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求められし力
62.緑の召喚【挿絵】
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結界の中に居た竜人は、ボクをじっと見つめている。以前に会ったグランさんではない、女性の竜人だ。 雰囲気的に戦う必要は無さそうだ。
『あなたが銀の召喚者リンネ……私は竜神様の遣い、フランと申します。おおよその話は聞いています。これで召喚石は7個目ですね?』
「はい。残り1つの場所が分かれば助かるのですが、知りませんか?」
『1000年前にエルフに授けられたそうです。現在どこにあるのかまでは……』
もしかしたら、大森林に行けば手に入る?
アディさんは確か、西のエルフの村の出身だったはず。大森林に無ければ聞いてみるか……。
「ありがとうございます。召喚石を全て集め、何とか魔王の完全復活を阻止してみせます!」
『銀の召喚者リンネ……召喚石の本来の使い途を知っていますか?』
「はい、異世界から8人の勇者を召喚するんですよね?」
『いいえ。正確には勇者ではなく、8人の召喚者を召喚するのです』
「あれ?“召喚者”ですか?確かにステータスにもそう書いてありましたけど……」
じゃあ、職業欄の勇者って何よ?
異世界から召喚されたら全員が勇者って訳じゃないの?よく分かんない。
『召喚者8人が揃い、召喚の儀式をなすとき、天より神が舞い降りる。召喚石は魔王を滅する神を召喚する為の神石なのです』
「神様を!?なるほど……」
良かった!魔王は神様に任せれば大丈夫だ!
ボクの使命は残り1つの召喚石を探して無事に召喚の儀式を行うこと……ウィズだけ気を付ければ楽勝だよね!
『しかし!』
「はい?」
『召喚されるべき秩序神様が力を失われた今、召喚の儀式は意味をなしません』
「えっ!もしかして、リーン……様……を召喚する儀式だったのですか?天神様とかでも構いませんが?」
『天神様は動けません。天神様と魔神様の力は拮抗しています。天神様が動けば、魔神様が天神様を滅ぼして天界・魔界・地上界の全世界は全て魔に染まるでしょう』
「竜神様は助けてくれないのですか?」
『我らが竜神様は、創造神たる秩序神様の下僕。召喚石を守護するのが使命。その限りにおいてのみ与えられた力……魔王には勝てないでしょう』
「では……どうすれば?」
『秩序神様と共に世界をお守りください!』
「でも……」
まだ聞きたいことがたくさんあるのに……竜人フランは光と共に消えてしまった。後には緑の召喚石をその眼に宿す竜神の像が残された。
とりあえず召喚石を確保だ。
1人で考えても最善策は得られない。軍師のアイちゃんや賢いメルちゃん、あとは……クルンちゃんの占いに頼ろう。
ボクは、台座に上がり竜神の左の眼から緑に輝く召喚石を外した。すると、竜神の右目が一瞬ピカッと光った気がした。
その直後、塔を地震が襲う!
まさか、塔が崩壊する!?
ボクは、召喚石を落とさないように両手で抱え込みながら浮遊魔法を発動し、扉を抜けて皆のところに戻った。
「リンネちゃん!塔が沈みます!!」
「階段降りないで済むです?」
『怖いから!転移で外に出ようよ!』
ボクはアユナちゃんの案を採用して、皆で塔の入口まで転移した。
外から見ると、その様子は圧巻だった。
塔は勢いよく沈んでいた。地面にめり込んでいくようにも見えるが、入口の扉は消えていないので、縮小しているようだ。これも一種の空間魔法なのだろう。
やがて、塔の最上部であったところが地上まで至ると、小さな神殿のような、祠のような遺跡に変わった。中に居ても大丈夫だったみたい。
★☆★
『リンネちゃん、早く召喚しようよ!』
「私も賛成です。早急なレベル上げが必要ですからね。お願いします」
「クルンも見たいです!」
「そうだね。出来れば屋内がいいんだけど、天気もいいし、召喚ちゃうか!」
ボクは地面にぺたりと女の子座りをして、淡い輝きを放つ緑の召喚石を見つめる。皆はボクを囲うように周囲に立っている。いじめ、カツアゲの現場みたいだ。
雑念を振り払う。緑の召喚者か……緑の髪の女の子って不人気の代名詞だって聞いたことがある。でも、昔の雷ビキニの鬼っ娘に始まり、最近のツインテール歌姫とか、緑髪さん達は頑張ってるんだけどね。
さて、どうしようか。イメージ……イメージ……20階に住んでる宇宙人のアイドルは……戦力が足りないかな。あの剣と魔法のデスゲームの妖精の世界にも胸の大きなエルフのお姉さんがいたような……強いけどチーム貧乳が騒ぐからやめておくか。押し入れに住みながら魔王を見張るネコ型な子は……バッテリーが切れたら終わりか。何とか4のゲームに出てくる空から降ってきてネギを振り回すお姫様とか、蝶から変わったハチミツ大好きな虫系ヒロインも可愛いんだけど、戦力的に足りないかな。ちょっと2刀流がレンちゃんと被るけど、犬がたくさん出てくる国の、近衛隊長……垂れ耳な犬っ娘にするか!紋章的な魔法も使えるし、可愛くて強くて真面目だからいいよね!よし、決めた!
