ワイルド・ソルジャー

アサシン工房

文字の大きさ
40 / 44
第4章 取り戻した平穏

第37話 高速回転ティーカップ

しおりを挟む
 今度はナイトの要望で4人は"マッキー&マニースタジオ"へ向かった。マッキーワールドを代表するネズミのキャラクター"マッキー"と"マニー"と一緒に写真撮影出来るコーナーだ。
 マッキー&マニースタジオの中に入ると、行列の奥に複数の扉がある。扉の奥に撮影部屋があるのだろう。
 撮影部屋が複数あるおかげで回転率は非常に早い。無論、撮影部屋の中にはマッキーとマニーが1人ずつ、つまり建物全体の中に複数人のマッキーとマニーがいるのは言うまでもない。
 一同の番が回って来たところで彼らは撮影部屋に入る。
 そこは壁に可愛い背景が描かれた撮影スタジオとなっており、撮影場所には女性スタッフが1人、そしてマッキーとマニーが待ち受けていた。

「では次のお客様、こちらへどうぞー!」

 スタッフの案内と共に一同は撮影場所に並ぶ。エーリッヒとナイトは前に、マティアスとハンニバルは子供達の後ろに立った。
 そして、その両サイドにマッキーとマニーが立ち、可愛らしいポーズを取る。

「はい、皆さん笑顔になって! では撮りますよー!」

 スタッフの掛け声と共に、一同はマッキーとマニーと一緒に撮影された。
 写真はいくつか撮ってもらい、一番写りが良かった写真を4人分、スタッフから受け取る。

「また良い思い出が出来たぜ。ありがとな!」

 写真撮影が終わると、ハンニバルが笑顔でマニーの頭をポンッと軽く叩いた。
 これは彼なりのお礼のつもりだったのだが、マニーの着ぐるみの中の人に強い振動が走る。

「うげっ! た、叩くなよ……。壊れるだろ」

 マニーは可愛らしい外見に似合わない野太い声をあげた。
 着ぐるみの中の人がキャラクターに似合わない声で喋るという衝撃の出来事に、周りは驚いて凍り付く。

「ねぇ、今おっさんの声が聞こえなかった!?」
「ナイト君、マニーは女の子だからそんな声出さないよ! ……たぶん」

 ナイトが笑いながら声をあげると、エーリッヒは焦った様子でマニーを庇う。

「あ、ありがとうございましたー! また来て下さいねー!」

 スタッフは焦りと困惑の表情を見せたまま、一同を見送った。
 この後、スタッフはマニーの中の人に「着ぐるみ着たまま喋っちゃ駄目でしょ!」と厳しく叱ったそうだ。

「あのマニーってネズミ、見かけに寄らずドスの効いた声を出してたな!」
「いや、あれは完全にお前のせいだろ。もう着ぐるみを叩くんじゃないぞ」

 マティアスは苦笑いしながらハンニバルを注意するが、そんな彼も実は先ほどのマニーのハプニングを内心面白がっていた。
 その後も一同はジェットコースターや"イッツ・ア・ラージワールド"といった様々なアトラクションを楽しんだ。
 次に一同は"スピニングティーパーティー"へ向かっていく。
 ティーカップの形をした乗り物のアトラクションで、乗り物の中央に設置されているハンドルを回すことで回転速度を上げることが出来る、別名“コーヒーカップ”とも呼ばれる絶叫マシンだ。
 一同の番が回ってくると、4人は同じティーカップの中のベンチに座った。

「この乗り物はハンドルを速く回すほどスピードが増すんだったな? 思いっきり回してやろうぜ!」
「うん! 皆でいっぱい回そう!」

 4人はハンドルを速く回す気マンマンだ。会場のスタートの合図の音と同時に、4人は中央のハンドルを精一杯回す。
 マティアスとハンニバルのパワーもあって、4人の乗るティーカップはすぐに高速回転した。
 他のティーカップがゆっくり回転しているのに対し、一同が乗るティーカップだけが異常な速度で回転している。

