51 / 60
9 クリスマス・キス
― 40 ―
女性週刊誌による報道は、SNSやネットニュースのコメント欄を中心に炎上の嵐になっていた。特に多かったコメントは「MINATOに対して幻滅した」というもの。やはり、当たり前だけれど『既婚者と熱愛』というのはみんな嫌悪感を抱いてしまうものだ。もし私が当事者じゃなかったら同じことを思っていたに違いない。
湊人君や所属事務所からは週刊誌が発売された後も何もコメントがなく、彼がOceansとして活動を続けていることも、それに火に油を注いでいる感じだった。金曜日のキラモニッ☆の時にはSNSではアンチによるコメントが増え始め、Oceans以外の出演者もなんだか余所余所しいように見える。しかし、年末年始にかけての音楽番組への出演も決まり始めていて……事務所はこのまま、黙っているつもりなのかもしれない。ただ見守るだけの時間が過ぎていった。
あれ以来、私は彼の事を拒み続けていた。毎週木曜日、インターホンが鳴る。オートロックを介さないそれは間違いなく湊人君の物だった。木曜日の夜にたった一回だけ鳴るそれを、私は聞こえないふりをする。早く引っ越しが出来たらいいのだけど、あまり条件に合う物件が見つからないみたいだった。私も休みの日を利用して不動産屋に行ってみたりするけれど、セキュリティの事を考えると今の私では家賃を払うのが難しい物件が多い。私はまだ、湊人君から物理的にも心の中でも離れることができないでいた。街並みはすっかりクリスマス一色になっていて、バイトに向かうだけでも何回もクリスマスソングを耳にするようになった。年が明ける前に何とかしたかったのに……私は肩を落とす。
鬱々とした気分で日々を送っていたある日、優奈にこんなことを言われた。
「クリスマスパーティしない?」
「……え?」
「女二人でさ、パーッと明るくやろうよ。次の日休みにして、朝まで飲んだくれるの」
「それ、クリスマスパーティって言う?」
私が呆れるように笑うと、優奈は満面の笑みを見せる。彼女のこんな表情を見るのは久しぶりだった。優奈はずっと私に気を使っていたのだと、この時になって気づいた。
「お酒は私が持って行くから、穂花は料理担当ね」
「はいはい、わかりました」
「あとケーキも」
「え? ケーキも?!」
思いがけない注文に私は思わず大きな声をあげる。
「ケーキなんて、数えるくらいしか作ったことないよ? できるかな」
「大丈夫だよ、きっと。私、ブッシュドノエルっていうやつが食べてみたいな」
「えー……。それ、うちのオーブンで焼けるかな……」
「ま、できる範囲でいいよ! 楽しみしてるからね!」
そう言ってくれる友人のおかげで、私も何年かぶりにクリスマスが楽しみになってきた。バイト先で時間があるときに、クリスマス料理のレシピを探したり、主婦のパートさんからどんな料理をするのかという話をする。そうしている間は湊人君のことを考えずにすんで、気がまぎれた。
それでも、少しでも気を抜くと現実は波のように押し寄せてくる。私が抱えている問題は、もう一つあった。湊人君から離れることができないのと同様に、離婚についても話が進んでいなかった。藤野さんはのらりくらりと逃げ続けているらしい。優奈には年明けにも、離婚調停、そして裁判まで視野に入れて本格的に話をしようと言われている。裁判なんて大掛かりなことまではしたくはなかったけれど、解決しなかったのだから仕方ない。
乱れた本棚を直していると、テレビ雑誌コーナーの前で女子高生の集団が何やら話をしているのが見えた。一瞬『Oceans』という言葉が聞こえてきた。私は本能的に耳を澄ましてしまう。
「アンタOceans好きだったじゃん、買わないの?」
「んー……今ちょっと萎えてるの」
そう話す女の子の声はとてもどんよりしていた。
「へー、アンタにもそんなことあるんだね」
「だってさ! MINATOってば不倫してたんだよ!」
その言葉にドキリと胸に痛みが走る。
「あー、そういえばそんなこと言ってたね。ネットニュースで見たよ」
「それなのに今も謝罪とかなくってさぁ! なんかすっごく幻滅したっていうか……ほとぼり冷めるまで待ってるみたいな感じで、何かムカつくんだよね」
「アンタがそこまで言うって、よっぽどだねー」
私は、湊人君はそんな人じゃないよって言いたかった。けれど、今彼女たちにそんな風に声をかけたらただの不審者だし……それに、私にできることは何もない。下手に何かしても、ただ墓穴を掘るだけ。私は息を潜めながらその場を離れていった。
***
「穂花ちゃん、クリスマス何作るのか決めたの?」
バイト終わり、最近よく話をするパートさんに声をかけられた。今日は12月23日、明日はイブ。優奈とパーティをするって約束した日だった。
