転生遺族の循環論法

はたたがみ

文字の大きさ
9 / 167
第1章 民間伝承研究部編

転生遺族と生徒会4

しおりを挟む
 微に呼び出されたていりと生徒会たちは、現在傾子の病室にいた。

「お久しぶりです、傾子さん」
「久しぶりね、対ちゃん。弦君と記君も元気?」
「はい」
「お陰様で」
「初めまして、積元先輩の後輩の三角ていりです。先輩には部活でお世話になっています」
「あら、よろしくね。微にこんな可愛い後輩ちゃんができるなんて嬉しいわ。」
「、、、、、!あ、ありがとうございます」
「で、何でお前もここにいるんだよ」

 対が睨みつけた先には、縦軸がいた。

「あら、縦軸君は最近よくお見舞いに来てくれてるのよ。記君に教えてもらったって」
「は⁉︎ちょっと記、聞いてないわよ?」

 今度は記の方を驚いた様子で向く対。

「まあお見舞いに行くだけだから大したことはないと思ったので。話さなくてもいいかなと」

 少し困惑しながら答える記。



 話は1週間前に遡る。微が先に帰ってしまったため、縦軸は校門で生徒会メンバーを待ち構えていた。そこに出くわしたのが記であった。

「左位先輩でしたよね?ちょっとお訊きしたい事があるんですが」
「おや、君は確か1年の虚君だったね。どうしたんですか?」
「積元先輩のことです」

 その一言で記は縦軸の考えを察した。

「やはり、気になりますか」
「はい。教えてください、積元先輩に何があったんですか?生徒会の皆さんと積元先輩はどんな関係なんですか?」
「……分かりました。話しましょう」

 そして、記は縦軸に、微と彼女の母傾子の話を聞かせた。対がていりに話した内容と同じだ。

「……分かりました。ありがとうございます」



 その後、縦軸はその足で鳩乃杜病院へ向かった。傾子の病室は記に教えてもらっていた。

「失礼します」
「あら、こんにちは。えっと……どちら様かしら?もしかして、微の知り合い?」

 そこにいたのは、元気こそ無いものの微と雰囲気のよく似た女性だった。

「初めまして、微さんの後輩の虚縦軸です。先輩にはいつも部活でお世話になってます」
「まあ後輩くんだったの。微、学校だとどんな感じ?あの子いっつも異世界の話ばっかりだから」
「あはは、学校でもそんな感じですよ。僕以外にもう1人1年で入部した人がいるんですけど、彼女の話を熱心に聞いてますよ」

 その発言を聞いて、傾子は少し驚いた様子だった。

「それって、微の話を信じてくれてるの?」
「もちろんです。僕も信じてますよ」

 平然と言ってのけた縦軸。その発言に、傾子は目を見開いた。

「……あの子があんなことを言い出して以来、信じてくれる人は誰もいなかったわ。でも私には分かったの、あの子は本当のことを言ってるって。そう、親子揃って狂ってた訳じゃなかったのね」

