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6、魔導書

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ミクルは司を図書館へ連れて行った。
「ここにあるのが、補助魔法について描かれた書物ね」
「一冊だけ何ですか?」
「ええ。本で学べるのは基礎だけだからね」
ミクルはそう言って、司の前に本を置いた。

司が本を開くと、本からまばゆい光りが放たれた。
「うわ!」
ミクルは目を閉じた。
司は光りの中に立ち尽くしていた。

司の頭の中に、直接音楽のような呪文のような言葉が流れ込んできた。
ミクルは司をじっと見て、微笑んだ。
「どうやら、本の中身が入ってきたようね」
「ミクルさん、どういうことですか!?」
司が聞くとミクルは答えた。

「魔道書は、その魔法と相性の良い人に開かれると魔法が自然に流れ込むらしいわ」
「らしい、とは?」
司の問いかけに、ミクルはそっぽを向いて答えた。
「・・・・・・私はちゃんと読んで理解したから魔法が使えるの。自然に分かったわけじゃないわ」
「そうなんですか」
司は光の消えた魔道書を撫でた。

今は何の変哲も無い、大きな羊皮紙の本に見える。
「外に出て、試して見ましょう」
「試す?」
「司が手に入れた力を試してみようって話よ」
そう言って、ミクルは外に向かって歩き出した。

司はミクルの後を追う。

「この辺りで良いかしら」
ミクルは人通りの少ない小道に着くと立ち止まった。
「司、目をつむって、私のスピードが上がるよう呪文を唱えてみて」
「えっと、こうかな?」
司は言われるがままに目を閉じて、ミクルのスピードが上がる様子をイメージをした。
頭の中に不思議な音階で言葉のような物が流れる。
司はその浮かんできた旋律を口ずさんだ。

すると、ミクルの体が光った。
「良いわね、体が軽くなったみたい」
そう言ってミクルは軽く駆けた。
そのスピードは風の様だった。

「後は、どんなイメージが出来るのかしら?」
ミクルに問いかけられ、司は目を閉じた。
「力強いイメージと、魔力が増大するイメージが浮かびます」
司の答えを聞いて、ミクルは頷いた。
「上出来ね」

司はミクルのスキルが上がるイメージをすると、どっと気力が下がるのを感じた。
「ちょっと、精神的にしんどいんだが」
「それは、魔法を使ったからよ」
「魔法? 俺が!?」
司は驚いたが、ミクルは笑っている。

「今日はここまでにしましょう、司」
ミクルは腰に手を当てて言った。
「疲れました。ミクルさん」
司はうなだれそうになりながらも、なんとか立っていた。

「それじゃ、また明日。食事は部屋に届けられるわ」
「はい、分かりました」
司は自分の部屋に戻った。

しばらくすると、野菜が少し入ったスープと、固いパンが部屋に届けられた。
「こんな生活が続くのか・・・・・・」
司は質素な食事をとると、疲れた体をベッドに沈めた。
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