「はい、ミートローフでも作ろうかなって思ってて」
肉だねを半熟にしたゆで卵と一緒に型に入れて、オーブンで焼いていく料理。上手に焼くことが出来たら、卵は半熟のまま、切ったら黄身がとろりと流れ出す。簡単そうに見えるけれど、その加減が難しい。
「いいねぇ。うちの子なんて、もう面倒だから何もしなくていいなんて言うのよ。だから焼き鮭だしてやるわ」
「寂しいですね、それは」
「そうよ~、クリスマスを一緒にやってくれるうちが華なの。その彼氏大事にするのよ」
私は大慌てで首をぶんぶんと横に振って否定する。
「友達! 友達です! 一緒にパーティするの!」
「え? あらやだ、ごめんね。勝手に勘違いしてた」
私からは乾いた笑いが漏れるけれど、パートさんは自らの勘違いに大爆笑していた。
「楽しんでね、パーティ! お友達によろしく」
「はい、ありがとうございます」
私はバイト先を出て、スーパーに向かう。ここもクリスマス一色で、少しだけ価格にお祭りムードが加算されている。私はそれに目をつぶって、材料を買い集めていた。明日は料理作りとパーティで一日が終わる。今のうちに買い物を済ませておかないと。ミートローフの材料と、それだけだとテーブルが寂しいからサーモンのカルパッチョとサラダの準備もして、優奈にリクエストされたブッシュドノエルの材料を買う。まだ家のオーブンでロールケーキが焼けるのか試したことはないから、もしかしたら失敗するかもしれない。その時は、コンビニでケーキを買おう。私はそう考えながら家路を急いだ。
マンションの近くに来ると、まだ少しドキドキしてしまう。藤野さんがいるかもしれないという恐怖だけではなく、湊人君に出会うという偶然が起きてしまうのではないかという不安。もし彼に会ったら、私はどんな態度を取ればいいのだろう? その答えが見つかっていないから、どうしてもそれだけは避けたい。エントランスを過ぎて、エレベーターに乗って、自分の部屋の前に着くまで気が抜けなかった。
「……あれ?」
私は自分の部屋のドアにメモが貼りつけられているのに気づいた。そっとテープを剥がして二つ折りになっていたそのメモを開く。そこには湊人君の名前にメッセージが添えられている。
『明日、SNSで生配信するから見て欲しい』
メモには走り書きでそう書いてあった。私はそれを破り捨てようと思ったけれど、どうしても手がうまく動かなかった。私はその手紙を丁寧に畳み、それと一緒に家に帰っていた。
湊人君や所属事務所からは週刊誌が発売された後も何もコメントがなく、彼がOceansとして活動を続けていることも、それに火に油を注いでいる感じだった。金曜日のキラモニッ☆の時にはSNSではアンチによるコメントが増え始め、Oceans以外の出演者もなんだか余所余所しいように見える。しかし、年末年始にかけての音楽番組への出演も決まり始めていて……事務所はこのまま、黙っているつもりなのかもしれない。ただ見守るだけの時間が過ぎていった。
あれ以来、私は彼の事を拒み続けていた。毎週木曜日、インターホンが鳴る。オートロックを介さないそれは間違いなく湊人君の物だった。木曜日の夜にたった一回だけ鳴るそれを、私は聞こえないふりをする。早く引っ越しが出来たらいいのだけど、あまり条件に合う物件が見つからないみたいだった。私も休みの日を利用して不動産屋に行ってみたりするけれど、セキュリティの事を考えると今の私では家賃を払うのが難しい物件が多い。私はまだ、湊人君から物理的にも心の中でも離れることができないでいた。街並みはすっかりクリスマス一色になっていて、バイトに向かうだけでも何回もクリスマスソングを耳にするようになった。年が明ける前に何とかしたかったのに……私は肩を落とす。
鬱々とした気分で日々を送っていたある日、優奈にこんなことを言われた。
「クリスマスパーティしない?」
「……え?」
「女二人でさ、パーッと明るくやろうよ。次の日休みにして、朝まで飲んだくれるの」
「それ、クリスマスパーティって言う?」
私が呆れるように笑うと、優奈は満面の笑みを見せる。彼女のこんな表情を見るのは久しぶりだった。優奈はずっと私に気を使っていたのだと、この時になって気づいた。
「お酒は私が持って行くから、穂花は料理担当ね」
「はいはい、わかりました」
「あとケーキも」
「え? ケーキも?!」
思いがけない注文に私は思わず大きな声をあげる。
「ケーキなんて、数えるくらいしか作ったことないよ? できるかな」
「大丈夫だよ、きっと。私、ブッシュドノエルっていうやつが食べてみたいな」
「えー……。それ、うちのオーブンで焼けるかな……」
「ま、できる範囲でいいよ! 楽しみしてるからね!」
