異世界八険伝

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激動のロンダルシア大陸

48.ありがとう。

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「あたしが1番に決まりました!!」
「うん!レンちゃん、よろしくね!」



 ボク達は11時にブランチを食べながらある話題について話していた。それは、ティルス観光。

 最初、臨時市長になったボクが皆を案内するはずだったんだけど、徐々に流れがおかしくなり、結局、ボクが1人2時間ずつデートをする羽目になってしまっていた……。

 想像を絶する順番争いは1時間にも及んだ。
 内容は苦笑いするしかないレベル。
『1.リンネちゃんへの愛を語ろう』
『2.リンネちゃんの秘密を自慢大会』
『3.リンネちゃんの匂い嗅ぎ分け大会』……

 審判役のボク自身が途中で試合を放棄した。

 だって……1回戦目は、お互いに赤面状態だったけど、まぁ許容しよう。2回戦目は、徐々に明らかにされていくリンネの謎……ぎりぎり耐えきった。自分で自分を褒めたい。しかし、3回戦目は、ダメでしょ。アウト!審判自身がT.K.O.を自分に宣告した。

 挙げ句、平等にじゃんけんで決まった結果が、こうだ。何というハードスケジュール!
 午前12時~レンちゃん
 午後2時~メルちゃん
 午後4時~アユナちゃん
 午後6時~アイちゃん



 ★☆★



 で、ボクとレンちゃんは村人A&Cの服装に着替えて地味化した。これなら目立たないはず!

「レンちゃん、どこ行こうか?」

「勿論、デートと言えば……ショッピング!!」

 出たよ、1番にめんどくさいパターンが。
 ということで、ボク達は絶賛ショッピング中だ。


『あ、レンちゃん~!!』
 見知らぬお姉さんが手を振っている。レンちゃんも笑顔で振り返している。

『レンちゃんだ!お~い!!』
 今度は変なおじさんだ。レンちゃんは笑顔で手を振り返している。

『レンちゃん見っけ!お出掛け中?』
「うん!デート!また今度あそぼうね!」
 今度は小さな子とも達にばいばいしてる。

『レンちゃんこんにちは!食べていきなよ!』
 おばちゃんから串焼きを貰った。ボクも“ついで”に。


「レンちゃん……凄い人気だね!?」
「えっ?そう?あ、あの店に行きたい!」
 赤髪美少女は目立つからね、まさにアイドル属性持ちですね。普段は人見知りだって言ってる割に、誰とでも話せるじゃないの。

『レンちゃん、いらっしゃい!あれ?その子は?』

「スゥさん、何言ってるのよ!勇者リンネ市長だよ?昨日から女神市長って呼ばれてたっけ?」

『え~っ!女神市長様!?』

「えっと……スゥさん?何故に忠誠ポーズを……」

『お会いできて光栄です!!サイン下さい、店に飾ります!家宝にします!!あっ、恐れ多いと思いますが、触らせて下さい!!!』

「あっ……」

 拒否する前に抱き付かれて身体中揉まれた……なす統べなくとは、このことを言うのか。
 レンちゃん、ゲラゲラ笑わない。

 あっ……スゥさん、気絶してますが……。

「あぁ~っ!リンネちゃんが暴力振るった!」

「いや、突っ立ってただけだよね!?」

「リンネちゃんの可愛らしさ、存在自体が暴力なんだよ!自覚しなきゃ!!」

 何それ……隅っこでモジモジ生きろってこと?


 スゥさんを放っておけず、介抱しながら店番をした。レンちゃんの活躍で、行列の出来るお店に早変わり。って、ここは何の店?えっ!ランジェリーショップかい!!

『本当にすみませんでした!女神市長様、こちらにサインを……』

 すみませんと言いながらもサイン要求するのね、あなたの素晴らしい胆力に免じて家宝を与えよう。

『ところで女神市長様!この下着なんてお似合いですよ!これも!あ、こっちも!』

「あ、スゥさん!私はコレのピンクと水色を下さいね!あと、こっちの赤と黒も!」

『なぁに?レンちゃん、勝負下着ぃ?』

「そうよ!今日は特別なんだから!」

『頑張ってね!毎度ありっ!!』

 この人達、凄いわ。スゥさんの商魂の逞しさ。きっちりお金を取ってるし。レンちゃんもボクに払わせるし。まぁ、財布を握ってるのがボクだから仕方ないけどね、遠慮しないのが凄い。


「リンネちゃん、次はあそこね!」

 レンちゃんが指差す先には少しお高そうな洋服屋さんが。いわゆる、ブティック?

