ワイルド・ソルジャー

アサシン工房

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第2章 軍の任務

第18話 ジャングルの激戦

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 ジェフはマティアスに接近すると、一旦バズーカを背中に背負い、素手で殴りかかって来た。ジェフの怒涛の連続パンチがマティアスを襲う。
 マティアスは負傷した身体に鞭打ちながら、敵の攻撃の回避と受け流しに専念した。

「守ってばかりじゃ俺に勝てんぞ。いつまで持ちこたえられるか?」

 ジェフはダメージで動きが鈍くなっているマティアスを追い詰めていく。
 もはやマティアスには、これ以上攻撃を回避するほどのスタミナはほとんど残っていない。
 マティアスはジェフのパンチを両手でガードするが、その衝撃で軽くふっ飛ばされる。
 ガードしていたのでダメージは少なかったが、疲れのせいで足元がおぼつかない状態だ。
 マティアスは一時撤退してスタミナ回復することも考えた。
 しかし、そんなことをすればジェフが再び雑兵のところに戻って後方支援を再開する可能性が高いので休むわけにはいかなかった。

(ハンニバル……遅いな……。いくら相手が改造人間の集団とはいえ、雑魚相手に時間が掛かりすぎじゃないか?)

 疲れ果てたマティアスに、ジェフは更なる追い打ちをかけようと近づいてくる。

「もう無駄なあがきはやめろ。貴様の仲間はとっくに俺の部下達にやられているはずだ。あの男もなかなか強そうな奴だったが、さすがにあの数相手には勝てまい」

 あのハンニバルがなかなかやって来ないということは、本当に雑兵の集団にやられてしまったのだろうか。
 ジェフが再びマティアスに殴りかかろうとしたその時、遠くから砲弾がジェフ目掛けて発射され、それはジェフに命中してふっ飛ばした。

「待たせたな! あっちの雑魚どもは片付けておいたぜ。後は俺に任せておけ!」

 ハンニバルがこちらに向かって走ってきた。さすがのハンニバルも大勢の改造人間相手と戦っていて無傷とまではいかなかったようだが、まだ余裕のある表情をしていた。

「ハンニバル、遅かった……じゃないか……。やれるだけのことはやった……後は頼んだぞ」

 マティアスは息切れしながら言った。マティアスは体力回復に専念する為に一旦その場から離れ、身を隠す。
 一方、ジェフは起き上がると、20数人の兵士相手と戦ってもまだ余裕のあるハンニバルの姿を見て驚きを隠せなかった。

「貴様、あれだけの兵士達と戦ってまだ戦えるというのか!?」
「俺はアメリカ軍最高傑作の人間兵器なんでな。そこの鉄仮面野郎、俺とタイマンしようぜ!」

 ハンニバルは挑発的なハンドサインを見せながらジェフを戦いに誘う。
 ジェフはハンニバルが近接戦闘向きだと見抜いたのか、背中に背負っているバズーカを再び取り出し、ハンニバルに向けて砲弾を放つ。
 ハンニバルも対抗して砲撃し、互いの砲弾を相殺、ぶつかり合った砲弾は激しく爆発した。
 その後も互いに砲撃し続けるが、その様子を陰で見ていたマティアスは、砲撃に関してはハンニバルよりジェフの方が攻撃範囲や発射速度の面で上回っていると気づいた。

「ハンニバル、撃ち合いではお前が不利だ。ここはお前の得意な近接戦に持ち込んでやれ!」
「おう、そうするぜ!」

 ハンニバルは砲撃を止めてバズーカを背負い、ジェフがいる所へ走って行く。
 ジェフはそんなハンニバルを近づけまいと、上空に砲弾を撃ってからの爆撃や、正面からの拡散弾を撃ち続けた。
 ハンニバルは敵の砲撃を避けようともせず、被弾しても怯むことも無く、そのままジェフに向かって行く。
 ダメージはゼロでは無いが、よほど危険な攻撃でない限りノーガードで突っ込むのがハンニバルの戦い方だ。
 
「こいつ……! 俺の攻撃が効かないのか!? それともただの馬鹿か!?」

 ひたすら攻撃しても足を止めることなく向かってくるハンニバルに戸惑いを見せるジェフ。
 ハンニバルがジェフとの距離を詰めていったその時、ハンニバルはジェフの顔面目掛けて渾身のパンチを繰り出す。

「その鉄仮面ごと顔面を粉砕してやるぜ!」

 ハンニバルのパンチはジェフの鉄製フェイスマスクに命中したが、フェイスマスクは凄まじい硬さでハンニバルの力を持ってしても傷ひとつ付けることが出来なかった。

「ちっ! 見かけに寄らずめちゃくちゃ硬ぇな……」
「無駄だ。このマスクは巨大生物兵器の攻撃をも受け付けない特殊素材で出来ている。俺に近づいてきたことを後悔させてやろう!」

 ジェフはハンニバルが怯んだ隙に連続パンチを繰り出した。ハンニバルは顔を何発も殴られたが、自分も負けじと連続パンチを繰り出す。
 互いの拳がぶつかり合ってしばらくした後、今度は2人同時にキックを繰り出した。キックは互いの足に直撃し、互いの身体に強い衝撃が走る。

