嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第2幕:心を繋ぐ清流の協奏曲(コンチェルト)

第1-3節:少しずつ輪の中に融け込んで

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 それにしても私に頼みたいことというのは何だろう? フィルザード家や領内の事情を考えれば、何かの仕事を任されるということだとは思うけど。対処しなければならないことがたくさんあって、空いている手なら猫の手だって借りたいはずだし。

 …………。

 ……うん、でも頼ってくれてなんだか嬉しい。

 ここへ来たばかりの時、リカルド様やスピーナさんは私に『何もしなくていい』とか『居ることが仕事』なんて言っていた。つまりそれってあくまでも『お客様』という待遇であることを意味するも同然で、私は居心地の悪さを感じていたから。

 やっぱりみんなで支え合って生きていきたいもん。いずれは屋敷内だけでなく、フィルザードで暮らすみんなも一緒に……。

 今、私は少なくともリカルド様にはフィルザード家の一員として認められ、け込みつつあるということなんだと信じたい。まだまだ努力は必要だし、彼の期待に応えられるように頑張らないといけないけど。

 なにより私とリカルド様は一緒に『私たちの夢』を叶えるって誓った。だからこそ彼も私に何かを任せようって思ってくれたに違いない。

 それならその日が来るまでどんな苦難だって乗り越えてみせる。例えこの身がどうなろうとも私は……。

 もちろん、この想いは決してリカルド様には打ち明けられない。きっと心配をかけてしまうし、『無理をするな!』と絶対に止められると思うから。

「……あのぉ、リカルド様。ちょっとよろしいですか?」

 話に区切りが付いたところで、かたわらにいたナイルさんが遠慮がちにリカルド様に問いかけた。眉も曇らせていて、何か違和感でも覚えているかのような雰囲気だ。

「どうした、ナイル?」

「いえ、リカルド様とシャロン様がやけに親しげだなぁと思いまして。昨日はもっとぎこちなかったような気がするのですが」

「っ! ナ、ナイルの気のせいではないかっ!? すすす、少なくとも僕はっ、ず、ずっと同じ態度でいると思うがッ?」

「そう……でしょうかねぇ……」

「ず、随分と含みのある態度だなっ? この際だからハッキリと言ったらどうだ?」

「おふたりの間で何かあったのでは? 無粋ぶすいになりますので、それが具体的に何を指すのかは申し上げませんが」

 ナイルさんの瞳が鋭くきらめく。さすが側近のひとりとしてリカルド様とほぼ行動を共にしているだけあって、ちょっとした変化も敏感に感じ取ったということか。

 確かに私とリカルド様は深夜に密会し、想いを打ち明け合うことで心の距離を大きく縮めた。でもナイルさんがおそらく想像しているであろうはしていないし、そういう気配もなかった――と思う。

 一方、『ふたりの間で何かがあった』という意味においてはその通りなので、私もリカルド様もどうしても反応してしまう。思わず顔を見合わせ、お互いにソワソワして落ち着かない。

 そしてついにこの空気に耐えられなくなったリカルド様は顔を真っ赤にして叫ぶ。

「な、何もないに決まっているだろうっ! というか、変な勘違いをしているのではなかろうなっ? 僕はそんな手の早い軽薄な男ではないぞっ!」

「とりあえず今はそういうことにしておきましょう。それに夫婦仲が良いのは好ましいことですので」

「ナ~イ~ル~っ! 本気で怒るぞっ?」

「ムキになるところがますます怪しいです。なにより昨日まではこんなに動揺を見せることが、滅多になかったように思いますし」

「うぐ……。ま、まぁ、確かに姉上に関すること以外では、あまり取り乱さなかったかもしれないが……」

 防戦一方で苦々しそうにつぶやくリカルド様。

 ただ、今の言葉を聞いた途端にナイルさんの方がなぜかあせり出し、気まずそうにしながら視線をチラチラとこちらに向ける。明らかに私を意識しているのが丸分かり。その上、今までよりも声量を抑えてリカルド様にささやく。

「リカルド様、をシャロン様の前でお話になってもよろしいのですか? まだ時期尚早じきしょうそうなのでは?」

「ん? あぁ、ナイルやジョセフはまだ知らなかったか……。すでにシャロンは姉上と面会を済ませ、会話もしているぞ。想定外のことが色々とあってな。姉上の部屋への入室も姉上自身の意思で許可となっている」

「なっ!? まっ、まさかこの短期間にそこまで事態が進んでいたとはっ!」

「結果としてこうなったことには、僕自身も驚いている。ひょっとするとシャロンと当家には、不思議なご縁があるのかもしれんな」

 驚愕きょうがくしているナイルさんを他所よそに、リカルド様は穏やかな瞳を私に向けた。そして私たちは自然と目が合うと、お互いに小さく微笑ほほえむ。

 …………。

 確かに私とリカルド様やお義姉様の間には、何か見えない力が働いているような気がする。それこそがきっと『ご縁』という力。私の境遇もおふたりと出会ったきっかけも、何もかも様々なお導きが重なった結果のように感じる。

 ――ううん、そうなることが運命だったのかもしれない。

 今後、私がどうなっていくのかは分からないけど、願望としてはフィルザード家とは末永くともに歩んでいきたい。


(つづく……)
 
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