 今回の戦争で得た魔結晶等の売却益は、兵士へのボーナス以外、全て市の財源に回されている。とは言え、今のボク達は家を1軒買えるくらいのお金がある……服の10着や20着、痛くも痒くもない!でも、奴隷購入に使うんだけどね。

『いらっしゃ~い~。あら、レンちゃんじゃないの!昨日振りね!』

「お兄さん、昨日振り!」

 昨日振りって……昨日はめちゃ忙しかったよね!
 てか、カマっぽいの出てきたよ……さっきみたいに抱き付かれたら、今度はこっちが気絶するよ?やられる前に倒しちゃう!?

『ややっ!!そちらの方は女神様では!!』

「人違いで~す」

『あたしの目は誤魔化せないわよ?あたしにコーディネートさせてくださらないかしら!!』

 レンちゃん……助けて……!

 その後、身体中隅々まで測定されたボクは、気付けば白くて綺麗なドレスを着せられていた……。

「これは……いつ、どこで着るのかな?」

『やっだぁ~!これは普段着よっ!』

 何故か背中をポンっと叩かれた。別にボケた訳じゃないのに。あ、これセクハラですよね。

「普段は魔物と戦っていますが……」

『魔物?余裕でテイムできちゃうかしら!』

 ダメだこの人。違う方向を向いてる人だ。

「お兄さん!あたしはこっちの黒いドレスね!」

『まぁ、お似合いよ!レンちゃんセンスあるわね!』

 結局、可愛いけど……いつ、どこで着るのか分からないドレスを買わされた。


 そんな感じで4店舗をハシゴして時間になった。移動中はたくさんの人がレンちゃんに絡んできたね。
 それに対してボクは地味なイモラー。
 レンちゃんが太陽なら、そう、ボクは月。

 けど、異世界初の本格的なショッピングはとても楽しかったよ!装備を買うのも楽しいけど、私服もいいね!

 お財布を軽くしてくれた楽しいデートをありがとう。



 ★☆★



 午後2時、今度はメルちゃんとのデート。やはり服装は村人A&Bだ。あまり効果はないけど。

 メルちゃんとはティルスを一緒に歩き回っていたから、今さらデートと言うのも変な感じ。念の為、どこに行きたいのか聞いてみたら意外な答えが。
 まぁ、メルちゃんらしいと言えばらしいかな。本当に優しい良い子だよ。


 ボク達は今、転移して例の村に来ている。村の名前を聞いていなかったから改めて村長さんに聞いたら、昨日からここは『勇者村』なんだって。聞いて損したよ。

 ボクがスノーとスカイを召還したら、村人達が集まってきた。あれ?勇者ってもしかしたら……この2匹なんだね!何か、絡まっていた糸がほどけたような気分になった!
 おや?2匹ともレベルが25になってる!そうか、召還者に合わせてレベルが上がるんだね。それは頼もしい!

 メルちゃんが『勇者村』に来たがったのは、ドラゴンの顔見せが理由ではない。なんと、村の復興作業を手伝いたいんだって!なんて良い子なんだよ!抱き締めてあげた。柔らかい!
 まぁ、村の半壊については、実はボクのサンダーレインが原因なんだけどね!真実を知っているのはボク達だけという……すみませんでした!今更ながら心の中で謝った。

 瓦礫の除去は意外と大変だった。
 大切な家具や衣類が丸焦げになっているのを見ると、罪悪感で胸が苦しくなった。でも、メルちゃんが村人達に真実を告げて謝ってくれた。メルちゃんの逃げない強さには頭が下がる。村人達も、命が助かっただけでもありがたいと言って、ボクを責めることはなかった。
 瓦礫やゴミはボクがアイテムボックスを使って片付けた。レベル25になったから、縦横5m四方のサイズだ。少しは役に立ったかな。

 建築資材は、近くの山や森に転移して、石材や木材を集め、アイテムボックスに入れた。
 メルちゃんが汗を流して頑張ってくれた。本当にごめんね。

 家の建て替えとか、本当に大変だった。
 地魔法があればサクサクできたんだろうけど、ボクは壊す方が専門だし、メルちゃんは闇魔法だし。そう言えば、まだメルちゃんの闇魔法を見たことないや。魔族にはあんまり役に立たないよね……どんまい。
 地面を整地して柱を立てて、石材を組んでいく。隙間は後で埋めるらしい。メルちゃんが力持ちで良かった。1時間半で1軒しか出来なかったけど、大量の石材と木材を置いてきたから、後は頑張ってね!あれ……ボクは何だか魔力が……。

 正直、こんなに疲れるデートは初めてです。というか、これはデート?罰ゲームでは!?
 それでも、メルちゃんと励まし合いながら重い物を持ったり運んだりして働いたことは、凄く楽しくて充実していました。皆が喜んでくれたから遣り甲斐があったし!