抱き締めた緑の召喚石にイメージを注ぎ込む!垂れ耳……2刀流……縞パン……おっと、雑念はダメだ。垂れ耳……2刀流……エメラルドグリーンの髪の……犬っ娘……よし、
「緑の力を持つものよ!我が召喚に応じよ!」
召喚石が煌めきを増す。
心臓の鼓動のように激しく点滅する。
周囲が森の中のように緑の光に包まれる!
やがて、ゆっくりと光は召喚石に吸い込まれて収束していく……。
光が全て消え去ったとき、そこには、ボクから緑の召喚石を受け取って佇む1人の少女がいた。きょとんとした表情、やっぱり犬っ娘は100倍可愛い!!
「えっと……僕はどうしてここに!?」
僕っ娘被りか!
それは仕方ない!
メルちゃんやアユナちゃんはボクをじっと見ている。先に何かしゃべれと?クルンちゃんは彼女の垂れ耳に注目している。獣人繋がりで親近感を持ってくれるといいな。
「ボク……リンネが、貴女を召喚しました」
「え~。任務中だったのに……って、あれ?記憶がないよ?僕は誰なの!?」
混乱しかけたところで、メルちゃんやアユナちゃんが説明をしてくれた。ボクは何回やっても苦手。勝手に召喚しちゃった罪悪感だね!
「えっと、名前はエクルちゃん。よろしく!」
「僕はエクルだ!皆さん、よろしくな!」
↑エクル(清水翔三様作)
[メルがパーティに加わった]
[アユナがパーティに加わった]
[クルンがパーティに加わった]
[エクルがパーティに加わった]
ステータスチェックだ。本人からの情報でスキルと称号も確認した。想像以上に強い!でも、近衛隊長って……。
◆名前:エクル
年齢:14歳 性別:女性 レベル:1 職業:近衛隊長
◆ステータス
攻撃:3.60(+2.40 +2.40)
魔力:7.10
体力:3.25
防御:3.05
敏捷:8.65
器用:2.80
才能:2.00
◆先天スキル:闘気術、食物超吸収、魔力授受
◆後天スキル:
◆称号:緑の召喚者
[闘気術:武器や身体にオーラを纏わせることにより、一時的に攻撃と敏捷を魔力値分だけ上昇させる。維持時間は総魔力量に依存する]
[魔力授受:手を繋いだ相手に魔力を送ったり、逆に吸収することができる]
★☆★
『森だぁ!わくわくするね!』
「クルンも森は好きです!」
「僕もだ!走りたくなる!」
リーンや竜人フランからの情報を皆に伝えたら、なるべく早く大森林に行くべきという話になった。メルちゃん以外は遊び感覚みたい。
塔と大森林はそれほど離れていない。ボク達は馬車に乗り、食事をしながらピクニック気分で大森林に向かう。まだ昼の2時過ぎとはいえ、大森林に到着するのは夕方になりそうだ。
途中、エクルちゃんとたくさん話をした。男の子っぽいところがあるけど、凄く可愛くてもふもふだ。同級生のメルちゃんや、もふ仲間のクルンちゃんはすぐに仲良しになった。
その後、久しぶりにアユナちゃんと一緒に寛いだ。もふもふも良いけど、天使の羽が1番気持ちいいさ!高級羽毛布団の肌触り、森の……エルフの薫り……ついつい何時間も顔をうずめちゃった。
途中に出てきた魔物は、レベル10~20くらい。クルンちゃんとエクルちゃんに修行がてら頑張ってもらった。
クルンちゃんの火魔法も多彩になってきた。火の矢を飛ばしたり、爆発させたり、隕石を落とすメテオや、火の壁で防御することまでマスターしている。なかなかの応用力だ。
エクルちゃんは、強い!自前の短剣に緑色の闘気を纏わせる術も見たけど、グリズリーくらいなら1撃で真っ二つだった。まだレンちゃんほどじゃないけど、頼もしい剣士だよ!
