ワイルド・ソルジャー

アサシン工房

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第2章 軍の任務

第7話 初めての任務

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 翌朝、マティアスとハンニバルは朝の支度を済ませた後、互いの部屋付近で合流した。
 マティアスは昨日購入した装備をしっかり身に着けており、準備は万全だ。
 2人は司令室に向かい、ウィリアム司令官と対面した。

「おはよう、諸君。準備は万全のようだな。マティアス、軍事基地での生活はいかがかな?」
「おはようございます、ウィリアム司令官。基地内には売店や食堂があり、部屋は何一つ不自由の無い快適さで、とても満足しております」

 マティアスはとても満足した表情で返事をした。
 外敵を気にすること無く食事や買い物が出来る環境、そして自分専用の部屋、マティアスにとってはそれだけでも夢のようだった。

「それは良かった。では今後の仕事について説明しよう。ハンニバルは普段、単独で独自の任務を引き受けて戦っている。マティアスにはハンニバルと共に任務をこなして欲しいのだ」

 ウィリアム司令官が仕事について説明すると、マティアスは既に承知しているかのようにうなずいた。ウィリアム司令官は次の説明を続ける。

「世界は終戦に向かい、この国にも徐々に平和が訪れている。だが、辺りには依然として無法者や敵国の残党兵で溢れかえっており、市民たちの生活を脅かしている。諸君にはそいつらを一掃してもらいたいのだ」

 ウィリアム司令官の説明を聞いたマティアスは「なんだ、いつも通りか」と思った。
 無法者とは飽きるほど戦ってきた上、直近ではアジトに立てこもる兵隊崩れ集団をハンニバルと2人で倒してきたからだ。
 今回もきっとスムーズに任務をこなせるだろうと思っていたその時、ハンニバルがマティアスに忠告、そして告白をした。

「マティアス、敵の数はお前が今まで戦ってきた奴らとは比べ物にならないほど多いんだぜ。もちろん俺1人の力では限度がある。その為にお前のような戦力が必要だったんだ。大勢の無法者相手に物怖じしないほどの実力者の力がな」
「ハンニバル、最初から私のことを知っていたのか」
「前にも言っただろ? お前は無法地帯の凄腕の傭兵として知れ渡っているってな」

 マティアスはここに来てようやくハンニバルが自分を勧誘した本当の理由に気づいた。
 通常の軍人を遥かに超える強さをマティアスは持っている。ハンニバルは特殊任務部隊の軍人として放っておくわけにはいかなかったのだ。

「今回の任務は、軍事基地から出て東にある街を占拠している敵兵の一掃だ。奴らのせいで多数の住民が犠牲となった。そればかりか、連中は何の罪もない民の居住区に放火している。奴らに地獄を味わわせてやれ!」

 ウィリアム司令官は敵への憎しみをあらわにしながら最初の任務について説明した。
 マティアスが今までに見てきた無法者達は、自分たちの縄張り付近で暴れ回っているだけだった。
 だが、今回の討伐対象は場所を転々とし、略奪や虐殺を繰り返している連中だ。放っておけば被害が拡散していくだろう。

「無抵抗の人間を苦しめるのは許せねぇな。たっぷりいたぶってから始末してやりてぇところだが、そんなことやってたらキリがねぇからまとめて一掃してやるぜ!」
「ハンニバル、お前が敵じゃなくて良かったとつくづく思うよ。しかし、今回の敵がそこまで下衆な奴らだとは……無法地帯の奴らが可愛く見えるな」

 もしハンニバルが悪人だったら無抵抗の人間をなぶり殺していたのだろうか。想像するだけでも恐ろしいことだ。
 軍人である以上有り得ないことだと思うが、決してハンニバルと敵対することだけは避けようとマティアスは心構えた。

「それからハンニバル、壊れた軍用車の修理が完了したぞ。軍事基地の入り口に置いてあるから、それに乗って行くと良い。では健闘を祈る」
「おぉ、これで移動も楽になるな! では行ってくるぜ!」
「気をつけて行って来ます。ウィリアム司令官」

 ウィリアム司令官が最後の案内を終えると、マティアスとハンニバルは返事と同時に敬礼し、司令室を後にした。
 2人は軍事基地の外に出ると、入り口付近に停車している軍用車に向かった。
 軍用車は頑丈な素材で出来ており、生半可な攻撃は寄せ付けないであろう立派な車両だ。
 ハンニバルは運転席に、マティアスは助手席に乗車した。

「よし、久々の車運転だ! 目的地までダッシュで行くぜ!」
「おい、くれぐれも事故は起こすなよ?」

 ハンニバルは目的地が書かれた地図を見た後、軍用車を急発進させた。
 相変わらずバイクに乗っていた時と同じで荒い運転だ。バイクの時と違ってシートベルトがあるのが救いだが。
 こんな頑丈そうな軍用車が壊れたのも、ハンニバルが事故を起こしたせいなんじゃないかと思うマティアスであった。

