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『♡ Kyoko Love ♡』28-2

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28-2.

 
 それでね・・・と、やさしい風を受けながら私たちは
海に視線を向けてゆる~い話をしていた

 ・・ら。

 後ろから、一組の親子に声を掛けられた。

 リードを付けた子猫を娘さんが抱いていて、その猫は
物珍しげに、キョロキョロしている。

 母親らしき人が交互に私と彼を見ながら話し出した。

 「実はオープンスペースに置いておくという約束で猫を
乗船させてもらったのですが娘がお腹が空いて我慢できない
ってなりまして食事をさせたいのですがその間、猫を預かって
いてはいただけないでしょうか?  」

 娘さんをひとりにしておくには、年齢的に心配なのだろうと
思う。娘は8~9才くらいに見える。

 私は即答できなくてなんとなく垣本さんの顔を見た。
 彼は何も口を挟まず、ただ私の顔を見つめるだけだった。
 
 「お預かりするのはどれくらいの時間なのでしょう? 」

 「30~40分くらい ? でしょうか」

 私は目で垣本さんにいい? と合図を送った。
 彼も私に視線でいいんじゃない? って返してきた。
 たぶん。

 「いいですよ、私が抱っこしても暴れなければ」

 私がそう言うや否や、娘さんが私に子猫を大事そうに
手渡してきた。

 子猫はきょとんとしているだけで、すっぽり私の腕の中に
納まり、私のことを見上げたり周りをキョロキョロする
だけで大人しい子だった。

 「いい子ですね。大丈夫そうですよ」

 「ありがとうございます、なるべく早く戻ってきます」
と言い置き、親子は速足で船内に入って行った。


 
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