そんなこんなで、夕方5時過ぎには大森林の入口に到着し、馬車にアユナちゃんの安心安全結界を張ってから、全員で大森林に入る。エルフの村を見つけるのは大変そうだけど、アユナちゃんがいるし何とかなるよね。
しばらく歩くと、先頭を行くメルちゃんが立ち止まった。徐々に夜の帳が訪れている森の奥をじっと見据えて囁く。
「強力な魔物の気配です。この先200m」
ボク達は慎重に距離を縮める。
クピィはニューアルンで留守番中だけど、魔族か……もしかしたらウィズかもしれない。皆に緊張が走る。
メルちゃんが先頭で、次にボクとアユナちゃん、後ろにクルンちゃんとエクルちゃんの隊列に変更する。
蒼白いオーラを纏う巨体が見えてきた。紅い眼がこっちを向いている。気付かれてる!
[鑑定眼!]
種族:デュラハン(中級魔族)
レベル:39
攻撃:26.35(+4.20)
魔力:39.65
体力:22.25
防御:29.40
敏捷:14.60
器用:10.25
才能:1.75
「デュラハン、レベル39。中級魔族だよ!馬には乗ってないみたいだけど、かなり強い!」
「リンネちゃん、ここは私達に任せてくれませんか?いずれ魔人と戦うなら、どれだけ通用するか試したいのです!」
メルちゃんが有無を言わさず力強く言い切る。他の皆も頷いている。メルちゃんの鬼化、アユナちゃんの加護もあるから任せてみよう。
「分かった!でも、ボクが危ないと判断したら途中から割り込むからね!」
メルちゃんとエクルちゃんが綿密に作戦を練り始めた。アユナちゃんは珍しくしっかり聴いている。クルンちゃんは眠いのか、こっくりこっくり舟を漕いでいる。大丈夫かな……。
「いきます!」
『セイントブレス!!』
アユナちゃんの光魔法が当たる!
デュラハンが纏う蒼白いオーラが揺れる。闇の衣とは少し違うみたいだ。
奇怪な悲鳴をあげながらアユナちゃんに突っ込んでくるデュラハンを、左右からメルちゃんとエクルちゃんが迎え撃つ!
(ギャン!)
メイスが大剣に弾かれる!
(バキン!)
エクルちゃんの短剣もフルプレートの鎧に傷さえ付けられない。
『セイントアロー!!』
「ファイアアロー!!」
密度を凝縮された魔法の矢がデュラハンの鎧に突き刺さる!でも、致命傷ではない。
このままじゃ、埒が明かない!ボクは魔力を練り上げて、必殺のウォータープリズンの準備をする。森の中だと雷は避けた方が良さそうだからね。
メルちゃんは鬼化を使わずに戦うみたいだ。再びメイスで連撃を放っている。デュラハンは防戦一方だけど、エクルちゃんの隙をついた攻撃もやはりダメージは通らない。
アユナちゃんとクルンちゃんも魔力を込めすぎずに戦うみたいだ。さっきの矢の魔法を連発して鎧に穴を開けていく。
これなら大丈夫そうだ。ボクは油断せずに周りを警戒しつつ傍観に徹する。
メルちゃんの強烈な1撃がデュラハンの腕ごとへし折った!エクルちゃんが闘気を纏わせた短剣で手足を切り裂いていく!
かなりタフな魔族だったけど、20分くらいで討伐に成功した。デュラハンは蒼白い魔素を散らして消滅した。皆は肩で息をしている。
「お疲れさま!力をセーブして戦ってた?」
「はい、複数を相手にすることを想定して戦いましたが、逆に消耗したかもしれません」
「でも、メルちゃんが相手と撃ち合って、他の皆が隙をついて攻撃する形は見えたよね!」
その後、低レベルの魔物を倒しつつ、反省点や改善点を話しながら森を進む。
月が森を照らす中、アユナちゃんがエルフの村を見つけた。魔族がいたから心配だ。エリ村のように襲撃を受けていなければいいけど……。
ボク達は、真夜中にようやくエルフの村へ足を踏み入れた。しかし、そこは見るも無惨な廃墟と化していた……誰も何も言えずに、ボク達はしばし立ち尽くした。
『あなたが銀の召喚者リンネ……私は竜神様の遣い、フランと申します。おおよその話は聞いています。これで召喚石は7個目ですね?』
「はい。残り1つの場所が分かれば助かるのですが、知りませんか?」
『1000年前にエルフに授けられたそうです。現在どこにあるのかまでは……』
もしかしたら、大森林に行けば手に入る?