「なんと! 1つだけ凄い速度で回っていますねー! 何者なんだ、あいつらはー!?」

 ティーカップ会場の係員が驚いた口調でアナウンスをする。

「ねぇ、これ以上回すと振り落とされちゃうよ! もっと速度下げよう!」
「そうだな。ハンニバル、速度を落とせ!」
「あぁ? ティーカップはスピードがあってこそ楽しめるもんだろ?」

 ハンニバルは手を止める気が無かった。あまりの回転の速さにエーリッヒとナイトはティーカップにしがみつくのが精一杯の状態だ。
 マティアスはハンドルを逆向きに回して速度を落とそうとするが既に遅く、ついにエーリッヒとナイトはティーカップの外に放り出されてしまった。
 エーリッヒはティーカップ会場の近くにある湖へ転落し、ナイトはたまたま会場近くを歩いていたクマのキャラクター"ポー"の着ぐるみに激突してしまう。
 エーリッヒが転落した湖からは体長7メートルもある巨大なワニが姿を現し、少しずつエーリッヒに近づいていく。

「うわあああああ!! マティアスさん、ハンニバルさん、助けてえええ!!」

 巨大なワニを目の前にしたエーリッヒが泣きながら2人に助けを求めた。
 その様子を見たマティアスとハンニバルは急いでティーカップから飛び出す。

「エーリッヒは私が助ける。ハンニバルはナイトを頼む!」
「分かったぜ。あっちは俺に任せろ!」

 マティアスはエーリッヒの元へ、ハンニバルはナイトの元へ急いで向かった。
 マティアスは湖に飛び込み、エーリッヒの元へ駆け寄る。

「エーリッヒ、もう大丈夫だ」

 マティアスはエーリッヒの身体を掴み、地上に放り投げた。

「マティアスさん、ありがとう!」

 エーリッヒは受け身を取れず転倒したが、マティアスに向かって大きな声でお礼を言った。
 すると、巨大ワニはマティアスに向かって大きく口を開けながら襲い掛かって来る。
 巨大ワニがマティアスに噛み付こうとしたその時、マティアスは素手で巨大ワニの口を受け止めた。
 マティアスは巨大ワニの口を両手で受け止めながら、巨大ワニに数発の蹴りを食らわせる。
 巨大ワニが悲鳴を上げ、噛む力を弱めた隙に、マティアスは巨大ワニの上下のアゴを両手で押さえつける。
 そしてマティアスは巨大ワニのアゴを持ったままジャイアントスイングをかまし、巨大ワニを遠くの湖に投げ飛ばした。
 マティアスが地上に上がると、エーリッヒが彼の元へ駆け寄って抱き着く。

「マティアスさん、無事で良かったよ! あんな大きなワニにも勝てるなんて、やっぱりマティアスさんは凄いね!」
「ありがとな。私もエーリッヒが無事で良かったよ」

 マティアスは照れながら返事をし、エーリッヒを抱きしめた。
 エーリッヒが無事だったことも嬉しいが、何よりもエーリッヒの可愛らしい姿が大好きでつい抱きしめたくなるマティアスであった。
 その時、ハンニバル、ナイト、そしてクマのポーがマティアスとエーリッヒの元へ駆け寄ってきた。

「エーリッヒは無事のようだな。ナイトも特に怪我は無かったぜ。そこにいるクマがナイトを受け止めてくれたおかげでな!」
「ポーがオレを助けてくれたんだ。ポー、ありがとう!」

 ナイトがポーにお礼を言うと、一同もポーに頭を下げる。ポーも「どういたしまして」と言っているかのような素振りを見せてくれた。
 その後、ポーがプラカードに文字を書き始め、それを一同に見せた。そこには「休憩室を案内するから、しばらくそこで休んでいきなよ」と書いてある。

「全員怪我は無かったとはいえ、私とエーリッヒは服が濡れてしまったからな。少し休ませてもらおうか」
「僕はあのワニを思い出すと今も怖くて……。だから僕もちょっと休みたいな」
「そうか。お前らがそう言うなら、お言葉に甘えて休憩しようぜ」
「じゃあオレも休憩するー」

 一同はポーの案内で休憩室へ向かって行くのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)

三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。 佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。 幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。 ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。 又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。 海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。 一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。 事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。 果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。 シロの鼻が真実を追い詰める! 別サイトで発表した作品のR15版です。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...