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ドミノ倒し王配候補とオヤツ大好き女王
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不採用の知らせにがっくりと肩を落としていたイーディス・スペンサーのところに採用通知が来たのは一ヶ月後のことだった。
「……何があったのかしら……」
確かに試験はきちんとできていた実感があった。だから、やはり女だから採用されなかったのだな、と哀しく思っていたのだ。
「蓋を開けたら4人も女性が採用されていたなんて、やはり女王様のおかげかしら……」
歴史典礼部長は新しく任命されたばかりの男性で、これまでは歴史課のみの担当だったのだという。
「イーディス君、頼りにしているよ」
ニコリともしない人だったが、誠実そうな人だった。
図書室にも一人、女性が配属された。王立学院ではいつもボランティアで図書室の手伝いをしていた子だ。見知った顔がいるだけで、新しい仕事を始める不安もずいぶん減った。
驚いたことに、資材部と魔道具課にもインターンで女性が一時的に入るのだという。
今までは女性文官が一人もいなかったことを考えると、大きな変化だった。
「すごいなあ……信じられない……」
イーディスは採用通知を大切に額に入れてしまうことにした。
「王国最初の女性文官採用通知……歴史的資料としていつか大切になるはず!」
マリラは困惑していた。
オヤツ係のレジナルドが毎週ニコニコ美味しいおやつを持って来るのだ。
しかも、来るたびに何かしら報告が上がってくる。
「イーディスだけでなく、合格レベルにあった女性文官候補を全員採用させただと……?どうやったんだ?」
「全員じゃあないですよ。インターンにねじ込むまでしかできなかった人材もいますし……」
まあ、性格的にインターンで入ったらまず廃除されることはないと思いますけどね。
レジナルドはそう言いながら、コーヒーゼリーのスプーンをマリラの口元に運ぶ。
「……自分で食べられるから、いい」
「いやいや、そんな事言わないで。陛下忙しいじゃないですか。今も書類持ってますし」
書類に目を通さなくてはならないから、とやんわりと断ったら、「それならこれで解決です!」と隣に座って餌付けを始めた男にそう言われると複雑な気分だ。
「あのさ……知ってるか。お前最近ドミノ倒し王配候補って呼ばれてるそうだぞ」
「……」
コーヒーゼリーを運ぶ手が止まった。
「……どうした?」
「……いやですか?」
「え?」
「陛下、それ、いやですか?」
「……いや……そんなことは……ない……と思う……」
マリラが真っ赤になって呟くと、レジナルドは真面目な顔で、「それじゃあ、そのあだ名、そのままにしておいても良いですか……?」と尋ねた。
「昔、すごーく昔ですよ?貴女、俺の婚約者候補だったじゃないですか。最終的にマシューの婚約者になっちゃいましたけど」
「あ……そういえば、そうだったわね……そうだったな……」
「あれ、俺すごいショックだったんですよね」
「え……?」
思いもよらぬことを耳にしてマリラは慌てた。
「ななななにそれ聞いてない!」
「言ってませんもん」
レジナルドは真面目な顔のまま言った。
「言えるわけないじゃないですか、弟の婚約者が好きだとか。だから身分がなくなった時、あれ、もしかしてこれで口説ける?って思ったんですよね」
まあ、秒でふられましたが。
そういうわけで、いいですかね、こっそり王配候補になっても?
微笑みかけるレジナルドに、「こ……候補なら……考えないこともない……」と答えたマリラは、数年後ドミノ倒し的にレジナルドと婚約することになる。
それはそれは見事な手腕で、外堀を埋めたものだと、王国の歴史家として名を馳せたイーディス・スペンサーは、後に書き残すことになる。
でも、それはまだまだ、先の話。
ゆっくりと二人三脚で新しい王宮のあり方を作り上げてから、のお話。
今の二人は真っ赤になったり、ちょっと言葉に詰まったりなどしながら、食堂のおばちゃんのコーヒーゼリーを食べているのであった。
~完~
「……何があったのかしら……」
確かに試験はきちんとできていた実感があった。だから、やはり女だから採用されなかったのだな、と哀しく思っていたのだ。
「蓋を開けたら4人も女性が採用されていたなんて、やはり女王様のおかげかしら……」
歴史典礼部長は新しく任命されたばかりの男性で、これまでは歴史課のみの担当だったのだという。
「イーディス君、頼りにしているよ」
ニコリともしない人だったが、誠実そうな人だった。
図書室にも一人、女性が配属された。王立学院ではいつもボランティアで図書室の手伝いをしていた子だ。見知った顔がいるだけで、新しい仕事を始める不安もずいぶん減った。
驚いたことに、資材部と魔道具課にもインターンで女性が一時的に入るのだという。
今までは女性文官が一人もいなかったことを考えると、大きな変化だった。
「すごいなあ……信じられない……」
イーディスは採用通知を大切に額に入れてしまうことにした。
「王国最初の女性文官採用通知……歴史的資料としていつか大切になるはず!」
マリラは困惑していた。
オヤツ係のレジナルドが毎週ニコニコ美味しいおやつを持って来るのだ。
しかも、来るたびに何かしら報告が上がってくる。
「イーディスだけでなく、合格レベルにあった女性文官候補を全員採用させただと……?どうやったんだ?」
「全員じゃあないですよ。インターンにねじ込むまでしかできなかった人材もいますし……」
まあ、性格的にインターンで入ったらまず廃除されることはないと思いますけどね。
レジナルドはそう言いながら、コーヒーゼリーのスプーンをマリラの口元に運ぶ。
「……自分で食べられるから、いい」
「いやいや、そんな事言わないで。陛下忙しいじゃないですか。今も書類持ってますし」
書類に目を通さなくてはならないから、とやんわりと断ったら、「それならこれで解決です!」と隣に座って餌付けを始めた男にそう言われると複雑な気分だ。
「あのさ……知ってるか。お前最近ドミノ倒し王配候補って呼ばれてるそうだぞ」
「……」
コーヒーゼリーを運ぶ手が止まった。
「……どうした?」
「……いやですか?」
「え?」
「陛下、それ、いやですか?」
「……いや……そんなことは……ない……と思う……」
マリラが真っ赤になって呟くと、レジナルドは真面目な顔で、「それじゃあ、そのあだ名、そのままにしておいても良いですか……?」と尋ねた。
「昔、すごーく昔ですよ?貴女、俺の婚約者候補だったじゃないですか。最終的にマシューの婚約者になっちゃいましたけど」
「あ……そういえば、そうだったわね……そうだったな……」
「あれ、俺すごいショックだったんですよね」
「え……?」
思いもよらぬことを耳にしてマリラは慌てた。
「ななななにそれ聞いてない!」
「言ってませんもん」
レジナルドは真面目な顔のまま言った。
「言えるわけないじゃないですか、弟の婚約者が好きだとか。だから身分がなくなった時、あれ、もしかしてこれで口説ける?って思ったんですよね」
まあ、秒でふられましたが。
そういうわけで、いいですかね、こっそり王配候補になっても?
微笑みかけるレジナルドに、「こ……候補なら……考えないこともない……」と答えたマリラは、数年後ドミノ倒し的にレジナルドと婚約することになる。
それはそれは見事な手腕で、外堀を埋めたものだと、王国の歴史家として名を馳せたイーディス・スペンサーは、後に書き残すことになる。
でも、それはまだまだ、先の話。
ゆっくりと二人三脚で新しい王宮のあり方を作り上げてから、のお話。
今の二人は真っ赤になったり、ちょっと言葉に詰まったりなどしながら、食堂のおばちゃんのコーヒーゼリーを食べているのであった。
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