アディさんは確か、西のエルフの村の出身だったはず。大森林に無ければ聞いてみるか……。
「ありがとうございます。召喚石を全て集め、何とか魔王の完全復活を阻止してみせます!」
『銀の召喚者リンネ……召喚石の本来の使い途を知っていますか?』
「はい、異世界から8人の勇者を召喚するんですよね?」
『いいえ。正確には勇者ではなく、8人の召喚者を召喚するのです』
「あれ?“召喚者”ですか?確かにステータスにもそう書いてありましたけど……」
じゃあ、職業欄の勇者って何よ?
異世界から召喚されたら全員が勇者って訳じゃないの?よく分かんない。
『召喚者8人が揃い、召喚の儀式をなすとき、天より神が舞い降りる。召喚石は魔王を滅する神を召喚する為の神石なのです』
「神様を!?なるほど……」
良かった!魔王は神様に任せれば大丈夫だ!
ボクの使命は残り1つの召喚石を探して無事に召喚の儀式を行うこと……ウィズだけ気を付ければ楽勝だよね!
『しかし!』
「はい?」
『召喚されるべき秩序神様が力を失われた今、召喚の儀式は意味をなしません』
「えっ!もしかして、リーン……様……を召喚する儀式だったのですか?天神様とかでも構いませんが?」
『天神様は動けません。天神様と魔神様の力は拮抗しています。天神様が動けば、魔神様が天神様を滅ぼして天界・魔界・地上界の全世界は全て魔に染まるでしょう』
「竜神様は助けてくれないのですか?」
『我らが竜神様は、創造神たる秩序神様の下僕。召喚石を守護するのが使命。その限りにおいてのみ与えられた力……魔王には勝てないでしょう』
「では……どうすれば?」
『秩序神様と共に世界をお守りください!』
「でも……」
まだ聞きたいことがたくさんあるのに……竜人フランは光と共に消えてしまった。後には緑の召喚石をその眼に宿す竜神の像が残された。
とりあえず召喚石を確保だ。
1人で考えても最善策は得られない。軍師のアイちゃんや賢いメルちゃん、あとは……クルンちゃんの占いに頼ろう。
ボクは、台座に上がり竜神の左の眼から緑に輝く召喚石を外した。すると、竜神の右目が一瞬ピカッと光った気がした。
その直後、塔を地震が襲う!
まさか、塔が崩壊する!?
ボクは、召喚石を落とさないように両手で抱え込みながら浮遊魔法を発動し、扉を抜けて皆のところに戻った。
「リンネちゃん!塔が沈みます!!」
「階段降りないで済むです?」
『怖いから!転移で外に出ようよ!』
ボクはアユナちゃんの案を採用して、皆で塔の入口まで転移した。
外から見ると、その様子は圧巻だった。
塔は勢いよく沈んでいた。地面にめり込んでいくようにも見えるが、入口の扉は消えていないので、縮小しているようだ。これも一種の空間魔法なのだろう。
やがて、塔の最上部であったところが地上まで至ると、小さな神殿のような、祠のような遺跡に変わった。中に居ても大丈夫だったみたい。
★☆★
『リンネちゃん、早く召喚しようよ!』
「私も賛成です。早急なレベル上げが必要ですからね。お願いします」
「クルンも見たいです!」
「そうだね。出来れば屋内がいいんだけど、天気もいいし、召喚ちゃうか!」
ボクは地面にぺたりと女の子座りをして、淡い輝きを放つ緑の召喚石を見つめる。皆はボクを囲うように周囲に立っている。いじめ、カツアゲの現場みたいだ。
雑念を振り払う。緑の召喚者か……緑の髪の女の子って不人気の代名詞だって聞いたことがある。でも、昔の雷ビキニの鬼っ娘に始まり、最近のツインテール歌姫とか、緑髪さん達は頑張ってるんだけどね。
さて、どうしようか。イメージ……イメージ……20階に住んでる宇宙人のアイドルは……戦力が足りないかな。あの剣と魔法のデスゲームの妖精の世界にも胸の大きなエルフのお姉さんがいたような……強いけどチーム貧乳が騒ぐからやめておくか。押し入れに住みながら魔王を見張るネコ型な子は……バッテリーが切れたら終わりか。何とか4のゲームに出てくる空から降ってきてネギを振り回すお姫様とか、蝶から変わったハチミツ大好きな虫系ヒロインも可愛いんだけど、戦力的に足りないかな。ちょっと2刀流がレンちゃんと被るけど、犬がたくさん出てくる国の、近衛隊長……垂れ耳な犬っ娘にするか!紋章的な魔法も使えるし、可愛くて強くて真面目だからいいよね!よし、決めた!