 汗と乳酸が沸く素晴らしいデートをありがとう。



 ★☆★



 午後4時になりました。少し疲れが出てきたところでアユナちゃんのターンがきたか。

 とりあえず、アユナちゃんの羽は目立ち過ぎるから小型化してもらった。胸は無いけど身長はボクと同じくらいだからということで、ボクの予備の村人Aファッションだ。アユナちゃんはペアルックに興奮気味……この子は安上がりで良いね!

 アユナちゃんは海に行きたいと言い出した。ここ、超内陸都市なんですけど!仕方ないからプールを探して歩く……お?広場の噴水の所で泳いでる人がいるではないか!

 ちょっと待て。水着が無いんですが?
 大迷宮みたいにシャツ1枚にパンツで泳いだら
 大迷惑になっちゃうからね?

 結局、近くの服屋さんでテキトーに買うことにした。アユナちゃんてば、普通に買うとつまらないからお互いの水着を選びっこしようと言い始めた。何だか可愛いね!

 まずは色から入ろう!
 さて、金髪ショートでエルフな天使っ娘には何色が似合うかな?白だと肌が白いから真っ裸みたいで可哀想だな。赤はイメージ違う。青は……微妙かな。ここは紺のスク水で1発逆転を狙う?いやいや、濃い色より薄い色が合いそうだね!水色だとカメレオンみたいに保護色化して、溺れたときに気付かないかも?エルフらしい黄緑も良いけど、花柄のピンクが1番似合いそうだ。ピンクにしよう!
 型については、ビキニは無理でしょ。ずり落ちるという物理的な理由と、見ていて同情してしまうという心理的な理由から、上下くっついた水着の1択だった。で、無難にスカートタイプが良いよね!
 結局、ピンクで小さな花柄がたくさんついてるスカート型にした。似合いそう!喜んでくれると嬉しいな!

 アユナちゃんの水着選びに集中し過ぎて、まさかアユナちゃんが鼻血を出して暴走しているとは思いもよらなかった。予見できたはずなのにしなかったのは、まさに自分の落ち度です……。
 ボクの水着は、紫色のビキニタイプになった。確かに銀髪に青系統は合うと思うよ?逆にピンクのぶりぶりよりは着やすいかもしれない。けど、けどね?これは目立ち過ぎ、せくしぃ過ぎるから!もぅ買っちゃったし、1回しか着ないだろうし、何よりアユナちゃんが血まで流して選んでくれたんだから、着るよ!
 無心になれ、無心になれ、無心になれ。

 お店で着替えた後、かなり恥ずかしいけど、水着のまま噴水まで歩いた。アユナちゃん、めちゃ似合ってる!可愛い!本人も喜んでくれて、見せびらかしたいみたい。でも、町行く人々の視線が痛い。
「天使だ!」という声が聞こえる。確かに羽は小型化してるけど、アユナちゃんはまさに天使。正しい判断だね。ただ、だんだんと「天使“たち”がいる!」に変わってきたんだよね、嬉しいより恥ずかしい。

 噴水で泳いだり水遊びをするボクとアユナちゃんの周りには100人を超える人だかりが出来ている。
 アユナちゃんの目にはボクしか映っていないみたいで全く気にするそぶりを見せない。
 まぁ、気にしたら楽しめないからね!戦勝祝いだ、くれてやろう。受け取れ!的な余裕を見せましたよ。けどね、めちゃくちゃ楽しかった!!いつかまた泳ごうね!
 時間がきたので、ボク達はギルドの部屋に逃げるように転移した。

 羞恥心一杯のデートをありがとう。



 ★☆★



 午後6時、最後のデートはアイちゃんとだ。
「お待たせ!よろしくね!」

 ボクは村人Aファッション、アイちゃんは最初に着ていた白いワンピース姿だ。夕闇に白いワンピースと黒髪ロングは……幽霊みたい。とりあえず明るい場所に行きたいね!