 軍事基地を出発して数分後、目的地の街に辿り着いた。ハンニバルは車を止め、2人は外に出る。
 街は燃え盛る炎と煙が上がっており、街に入ると大勢の住民の死体が転がっていた。奥には高笑いしながら爆弾を投げている兵士達がいる。
 
「あいつらは軍人としての誇りが無いのか! その辺の賊と何が違うってんだ!?」
「ウィリアム司令官の言う通り、腐った連中だ。生かしておけん」

 マティアスとハンニバルは怒りをあらわにする。
 ハンニバルは早速バズーカを構え、敵兵に向かって砲弾を発射する。
 砲弾が1人の兵士に直撃して粉砕させ、近くにいた敵兵達はその衝撃で吹っ飛んだ。周辺の敵兵達は驚いた様子でこちらを見る。

「お前ら、アメリカ軍の奴らか!? たった2人でここに来て俺達に喧嘩売るとは良い度胸じゃねーか」

 敵兵達は一斉に銃を構え、こちらに発砲してきた。
 ハンニバルはバズーカによる砲撃で、マティアスは新型の機関銃による銃撃で対抗する。
 マティアスは軍で購入した防弾服を装備しているおかげで、被弾してもダメージはほぼ無かった。
 2人は次々と敵兵に攻撃を命中させていくが、一撃で仕留められなかった敵兵はすぐに壁の向こうに撤退し、その後別の敵兵が次々と出てくるのを繰り返している。
 今回の敵兵は今まで戦ってきた敵たちと比べ、1人1人が高い身体能力と回避力を持っている。
 マティアスとハンニバルの力を持ってしても一撃で仕留めるのは難しかった。敵の数は一向に減らず、2人は苛立ちを隠せずにいた。
 
「くそっ! あいつらすぐに逃げやがって! 敵の数も一向に減らねーし、あの壁の奥に隠しものでもあるのか!?」
「ハンニバル、奴らが退いている壁の向こうに何かあるかも知れん。あそこに近づいてみよう。近接戦が得意なお前なら簡単だろ?」
「そうだな、俺はそっちの方が得意だったぜ!」

 マティアスとハンニバルは一旦攻撃を止め、敵兵が撤退している壁の方に走って行く。
 すると、敵兵達は慌ててこちらに向かって爆弾を投げつけてきた。
 2人は爆弾を片手で軽々と受け止め、敵兵に向かって投げ返す。爆弾は敵兵に命中して爆発し、敵兵はあっけなく爆死した。
 敵の銃撃を恐れること無く奥の壁に到着した2人は、壁の裏側に入り込む。
 そこには負傷した敵兵達と、それを治療する衛生兵達の姿があった。敵兵達は負傷したら撤退し、治療したら再出撃を繰り返していたのだ。
 
「なんだと……。なぜ俺たちの作戦が見破られた!?」

 衛生兵は慌てた様子で言った。

「その戦略だけは褒めてやる。だが相手が悪かったな」

 その場にいる衛生兵と負傷した敵兵達を、マティアスは機関銃で銃殺し、ハンニバルは素手で顔面を殴り飛ばしていった。
 回復役を潰された敵兵達は動揺を隠せずにいる状態だ。

「回復役さえ始末すればあとは楽勝だな!」

 ハンニバルは勢いよくバズーカを振り回し、敵兵を薙ぎ払っていった。
 攻撃が直撃した敵兵達は頭部や胴体が粉砕され、敵の立場からすれば阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
 ハンニバルのバズーカ薙ぎ払いを回避した敵兵達も、回避して僅かに怯んだ隙をマティアスが狙って撃ち抜いていった。

「冗談じゃねぇ! アメリカ軍にこんな化け物がいるなんて聞いてねーぞ!」

 敵兵達は悲鳴をあげながら無残に散っていく。こうしているうちに、ようやく周辺の敵を始末することが出来た。

「この辺の敵は片付いたな。さすがは訓練された現役の軍人たちだ。今までの敵とは格が違う」

 マティアスは少し前まで無法地帯で戦ってきた自分は井の中の蛙だったと思い知らされた。

「でもお前はあの数の軍人相手によく勝てたじゃねぇか。装備のおかげってのもあるだろうが、前回の戦いの時と違ってほぼ無傷で生き残ってるだろ?」
「そうだな。ありがとう。私はもっと自分の実力に誇りを持つべきだな」

 ハンニバルはマティアスの戦いっぷりを褒めると、マティアスは微笑みながら礼を言った。同時に自分が強くなったのだと実感していたのであった。
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