユーリと私が勇者見習いとして王宮に入ったの」
「そうなんですか」
司は答えた。

「魔王は本当に悪い物なんですか?」
司の言葉にユーリとミクルは目を見開いた。
「街をまるごと消したんだよ!?」
「そうですね」
司はしまったと思ったが遅かった。

「痛い!」
ミクルが呪文を唱えた。
「私の両親を殺した魔王が悪い物じゃないとでも言うの!?」
「ミクルさん、やり過ぎではないですか?」
ユーリが顔をしかめている司を見て、ミクルをたしなめた。

ミクルはふん、と顔を背けた。
「はーっ」
司は痛みから解放され、大きなため息をついた。
「ありがとうございます、ユーリさん」
「いいえ。ですが、言葉には気をつけてください、司さん」

「それじゃ、挨拶はこれで終わりね」
ミクルはそう言うとさっさと部屋を出た。
慌てて司はその後を追った。
ユーリはただ、立ち尽くしていた。
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