そう言ってくれる友人のおかげで、私も何年かぶりにクリスマスが楽しみになってきた。バイト先で時間があるときに、クリスマス料理のレシピを探したり、主婦のパートさんからどんな料理をするのかという話をする。そうしている間は湊人君のことを考えずにすんで、気がまぎれた。
それでも、少しでも気を抜くと現実は波のように押し寄せてくる。私が抱えている問題は、もう一つあった。湊人君から離れることができないのと同様に、離婚についても話が進んでいなかった。藤野さんはのらりくらりと逃げ続けているらしい。優奈には年明けにも、離婚調停、そして裁判まで視野に入れて本格的に話をしようと言われている。裁判なんて大掛かりなことまではしたくはなかったけれど、解決しなかったのだから仕方ない。
乱れた本棚を直していると、テレビ雑誌コーナーの前で女子高生の集団が何やら話をしているのが見えた。一瞬『Oceans』という言葉が聞こえてきた。私は本能的に耳を澄ましてしまう。
「アンタOceans好きだったじゃん、買わないの?」
「んー……今ちょっと萎えてるの」
そう話す女の子の声はとてもどんよりしていた。
「へー、アンタにもそんなことあるんだね」
「だってさ! MINATOってば不倫してたんだよ!」
その言葉にドキリと胸に痛みが走る。
「あー、そういえばそんなこと言ってたね。ネットニュースで見たよ」
「それなのに今も謝罪とかなくってさぁ! なんかすっごく幻滅したっていうか……ほとぼり冷めるまで待ってるみたいな感じで、何かムカつくんだよね」
「アンタがそこまで言うって、よっぽどだねー」
私は、湊人君はそんな人じゃないよって言いたかった。けれど、今彼女たちにそんな風に声をかけたらただの不審者だし……それに、私にできることは何もない。下手に何かしても、ただ墓穴を掘るだけ。私は息を潜めながらその場を離れていった。
***
「穂花ちゃん、クリスマス何作るのか決めたの?」
バイト終わり、最近よく話をするパートさんに声をかけられた。今日は12月23日、明日はイブ。優奈とパーティをするって約束した日だった。
「はい、ミートローフでも作ろうかなって思ってて」
肉だねを半熟にしたゆで卵と一緒に型に入れて、オーブンで焼いていく料理。上手に焼くことが出来たら、卵は半熟のまま、切ったら黄身がとろりと流れ出す。簡単そうに見えるけれど、その加減が難しい。
「いいねぇ。うちの子なんて、もう面倒だから何もしなくていいなんて言うのよ。だから焼き鮭だしてやるわ」
「寂しいですね、それは」
「そうよ~、クリスマスを一緒にやってくれるうちが華なの。その彼氏大事にするのよ」
私は大慌てで首をぶんぶんと横に振って否定する。
「友達! 友達です! 一緒にパーティするの!」
「え? あらやだ、ごめんね。勝手に勘違いしてた」
私からは乾いた笑いが漏れるけれど、パートさんは自らの勘違いに大爆笑していた。
「楽しんでね、パーティ! お友達によろしく」
「はい、ありがとうございます」
私はバイト先を出て、スーパーに向かう。ここもクリスマス一色で、少しだけ価格にお祭りムードが加算されている。私はそれに目をつぶって、材料を買い集めていた。明日は料理作りとパーティで一日が終わる。今のうちに買い物を済ませておかないと。ミートローフの材料と、それだけだとテーブルが寂しいからサーモンのカルパッチョとサラダの準備もして、優奈にリクエストされたブッシュドノエルの材料を買う。まだ家のオーブンでロールケーキが焼けるのか試したことはないから、もしかしたら失敗するかもしれない。その時は、コンビニでケーキを買おう。私はそう考えながら家路を急いだ。
マンションの近くに来ると、まだ少しドキドキしてしまう。藤野さんがいるかもしれないという恐怖だけではなく、湊人君に出会うという偶然が起きてしまうのではないかという不安。もし彼に会ったら、私はどんな態度を取ればいいのだろう? その答えが見つかっていないから、どうしてもそれだけは避けたい。エントランスを過ぎて、エレベーターに乗って、自分の部屋の前に着くまで気が抜けなかった。
「……あれ?」
私は自分の部屋のドアにメモが貼りつけられているのに気づいた。そっとテープを剥がして二つ折りになっていたそのメモを開く。そこには湊人君の名前にメッセージが添えられている。
『明日、SNSで生配信するから見て欲しい』
メモには走り書きでそう書いてあった。私はそれを破り捨てようと思ったけれど、どうしても手がうまく動かなかった。私はその手紙を丁寧に畳み、それと一緒に家に帰っていた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。