「アイちゃん、何処に行きたい?」

「そうですねー、折角だから甘いデザートでも食べに行きませんか?」

「デザートかぁ!いいね!」

 ん?市長なのに美味しいデザートが食べられるお店が分かんない、案内できないとか……。

「ふふっ!また、心の声がだだ漏れですよ!
 リンネさんが忙しくしていてお店巡り出来なかったことくらい分かりますよ。わたしが調べておきましたから、そこに案内します」

「ごめんねー!ティルスを案内しなきゃいけないのに、逆になっちゃったね!」


 ボク達はギルドから徒歩で10分くらい歩いた。
 途中、意外なことにアイちゃんに挨拶しに来る人が多いこと!レンちゃん並にアイドルしてるじゃないですか。やっぱり、軍師としてかなり目立ったからかな!
 それに比べてボクはお月様。いや、お月様を地味な存在として挙げたら失礼だね!レディース暴走族に月に代わってお仕置きされちゃう。

 商店街の一角にあるお洒落なお店に辿り着いた。レンちゃんもだけど、皆よく店を知ってるよね。

「着きましたね、さぁ入りましょう!」

「うん、綺麗なお店だね~!」

 ボクはお洒落なドアを開けて中に入った。










「リンネ様!」「リンネちゃん!」「女神様!」「市長!」「リンネ様!」「リンネ様!!」「女神市長様!」「御主人様!」「リンネ様!」「勇者リンネ!」「リンネちゃん!」「リンネ様!」「勇者様!!」「市長~っ!」「勇者!」「リンネちゃん!!」「女神市長!」「勇者リンネ様!!」「リンネ様?」



「えっ?あれっ?みんな……デザート??」


 みんなが居た。
 メルちゃん達も。元奴隷のマールさん達も。ギルド支部長のスルトさん、大臣の方々も。長老会のおじいちゃん達もいるよ。ガジルさんもいる。
 って、ホーク《ウィズ》、お前もか!

 偶然皆がデザート食べたくなった!?そんな訳ないよね!アイちゃんが呼んだんだ。ボクの為に……ボクの為にサプライズパーティをしてくれたんだ!何か、凄く嬉しいな。嬉しすぎて涙が止まらないや。


「泣かないで!」「笑って!」「泣いちゃダメだよ!」「笑顔見せて!」「泣き顔も可愛いね!」「泣くな!!」「笑って下さい!」「一緒に笑おう!」「泣かないで下さい!!」「リンネ様の笑顔が見たい!」「女神の微笑みを!」「今は笑え!」



「無理!……嬉しすぎて……涙が止まらない……」


 何だろう。まだデザートも食べてないのに、皆の顔を見ただけなのに、安心して、皆が無事でいることが嬉しくて、嬉しすぎて、言葉にならないや。


「アイちゃん!皆さん!ありがとう……」

「こちらこそ、ティルスを救ってくれた若き英雄に感謝を言いたくて集まったんだ。
 せ~の、
「「「「「「ありがとう!!」」」」」」」



『まだデザート食べてないよ!早く食べよう!』

「アユナちゃんの、食いしん坊!!」



 皆が笑った。アユナちゃん、ありがと!

 デザートは凄く美味しかった!夕食の代わりにデザートを食べまくった!ボクの世界で言うところの、ゼリーやパフェ。オレンジやマンゴーやパイン、グレープにストロベリー……一通りのフルーツは揃っていた。


 その後、夜が明けるまで皆でたくさん語りあった。これまでのティルスのこと、これからのティルスのこと、ボク達が今まで何をしてきたのか、これからどうするのか、魔族侵攻戦のマル秘話、皆が戦ってるときにまたボクが寝てたこと、ボク達の好きなタイプ、奴隷制度のこと、アルン王国のこと、ボク達が住んでいた世界のこと……皆、興味津々で聴いてくれた。仲間として、友として、喜怒哀楽を共有できた。


 魔人を倒した後のことは、実はあまり考える余裕がなかった。ウィズからは以前にアルン王国制圧を企てる、序列第4位の魔人グスカ討伐を依頼されていたけど、他にもすべきことがたくさん見えてきたから。


 ・王都で国王に謁見し協力を依頼
 ・フリージア王国の他の町での奴隷解放
 ・レオン王子と協力してミルフェちゃん捜索
 ・アルン王国にある残り3つの召喚石捜索
 ・アルン王国の町を巡り奴隷解放
 ・南の新興国へ行き戦争阻止
 ・グレートデスモス地境の調査……


 アイちゃんはウィズのことを信用出来ないと言い続けている。ウィズの目的は人間に敵対する魔人を滅ぼすことだ。ウィズの言う通り、アルンに渡って魔人グスカを討伐するのが最良と言えるのだろうか。

 本当は、今の戦力で勝てるのか不安だ。仲間を集めたり、協力を依頼することを優先すべきではないか。

 今のボクは、以前フィーネでミルフェちゃんと別れたときのような1人じゃない。信頼出来る仲間がいる、友がいる。1人で悩んでも解決出来ないときは、皆に相談すればいい。


「これからのことなんだけど……」

「リンネ様にはこれからもティルス市長をお願いしたい!と言いたいところだが、ティルスは我々で何とかしよう。心置きなく先に進んでくれ」

 ガジルさん……やる気出たみたいね!

