魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ

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18.アクシデント

 翌朝、目を覚ました僕は着替えて顔を洗い、作業所に向かった。
「おはようございます。昨日はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「まったくだ」
 デニスが冷たい目で僕を見ている。
 僕は気まずさを感じながら、朝の仕事に取り掛かった。

 作業所の掃除をしているとニコラスが来て、僕に言った。
「メルヴィン、昨日のようなことがあるのは困るぞ? 今日はポーションを二つ作るように。それでも余裕があるようなら、明日はポーションを三つ作れ。まずは自分の力を把握しろ」
「……はい」
 ニコラスはそれだけ言うと作業所を出て行った。

 僕がうなだれているとデニスが鼻で笑った。
「調子に乗っているからだ」
「……」
 僕には返す言葉もなかった。

 作業所の掃除を終えると、ポーション作りに取り掛かった。
「……あれ? ちょっと余っちゃったな……」
 作り終えたポーションを二本の瓶に移したが、入りきらなかった分が鍋に残っている。

「おはようございます」
「おはよう」
 ビルとフランクが作業所に入ってきた。
「おはようございます」
「おはようございます」
 デニスと僕が挨拶を返すと、ビルは笑顔で頷き、フランクは目礼をした。

 僕は鍋に目をもどし、残ったポーションをどうしようかと悩んでいた。
「どうしたの? メルヴィン、何か困りごと?」
 ビルが僕に尋ねる。
「あの、ポーションがちょっと残っちゃって……」
「捨てればいいんじゃない?」
「え……?」

 僕は残ったポーションを捨てるのも、もったいない気がしてため息をついた。
「あ、この小瓶、もうくすんでるから使えないな。メルヴィン、これも捨てておいて」
「はい」
 僕はビルから受け取った小瓶を見て思いついた。どうせ捨てるものなら、僕がもらっても問題ないんじゃないかな?
「あの、この小瓶とポーションの残り、もらっても大丈夫ですか?」
 僕がビルに尋ねると、ビルは少し考えた後で、「別に、良いんじゃないかな?」と答えた。

 僕は小瓶にポーションの残りを入れてポケットにしまった。

 水汲みと掃除、ポーション作りが終わった僕は、せわしなく動く皆をみながら、次は何をすればいいか考えていた。
「おい、メルヴィン。ぼさっと立ってないで仕事しろ」
 デニスが不愉快そうな顔で僕に言う。
「えっと、何をすれば……?」
「ったく、気がきかねえな。外の掃除でもしてろ」
 デニスの言葉に僕は頷き、箒を持って外に出た。

 表の道を箒で掃いていると、女の子が走ってくるのが見えた。
「元気だなあ」
 僕は横目で女の子を見て、掃除に戻ろうとしたとき、女の子が転んだ。
「うぇーん! 痛い!!! お母さんー!!」
 女の子は泣いている。
「大丈夫!?」
 僕は女の子に駆け寄り、立ち上がるのを手伝った。
「あ……手と膝、すりむいてる……」
 女の子のちいさな手と膝から、血がにじんでいる。
「ちょっと待ってね」
 僕はポケットに入れていたポーションのことを思い出し、急いで取り出した。

「少し我慢してね」
 女の子の擦り傷に、ポーションを一滴たらすと、傷が消えていく。
「もう大丈夫だよ。まだ痛い?」
「……ううん」
 女の子は首を横に振った。

 ほっとして、僕は女の子に微笑みかけた。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
 女の子は走って、来た道を帰って行った。
「気を付けてね!」

 女の子を見送って振り返ると、ニコラスが渋い顔で僕を見ていた。
「メルヴィン、今使ったポーションは店の商品じゃないのか? 誰の許可を得て使ったんだ?」
「あ、あの……ごめんなさい」
 僕はポーションの入った小瓶をぎゅっと握りしめた。
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