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第三章

【母親二人 03】

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「さっきはごめんなさいね。いい大人がみっともなく言い合いしちゃって」
「いえ……あ、リリーちゃん、寝ちゃいました?」
「そうみたい」
 恋唯と若子はベッドに座り、アリッサはその間に椅子を置いて腰掛けていた。
 リリーは数日ぶりに再会した母親と離れたくないのかずっとしがみついており、どうやらそのまま眠ってしまったらしい。
「カミルくん、呼んでもらってもいいかしら」
「あっ、はいっ」
 若子が廊下に出てカミルを呼ぶと、優しい兄はすぐに妹を迎えに来た。
 母親の代わりに妹を抱っこをして、リリーを部屋へと連れて行く。
「あの、先ほどのロッゲンさんのお母さんとは、昔からのお知り合いなのでしょうか」
「ええ、イルザとは女学校が同じなの。お二人は、この国の教育制度はもう把握しているかしら?」
「共同学校っていうのがあるんですよね?」
「女学校とは別なのですか?」
 若子と恋唯が続けて尋ねると、アリッサは丁寧に答えてくれる。
「共同学校は六歳から十歳まで、男女が一緒に学ぶ学校ね。カミルくんはもうすぐ卒業で、入れ替わるようにリリーが入学することになるわ。共同学校を卒業したら将来就きたい職業に応じて進学先を選ぶことになるけど……一般的な家庭の子どもは、学ぶのは共同学校までで、それ以降は親の家業を継いで生きることが大半なの」
 若子はへえ~と口を開けて聞いていたが、恋唯は真剣な表情でアリッサの説明を聞いている。
「私の場合は親が料理人をしていてね。王家にお仕えしていたこともあるのよ。そこで薬草を使った体にいい料理をお出しすることがあると聞いて、薬草の効能に興味を持つようになったの。それで植物学を学べる女学校に進ませてもらったわ。イルザとはそこで出会ったの」
「イルザさんは女学校で何を学ばれていたのですか?」
「イルザは……というか、女学校に通う生徒って、二通りに分かれていたのよね。花嫁修業の一環として親に入れられた子と、明確に学びたい学問がある子。イルザは前者で、私は後者。学校側もそれを知っていて、生徒の意欲や目標に応じて指導の仕方を変えていたみたいだし。ああ、そうだ。神官様ともそこで出会ったのよ。私の後輩だったの。今も仲良くしていて、貴方たちのことを知っていたのもゲマフトで会う度に、城の様子を聞いているからなの」
「あの双子の神官さん、やはり女性だったのですね」
「片方はね。エダ教の神官になると、性別を無闇に明かさないようになるから」
「そういうしきたりみたいなの? が、あるんですね?」
 神官の姿をまともに覚えていない若子が、呑気に驚いている。
 恋唯はリリーと初めて外に出た際に、気になった異形の像のことをアリッサに尋ねた。
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