「はい、やり残したことばかりで申し訳ないですが、ティルスのこと、お任せします!」

「私達……リンネ隊の元奴隷は、リンネ様についていきたいっていうのが総意です。ティルスに居ても辛い思い出ばかりで」

 マールさん……そんな風に考えていたんだ……。

「マールさん、辛かったとしてもご両親との生活は愛に溢れていた筈ですよ!本当は、マールさんに市長をしてもらいたかったんだけどね!」

「リンネ様……何を仰って……」

「市長はね、数日間だけどボクにも出来たんだし。立派な人である必要はないと思う。マールさんみたいな優しさがあって、信頼できる仲間がいれば……」

「嫌です!私はリンネ様と一緒に行きたい!そして、一緒に生きたい!我が儘ですが、どうか……お願いします……」

 えっ……どうしよう?アイちゃんをチラ見する。あ、目を反らした!メルちゃん……目を反らしてる!

「危険な旅です。命を守りきれるか……」

「リンネ様の前では、死んでも構わない何て言ったら怒られますね!勿論、足手まといは承知しています。でも、私は宿屋の娘として経理は得意ですし、元奴隷の仲間達だって強い方もいますし、絶対にお役に立ちます!」

 ドワーフのお兄さんやエルフのお姉さん達が頻(しき)りに頷いている。アユナちゃんも何が言いたいのか分からないけど、羽をぱたぱたさせている。

「分かりました!希望者はボク達と一緒に行きましょう!旅は辛いですよ、覚悟して下さいね!」

 マールさん始め元奴隷の仲間達は皆、泣き崩れてしまった。まさか連れて行ってもらえるとは考えていなかったみたいだ。泣きながら、忠誠ポーズを始めた……要らない!誰が流行らせてるんだぁ?メルちゃん!?

「皆さん、元奴隷という呼び方はそろそろ止めましょうか。今、この瞬間から皆さんは新しい人生を始めて下さい。後で構いませんので自己紹介をお願いしますね!それから、皆さんは今日からエンジェルウイングのメンバーです」

 アリス団長、勝手にメンバー増やしちゃいました、すみません!
 と言うかネーミングの基本は目の前にある物から。今はアユナちゃんの羽しか浮かばなかったんだ。天使の羽《エンジェルウイング》はアユナちゃん由来のオリジナルだから、パクりジャナイヨ?

「エンジェルウイング……天使の羽……分かりました!私達15名は勇者リンネ様の羽として頑張ります!」

 あれ?ボクは天使じゃないよ……またアユナちゃんが羽をぱたぱたさせてる……まぁ、いっか。



「リンネさん。これからの方針ですが……王都に向かいましょう」

 軍師様《アイちゃん》が考えて下さった!この子についていけば間違いない!楽でいいね!

「わたし達は王都に行き、王都に拠点を設けると共に王国を動かすんです」


 アイちゃんの説明によると、

 王都にエンジェルウイングの拠点を造り(家を買うらしい)、そこから奴隷解放の活動等をしていくらしい。当面は王都と北のランディールの解放を目指していくことになる。

 また、現在フリージア王国が魔族に押されている原因は王国内の政争にあるとのこと。
 国王&第2王子派《ヴェルサイド》vs第1王子&第1王女派《アレクサイド》に2分して、それぞれ各国との同盟を優先するか、魔族討伐を優先するかの議論を発端に、他国や魔人が介入した血生臭い様相を呈しているらしい。

 ボク達の次の目的は、フリージア王国の政争解決ですか。やだよ、政争とか。三凰で懲りたし。そもそも人間同士の争いにボク達は関係ないでしょ!でも、アイちゃんが言うんだから本当に必要なんだろうね……。


「今日はしっかり準備して、明日の早朝に王都に向けて出発します。王都へは3日で到着するでしょう」

「「「『「はい!|軍師様!」』」」」


 ボク達の朝食は、またデザートでした。
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