 そう言う傾子の目は、少し潤んでいた。


 それから1週間、縦軸は傾子のもとへ通い、微のことを話していた。たまに縦軸自身のことも尋ねてきたのでその話もした。



「……まさか傾子さんと仲良くなってるとはな。まあいい、微、結局何の用だ?」

 微は悪戯でも考えてるかのような顔で言う。

「見てて。スキル〈天文台〉!」


 微の発言とともに、縦軸たちの視界が一瞬で切り替わる。微のスキルはこの1週間でLvを上げ、自分以外にもその景色を見せられるようになったのだ。

 そこに広がっていたのは、中世ヨーロッパのような街並みのどこかだった。VRのそれとはリアリティが桁違いだ。

「な、何だこれ⁉︎」
「ここは一体?僕たちは確かに病院に」
「対、弦、落ち着いてください」
「まあまあ見てなさい3人とも。ほいっ!」

 すると、また景色が移り変わる。今度はどこかの森の中だった。
「こ、今度はどこだよ……て、あれ!」

 対が指す先では、水色のブヨブヨとした物が数名の人間と対峙していた。それは間違いなく動いていた。

「虚君、あれって」
「スライムだろうね」

 その時、対峙していた人間の1人が手に持っていた杖を掲げる。杖は光り輝き、どこからともなく現れた炎の球がスライムに降り注いだ。そして、スライムは消え去っていた。

「な、何だあれは?」
「まじかよ。まるで微の言ってた……」
「魔法だよ」

 微が説明する。

「最後はこれ!」

 再び景色が移り変わる。縦軸たちは空に浮かんでいた。

「うおおおっ!何だこれ⁉︎微、何なんだこれ⁉︎」

 慌てふためく対。するとそこに、巨大な影が迫る。それは巨大なトカゲのようだが、その背中には巨大な翼が生えていた。

「おっ、ドラゴンだ!ラッキー!」

 対たちが怯える中、ドラゴンは縦軸たちにぶつかったかと思うと、すり抜けて飛び去っていった。

「私ね、お母さんと対たちに、ずっとこの景色を見せたかったんだ。ゲームの中で見たみたいな世界、こんなのが、いーっぱい広がってるんだよ!」

 微はこれまで以上に楽しそうだった。

「じゃあ今日はこれでお終い!」


 縦軸たちは再び病室にいた。厳密に言えば、ずっとそこにいたのだが、微のスキルにより異世界の景色を見ていたのだ。

「お母さん、どうだった?」
「んふふ、微の言った通りの世界だったわね。あんなのが見れるなんて羨ましいわ」
「いひひ、いいでしょ。ねえねえねえねえ、対たちはどうだった?」

 呆然としていた生徒会の3人の中で、対が最初に口を開いた。

「微は、本当に見てたんだな。こんなすげーのを、あの頃から」
「うん」
「なあ微、虫のいい話だとは思うけど、許してほしい。今まで微の話を信じなくてごめんなさい!」
「僕もすまなかった!」
「すみませんでした」

 頭を下げる生徒会。そんな彼らに対し、微は当たり前のことを言うように言った。

「もちろん!だって対たちは私の友達だもん!」



 微が生徒会の3人と仲直りしてから数日後、傾子は家族に見守られながら旅立った。その顔はとても安らかだったらしい。

「さようなら傾子さん。よい来世を」

 病院の前には、そう呟く縦軸の姿があった。



 傾子の葬儀から数日後、民間伝承研究部(民研と呼ぶことにしたらしい)は廃部を免れていた。弦たちも流石にを見せられた後に廃部にするなんて到底できなかった。

 その民研の部室では、

「よっしゃ!後輩諸君、準備はいいかね?」
「オーケーです」
「いつでもいいですよ、先輩」
「ふふっじゃあいくよ、〈天文台〉!」

 彼らにとって当たり前の日常が流れていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

疎遠だった叔父の遺産が500億円分のビットコインだった件。使い道がないので、隣の部屋の塩対応な美少女に赤スパ投げまくってる件

月下花音
恋愛
貧乏大学生の成瀬翔は、疎遠だった叔父から500億円相当のビットコインが入ったUSBメモリを相続する。使い道に困った彼が目をつけたのは、ボロアパートの薄い壁の向こうから聞こえる「声」だった。隣人は、大学で「氷の令嬢」と呼ばれる塩対応な美少女・如月玲奈。しかしその正体は、同接15人の極貧底辺VTuber「ルナ・ナイトメア」だったのだ! 『今月ももやし生活だよぉ……ひもじい……』 壁越しに聞こえる悲痛な叫び。翔は決意する。この500億で、彼女を最強の配信者に育て上げようと。謎の大富豪アカウント『Apollo(アポロ)』として、5万円の赤スパを投げ、高級機材を即配し、彼女の生活を神の視点で「最適化」していく。しかし彼はまだ知らなかった。「金で買えるのは生活水準だけで、孤独は埋められない」ということに。500億を持った「見えない神様」が、神の座を捨てて、地上の女の子の手を握るまでの救済ラブコメディ。

処理中です...