抱き締めた緑の召喚石にイメージを注ぎ込む!垂れ耳……2刀流……縞パン……おっと、雑念はダメだ。垂れ耳……2刀流……エメラルドグリーンの髪の……犬っ娘……よし、
「緑の力を持つものよ!我が召喚に応じよ!」
召喚石が煌めきを増す。
心臓の鼓動のように激しく点滅する。
周囲が森の中のように緑の光に包まれる!
やがて、ゆっくりと光は召喚石に吸い込まれて収束していく……。
光が全て消え去ったとき、そこには、ボクから緑の召喚石を受け取って佇む1人の少女がいた。きょとんとした表情、やっぱり犬っ娘は100倍可愛い!!
「えっと……僕はどうしてここに!?」
僕っ娘被りか!
それは仕方ない!
メルちゃんやアユナちゃんはボクをじっと見ている。先に何かしゃべれと?クルンちゃんは彼女の垂れ耳に注目している。獣人繋がりで親近感を持ってくれるといいな。
「ボク……リンネが、貴女を召喚しました」
「え~。任務中だったのに……って、あれ?記憶がないよ?僕は誰なの!?」
混乱しかけたところで、メルちゃんやアユナちゃんが説明をしてくれた。ボクは何回やっても苦手。勝手に召喚しちゃった罪悪感だね!
「えっと、名前はエクルちゃん。よろしく!」
「僕はエクルだ!皆さん、よろしくな!」
↑エクル(清水翔三様作)
[メルがパーティに加わった]
[アユナがパーティに加わった]
[クルンがパーティに加わった]
[エクルがパーティに加わった]
ステータスチェックだ。本人からの情報でスキルと称号も確認した。想像以上に強い!でも、近衛隊長って……。
◆名前:エクル
年齢:14歳 性別:女性 レベル:1 職業:近衛隊長
◆ステータス
攻撃:3.60(+2.40 +2.40)
魔力:7.10
体力:3.25
防御:3.05
敏捷:8.65
器用:2.80
才能:2.00
◆先天スキル:闘気術、食物超吸収、魔力授受
◆後天スキル:
◆称号:緑の召喚者
[闘気術:武器や身体にオーラを纏わせることにより、一時的に攻撃と敏捷を魔力値分だけ上昇させる。維持時間は総魔力量に依存する]
[魔力授受:手を繋いだ相手に魔力を送ったり、逆に吸収することができる]
★☆★
『森だぁ!わくわくするね!』
「クルンも森は好きです!」
「僕もだ!走りたくなる!」
リーンや竜人フランからの情報を皆に伝えたら、なるべく早く大森林に行くべきという話になった。メルちゃん以外は遊び感覚みたい。
塔と大森林はそれほど離れていない。ボク達は馬車に乗り、食事をしながらピクニック気分で大森林に向かう。まだ昼の2時過ぎとはいえ、大森林に到着するのは夕方になりそうだ。
途中、エクルちゃんとたくさん話をした。男の子っぽいところがあるけど、凄く可愛くてもふもふだ。同級生のメルちゃんや、もふ仲間のクルンちゃんはすぐに仲良しになった。
その後、久しぶりにアユナちゃんと一緒に寛いだ。もふもふも良いけど、天使の羽が1番気持ちいいさ!高級羽毛布団の肌触り、森の……エルフの薫り……ついつい何時間も顔をうずめちゃった。
途中に出てきた魔物は、レベル10~20くらい。クルンちゃんとエクルちゃんに修行がてら頑張ってもらった。
クルンちゃんの火魔法も多彩になってきた。火の矢を飛ばしたり、爆発させたり、隕石を落とすメテオや、火の壁で防御することまでマスターしている。なかなかの応用力だ。
エクルちゃんは、強い!自前の短剣に緑色の闘気を纏わせる術も見たけど、グリズリーくらいなら1撃で真っ二つだった。まだレンちゃんほどじゃないけど、頼もしい剣士だよ!