「てめぇ、なかなかやるじゃねぇか! こんなに楽しい戦いは初めてだぜ!」
 
 ハンニバルは自分と対等に張り合える相手と戦えて楽しそうな表情を見せる。
 一方、ジェフは無言のまま一歩後退し、ボクサーのように両手を構えるポーズを取った。
 ハンニバルは再びジェフに近づき殴り掛かるが、ジェフはそれを軽々と回避する。
 ハンニバルの攻撃はことごとく避けられ、ジェフは一瞬の隙を付いてハンニバルの腹に渾身のパンチを食らわせた。
 ハンニバルは痛みのあまり片手で腹を押さえつける。

「ぐっ……! セコい戦い方しやがって……! 男……いや、改造人間なら正々堂々、正面からぶつかって来いや!」
「正面から殴り合ってるだけでは貴様には勝てないと判断したからだ。貴様のパワーと強靭さは褒めてやる。だが、力任せに攻撃するだけではこの俺は倒せんぞ!」

 ジェフは先ほどの殴り合いで、ハンニバルのパワーが自分より上回っていることを見抜いていた。
 だからこそ、回避に専念しつつ隙を見て攻撃を仕掛ける戦闘スタイルに切り替えたのだ。
 単純なパワーだけはハンニバルが上回っていた。しかし、軍人としての戦闘経験とテクニックでは圧倒的にジェフが上だ。
 その経験値の差がハンニバルを不利な状況に追い込んでいたのだ。その後もハンニバルはジェフに攻撃を当てることが出来ず、一方的に殴られていく。

(くそっ……! 本当はこんな奴、俺1人で倒したかったが……ここはマティアスに頼るしかねぇな……)

 ハンニバルは殴られながらも無言でハンドサインを出した。マティアスに助けを求めるサインだ。
 身を隠して休みながらハンニバルとジェフの戦いを見ていたマティアスがハンドサインに気付くと、身を潜めてジェフの背後に回る。
 幸い、ジェフは完全にハンニバルに気を取られていた。
 その隙にマティアスは銃剣付きライフル銃を構えて突撃し、ジェフの背中に向けて力いっぱい槍斧状の銃剣を突き刺す。
 銃剣はジェフの背中に深く刺さったが、ジェフはすぐには倒れず、背後にいるマティアスを殴ろうとする。
 マティアスは急いで銃剣をジェフの背中から引き抜き、しゃがんで攻撃を回避した。

「ぐあああっ!!」

 銃剣を引き抜かれ、背中から激しく血を噴き出したジェフは悲鳴を上げた。
 その隙にハンニバルがジェフに飛び掛かって押し倒し、馬乗りの体勢になる。

「ぐっ……あの時、もっと早く金髪の男を処理しておくべきだったか……。俺の詰めが甘かったようだな……」
「2人がかりで攻撃して悪かったな。本当はタイマンでお前に勝ちたかったんだけどよ、俺達も生き延びる為には手段を選んでる暇はねーんだ」

 ハンニバルは馬乗りになりながらジェフの上半身を何発も殴り続ける。身動きの取れなくなったジェフは一方的に殴られ続け、ついに動きを止めた。
 ハンニバルはジェフが完全に絶命したのを確認すると、マティアスの元へ駆け寄っていく。

「お前のおかげで助かったぜ! それから駆けつけるのが遅れて悪かったな。別に雑魚ども相手に苦戦してたわけじゃねぇんだが、ちょっとら遅れちまったぜ!」
「……だと? どういうことだ、ハンニバル……。返答によっては殴るぞ」

 ハンニバルの意味深な言葉を聞いたマティアスは、不穏な表情を見せながら拳を立てる。

「雑魚どもの中に、ちょこまか動き回りながらチクチク刺してきやがる女の兵士どもがいてよ、ムカついたからそいつらを捕まえてたっぷりいたぶってやったんだ。全身の骨を折ってやったり、手足を引きちぎったりしてな。……で、そんなことをしていたらマティアスを助けに行くのが遅れちまったぜ……」

 実はハンニバルは雑兵の中にいる厄介な女兵士達を捕まえていたぶり殺していたのだ。
 そんな身勝手な理由で遅れたことを聞かされたマティアスには、当然怒りが込み上げてきた。

「私があの鉄仮面男と必死に戦っている間に、お前は雑魚をオモチャにして遊んでいただと!? ふざけるな!!」

 マティアスは激怒してハンニバルの頬を思いっきり殴った。ハンニバルも驚きのあまり、思わず殴られた頬に手を当てる。

「いってぇなぁ……。悪かったぜ……。だが、お前にそれだけ怒ったり殴ったりする力がまだ残ってるってことは、お前もタフになったじゃねぇか!」
「そういう問題じゃない! ……ったく! 今回は無事に倒せたから良かったものの、ここの敵はただでさえ強いんだから、今度からは気をつけろよ」

 マティアスが機嫌を取り戻した後、2人は笑顔で勝利の握手を交わした。そして、空は日が暮れようとしていた。
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