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1、異形の姫君
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神と人が今よりも近くで生きていた時代に、ある少女が生まれた。その少女の名前は時姫(ときひめ)と言った。時姫は白い髪に薄い灰色の目をしていたため、人ならざるものとして育てられた。
時姫は神事に携わる中臣氏(なかとみうじ)の次女として生まれた。中臣氏(なかとみうじ)の家では、代々長女が家を継ぐしきたりになっている。時姫の姉、風姫(かぜひめ)が、家を継ぐものとして育てられ、次女の時姫は神への供物として大切に育てられた。
ある時、風姫が両親に尋ねた。
「父上、母上、なぜ時姫の髪は白いの? あんな目の色をしているの? 私達はみんな黒いのに何故なの?」
「風姫(かぜひめ)、そのようなことを口にしてはいけない。神罰が下る」
「ええ、時姫は特別なのです。きっと、神の供物として特別な生を受けたのでしょう」
「……分かりました」
風姫が両親と話をしていると、時姫が風姫の着物の端をつかんで笑いかけた。
「ねえさま。あそんでくださいませ」
「……ええ、また今度ね」
時姫は、姉も両親も、自分に触れたくないのか、避けられている寂しさを感じていた。
時姫が庭で一人、日向ぼっこをしていると、幼馴染の真人(まさと)の影彦(かげひこ)がやってきた。
「時姫(ときひめ)、また日向ぼっこしてるのか? 一人なら、遊びに行かないか?」
「影彦! 今日は何して遊ぶ?」
「野草を摘みに、川のそばにいってみようか?」
「でも、父上に川を渡ってはいけないと言われているのよ?」
時姫がしょんぼりとした様子で言うと、影彦は明るい声で言った。
「川を渡らなければいいんだろう? 水辺には花も咲いているし、川には小さな魚もいる。遊びに行こう」
「それじゃあ、父上たちにみつからないようにしないと」
「分かった」
影彦は時姫の手を取り、川へ向かった。
二人は親の目を盗んで、川べりや原っぱでよく遊んだ。
「時姫、ずっと一緒にいような」
「うん」
時姫にとって影彦は、自分を異形のものとして扱わない、唯一の相手だった。
二人はお互いに手を取り合って笑った。
しかし、幼く平和な日々も終わる日がくるのだった。
時姫は神事に携わる中臣氏(なかとみうじ)の次女として生まれた。中臣氏(なかとみうじ)の家では、代々長女が家を継ぐしきたりになっている。時姫の姉、風姫(かぜひめ)が、家を継ぐものとして育てられ、次女の時姫は神への供物として大切に育てられた。
ある時、風姫が両親に尋ねた。
「父上、母上、なぜ時姫の髪は白いの? あんな目の色をしているの? 私達はみんな黒いのに何故なの?」
「風姫(かぜひめ)、そのようなことを口にしてはいけない。神罰が下る」
「ええ、時姫は特別なのです。きっと、神の供物として特別な生を受けたのでしょう」
「……分かりました」
風姫が両親と話をしていると、時姫が風姫の着物の端をつかんで笑いかけた。
「ねえさま。あそんでくださいませ」
「……ええ、また今度ね」
時姫は、姉も両親も、自分に触れたくないのか、避けられている寂しさを感じていた。
時姫が庭で一人、日向ぼっこをしていると、幼馴染の真人(まさと)の影彦(かげひこ)がやってきた。
「時姫(ときひめ)、また日向ぼっこしてるのか? 一人なら、遊びに行かないか?」
「影彦! 今日は何して遊ぶ?」
「野草を摘みに、川のそばにいってみようか?」
「でも、父上に川を渡ってはいけないと言われているのよ?」
時姫がしょんぼりとした様子で言うと、影彦は明るい声で言った。
「川を渡らなければいいんだろう? 水辺には花も咲いているし、川には小さな魚もいる。遊びに行こう」
「それじゃあ、父上たちにみつからないようにしないと」
「分かった」
影彦は時姫の手を取り、川へ向かった。
二人は親の目を盗んで、川べりや原っぱでよく遊んだ。
「時姫、ずっと一緒にいような」
「うん」
時姫にとって影彦は、自分を異形のものとして扱わない、唯一の相手だった。
二人はお互いに手を取り合って笑った。
しかし、幼く平和な日々も終わる日がくるのだった。
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