そんなこんなで、夕方5時過ぎには大森林の入口に到着し、馬車にアユナちゃんの安心安全結界を張ってから、全員で大森林に入る。エルフの村を見つけるのは大変そうだけど、アユナちゃんがいるし何とかなるよね。
しばらく歩くと、先頭を行くメルちゃんが立ち止まった。徐々に夜の帳が訪れている森の奥をじっと見据えて囁く。
「強力な魔物の気配です。この先200m」
ボク達は慎重に距離を縮める。
クピィはニューアルンで留守番中だけど、魔族か……もしかしたらウィズかもしれない。皆に緊張が走る。
メルちゃんが先頭で、次にボクとアユナちゃん、後ろにクルンちゃんとエクルちゃんの隊列に変更する。
蒼白いオーラを纏う巨体が見えてきた。紅い眼がこっちを向いている。気付かれてる!
[鑑定眼!]
種族:デュラハン(中級魔族)
レベル:39
攻撃:26.35(+4.20)
魔力:39.65
体力:22.25
防御:29.40
敏捷:14.60
器用:10.25
才能:1.75
「デュラハン、レベル39。中級魔族だよ!馬には乗ってないみたいだけど、かなり強い!」
「リンネちゃん、ここは私達に任せてくれませんか?いずれ魔人と戦うなら、どれだけ通用するか試したいのです!」
メルちゃんが有無を言わさず力強く言い切る。他の皆も頷いている。メルちゃんの鬼化、アユナちゃんの加護もあるから任せてみよう。
「分かった!でも、ボクが危ないと判断したら途中から割り込むからね!」
メルちゃんとエクルちゃんが綿密に作戦を練り始めた。アユナちゃんは珍しくしっかり聴いている。クルンちゃんは眠いのか、こっくりこっくり舟を漕いでいる。大丈夫かな……。
「いきます!」
『セイントブレス!!』
アユナちゃんの光魔法が当たる!
デュラハンが纏う蒼白いオーラが揺れる。闇の衣とは少し違うみたいだ。
奇怪な悲鳴をあげながらアユナちゃんに突っ込んでくるデュラハンを、左右からメルちゃんとエクルちゃんが迎え撃つ!
(ギャン!)
メイスが大剣に弾かれる!
(バキン!)
エクルちゃんの短剣もフルプレートの鎧に傷さえ付けられない。
『セイントアロー!!』
「ファイアアロー!!」
密度を凝縮された魔法の矢がデュラハンの鎧に突き刺さる!でも、致命傷ではない。
このままじゃ、埒が明かない!ボクは魔力を練り上げて、必殺のウォータープリズンの準備をする。森の中だと雷は避けた方が良さそうだからね。
メルちゃんは鬼化を使わずに戦うみたいだ。再びメイスで連撃を放っている。デュラハンは防戦一方だけど、エクルちゃんの隙をついた攻撃もやはりダメージは通らない。
アユナちゃんとクルンちゃんも魔力を込めすぎずに戦うみたいだ。さっきの矢の魔法を連発して鎧に穴を開けていく。
これなら大丈夫そうだ。ボクは油断せずに周りを警戒しつつ傍観に徹する。
メルちゃんの強烈な1撃がデュラハンの腕ごとへし折った!エクルちゃんが闘気を纏わせた短剣で手足を切り裂いていく!
かなりタフな魔族だったけど、20分くらいで討伐に成功した。デュラハンは蒼白い魔素を散らして消滅した。皆は肩で息をしている。
「お疲れさま!力をセーブして戦ってた?」
「はい、複数を相手にすることを想定して戦いましたが、逆に消耗したかもしれません」
「でも、メルちゃんが相手と撃ち合って、他の皆が隙をついて攻撃する形は見えたよね!」
その後、低レベルの魔物を倒しつつ、反省点や改善点を話しながら森を進む。
月が森を照らす中、アユナちゃんがエルフの村を見つけた。魔族がいたから心配だ。エリ村のように襲撃を受けていなければいいけど……。
ボク達は、真夜中にようやくエルフの村へ足を踏み入れた。しかし、そこは見るも無惨な廃墟と化していた……誰も何も言えずに、ボク達はしばし立ち尽くした。
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そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
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