幸せの図書館

小春藤華

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引き込まれそうな

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「ダイキは何してたん?ここで」


「雨降っとったから…雨宿りしようかなって…」


リュウはそっかと右の口角を上げて笑った。


その笑みに少し胸が締め付けられるような、変な感覚がした。


「そうや、ダイキにも紹介したる」


「何を…?」


「俺のダチ」


もう少ししたら駆け込んでくるでとまた笑うリュウ。


横に座るように言われ、僕はアホみたいにうるさい胸の音をリュウに気付かれないように小さく腰掛けた。


そこから何も話さなかった。


というよりか話さなくてもよかった。


何だか心地良かった。


そしてしばらくして雨が強くなってきた頃。


重く古びたドアが音を立てて開いた。


「めっちゃ寒いやん」

「ちょっと待っとき。コーヒー作ったるから」


なんて会話をしながら高身長の人と逆に小さい人が慌てて入ってきた。


「やっと来たか」


リュウが立ち上がると2人はニコニコ笑って駆け寄ってきた。


「ダイキ。こっちのデカいのがノゾム。ちっちゃいのがトモや。
トモと俺は2回生。ノゾムは1回生でトモの弟や」


「トモです。よろしくな」


「俺ノゾム!よろしく!」


ノゾムはリュウより背が高く、トモは俺より少し小さいぐらい。


「あ、お兄寒い」


「そうやコーヒー入れな。ダイキ君もコーヒーでええ?」


僕は緊張して首を縦に動かすことしか出来なかった。


2人はとても仲が良いのかどこかの本棚から出てきた大きなタオルを2人で使っていた。


「ここな、俺らの家やねん」


リュウはもう1度ベンチに腰掛けて言った。


「俺も、あの二人も居場所が無くてな。俺がアイツらを拾ってここに連れてきた

なぁ…ダイキも1人なんやろ?」


そう言われて顔を上げるとリュウの真剣な目と目が合った。


簡単には外せない。


引き込まれそうな目をしていた。
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