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第2航路:公用船契約に潜む影
第1-2便:なんだかんだで良き相棒!
しおりを挟む聞いた話だと、そのお店の人が社長やルティスさんと知り合いということで、宣伝を兼ねて少量だけど喫茶コーナーに卸しているんだそうだ。
「だったらサンドイッチ目当てで発着場にやってくる人が増えて、渡し船や定期船にもたくさん乗ってくれるようになったらいいな。そうなればシルフィの給料も激増、オイラの食事も豪華になるってもんだ」
「ん? 給料が増えてもそれは魔導エンジンの部品や研究費に消えるから、食事の質は今と変わらないよ?」
「……相変わらず洋服とか化粧品とか、オシャレには使わないんだな」
「う、うるさい……。ま、まぁ、お客さんが増えれば私もますます仕事にやりがいが出てくるのは確かかもね」
「あっ! 話が逸れて忘れるところだった。そうそう、その仕事についてだよ。だからさ、最近のシルフィは仕事を頑張りすぎだなんだよ。停職処分が終わってからずっとだぞ」
「…………」
思わず私は口をつぐみ、色々と思い返してしまった。
もちろん、クロードに指摘されるまでもなく、夢中で仕事に打ち込んでいるのは自分でも分かってる。そうしていないと落ち着かないから。何もしないでいるのが気持ち悪いから。仕事さえしていれば余計なことを考えなくて済むから。
そっか、あの日からもうすぐ1か月になるんだね……。
私は満月の夜に起こした事件により、1週間の停職処分を受けた。それによってディックくんの命を救えたのは良かったけど、社長を始めたくさんの人に迷惑をかけてしまった。
もちろん、処分は覚悟の上でやったことだからそれに関しては別にどうでもいい。
ただ、みんなのことまで頭が回らなかったというのが悔やんでも悔やみきれないのだ。最終的な判断が同じだったとしても、その配慮まで思い至らなかった自分の未熟さを憎らしく思う。
だからこそ、私を許してくれたみんなの温かさや優しさが苦しい。私はもっともっと頑張って、今回の償いをしていかなければならない。
――って、これも私の完全なるエゴだけどね。自己満足。でも愚かだからほかに何も思いつかない。誰か正解を教えてくれれば、どれほど楽なことか。人生ってホントに苦難に満ちている。
「……やっぱり私、頑張りすぎに見えちゃってる?」
「あぁ。会社に迷惑をかけた分を取り返したいとか思ってるのかもしれないけどさ、シルフィが動けなくなったら元も子もないぞ。またフォレスに整備をやらせるつもりか?」
「クロードのクセに正論を言うなんて生意気な……」
「オイラだってシルフィを心配してるから言ってるんだぞ。しかも夜になると、以前とは別の魔導エンジンの研究を始めてるみたいだし。寝不足が続くと本業にも支障が出るっての」
「うぐ……悔しいけど何も反論が出来ない……」
今日のクロードはいつにも増して鋭い指摘をしてくる気がする。意識を乗っ取る魔法か何かを使って、社長が影から操っているんじゃないかという疑念さえ浮かぶほど。
……でも反論に困るほど、今の私は精神的に余裕がない状態で過ごしているのかもしれない。
「だから少し休めよ、シルフィ。聞く耳を持たないなら、フォレスへ内部告発するからな」
「内部告発だなんてまた難しい言葉を……。使い方は少し間違っている気がするけど、ホントにどこで覚えてくるんだか……」
「発着場にいると色々な話が聞こえてくるんだよ。シルフィの仕事を見ているのに飽きたら、あそこの屋根の上で昼寝をしていることが多いからな」
「はいはい、いいご身分ですね。でも確かに最近は焦っている部分があったのは事実かもしれないから、クロードに言われるまでもなく素直に休んでおくことにするよ。午前の仕事はこれでおしまい」
「……シルフィこそ一言多いんじゃないのか?」
クロードは前足で軽く私の頭を突いてくる。そのツッコミが可笑しくて、私は思わず吹き出してしまう。
「あははっ、そうかもね。じゃ、お互い様ということにしておこっか」
「そうだなっ」
「よしっ、コーヒーを淹れて少し休もうっと。クロードにもおやつの乾燥小魚を出してあげる。食べるでしょ?」
「何っ!? 乾燥小魚っ? おぅっ、食う食うっ!」
クロードは私の肩からピョンと飛び降りると、テーブルの下に置いてあるフードボウルのところへ駆けていって待機した。そして瞳を輝かせながらヨダレを啜っている。
食べることとなるとホントに夢中なんだから。ま、そこが可愛いという面もあるんだけどね。
私は苦笑しつつ乾燥小魚を用意し、そのあとでコーヒーを淹れるのだった。
(つづく……)
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