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62.キノコを探そう4
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「この先、広くなっていそうだよ?」
「気を付けて進めよ、大翔」
ひんやりとした洞窟の中は、湿った土のようなにおいがしている。
俺は駆け足気味で進む大翔の後を送れないように早足でついて行った。
「わあ、ここ広いね!」
大翔が大きな空洞の入り口であたりを見回していた。中はドーム状になっているようだ。
「真ん中にあるのは……巨大な魔石か?」
俺は青白い光を放っている大きな石に向かって進んで行った。
大きな石を中心にして、広がった空間の隅にはキノコがたくさん生えている。
「あ!! キノコがあんなに沢山!!」
大翔が早足でキノコのほうに向かった。
「おい、気をつけろ!」
「わあ……いろんな種類がある!」
大翔はキノコに夢中だ。
「ったく」
俺が大翔に近づこうとしたとき、何かの気配を感じた。左右を見たが何もいない。
上を見上げると大翔の近くの天井に、大人と同じくらい大きいスライムが張り付いていた。
「大翔! 上にでかいスライムがいる! 逃げろ!!」
「えっ!?」
大翔はキノコを手に持ったまま顔を上に向けた。
同時に、どんっという衝撃と共にスライムが落ちてきた。
「うわっ!?」
「大翔!」
俺は剣を構えてスライムに向かって行った。
「くっ!!」
剣をスライムに振り下ろしたが、ぶよんっという感触がしただけだった。はねかえった剣の柄を両手で押さえ、俺は少し後ろに下がった。
「大翔! スライムを凍らせられるか!?」
「えっ!? ……やってみる!」
大翔はスライムに両手を向けた。
「アイススピア!」
大翔の両手から氷の槍が放たれスライムに突き刺さる。
「ぐゅきゅっ」
スライムの動きが止まった。
「コールド・ウインド!」
大翔の声と共にスライムが白く濁った。
「よしっ!」
俺はもう一度剣を高く振り上げ、スライムに打ち付けた。
ガキンッと氷を打ったような音が響き、スライムが砕けた。
「大翔、大丈夫か?」
「うん。健、ありがとう」
「怪我がなくてよかった」
俺たちはあたりを見回した。もう敵の気配はない。
「大翔、キノコを採ったらすぐに帰るぞ。いつまたモンスターが現れるか、わかったもんじゃない」
「うん。急ぐよ。僕がキノコを採って渡すから、袋に詰めてもらえる?」
「ああ、分かった」
俺たちは二つの大きな布袋をキノコで満たすとお互いに一袋ずつ肩から下げ、急ぎ足で洞窟の出口に向かった。
「すっごいたくさん生えてたね、キノコ」
日の光を浴びた大翔がまぶしそうに目を細めながら言った。
「でも、どれが食べられるキノコかわかるのか? 大翔?」
俺は肩にかけた袋から覗くキノコをちらりと見て言った。
「うーん……。あ、市場に持って行ってキノコ売りのおばさんに診てもらえばいいんじゃないかな?」
大翔は無邪気な笑みを浮かべて、首を傾げた。
「まあ、それが無難だろうな。毒キノコに当たって死にたくない」
「うん。そうだね」
俺たちはキノコをかかえて宿に帰った。
「気を付けて進めよ、大翔」
ひんやりとした洞窟の中は、湿った土のようなにおいがしている。
俺は駆け足気味で進む大翔の後を送れないように早足でついて行った。
「わあ、ここ広いね!」
大翔が大きな空洞の入り口であたりを見回していた。中はドーム状になっているようだ。
「真ん中にあるのは……巨大な魔石か?」
俺は青白い光を放っている大きな石に向かって進んで行った。
大きな石を中心にして、広がった空間の隅にはキノコがたくさん生えている。
「あ!! キノコがあんなに沢山!!」
大翔が早足でキノコのほうに向かった。
「おい、気をつけろ!」
「わあ……いろんな種類がある!」
大翔はキノコに夢中だ。
「ったく」
俺が大翔に近づこうとしたとき、何かの気配を感じた。左右を見たが何もいない。
上を見上げると大翔の近くの天井に、大人と同じくらい大きいスライムが張り付いていた。
「大翔! 上にでかいスライムがいる! 逃げろ!!」
「えっ!?」
大翔はキノコを手に持ったまま顔を上に向けた。
同時に、どんっという衝撃と共にスライムが落ちてきた。
「うわっ!?」
「大翔!」
俺は剣を構えてスライムに向かって行った。
「くっ!!」
剣をスライムに振り下ろしたが、ぶよんっという感触がしただけだった。はねかえった剣の柄を両手で押さえ、俺は少し後ろに下がった。
「大翔! スライムを凍らせられるか!?」
「えっ!? ……やってみる!」
大翔はスライムに両手を向けた。
「アイススピア!」
大翔の両手から氷の槍が放たれスライムに突き刺さる。
「ぐゅきゅっ」
スライムの動きが止まった。
「コールド・ウインド!」
大翔の声と共にスライムが白く濁った。
「よしっ!」
俺はもう一度剣を高く振り上げ、スライムに打ち付けた。
ガキンッと氷を打ったような音が響き、スライムが砕けた。
「大翔、大丈夫か?」
「うん。健、ありがとう」
「怪我がなくてよかった」
俺たちはあたりを見回した。もう敵の気配はない。
「大翔、キノコを採ったらすぐに帰るぞ。いつまたモンスターが現れるか、わかったもんじゃない」
「うん。急ぐよ。僕がキノコを採って渡すから、袋に詰めてもらえる?」
「ああ、分かった」
俺たちは二つの大きな布袋をキノコで満たすとお互いに一袋ずつ肩から下げ、急ぎ足で洞窟の出口に向かった。
「すっごいたくさん生えてたね、キノコ」
日の光を浴びた大翔がまぶしそうに目を細めながら言った。
「でも、どれが食べられるキノコかわかるのか? 大翔?」
俺は肩にかけた袋から覗くキノコをちらりと見て言った。
「うーん……。あ、市場に持って行ってキノコ売りのおばさんに診てもらえばいいんじゃないかな?」
大翔は無邪気な笑みを浮かべて、首を傾げた。
「まあ、それが無難だろうな。毒キノコに当たって死にたくない」
「うん。そうだね」
俺たちはキノコをかかえて宿に帰った。
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