15 / 66
1章 奪う力と与える力
第14話 大切な従者と第四王子
しおりを挟む
ベッドの下で待機していると、正午に差しかかったころ、窓から馬車団の音が聞こえてきた。玄関の方があわただしくなる。あいつが到着したのだろう。
しばらくして、ガヤガヤと話し声が聞こえたかと思うと、バン!と部屋の扉が乱暴に開けられた。
「はははは!もうすぐ!もうすぐあの女が手に入る!どう思う!ブラウ、アズー!」
「はっ、クワトゥル様にもらわれてピアーチェス様もお幸せでしょう」
「生意気な女ほど楽しめると思います!」
「はは!そうだろうそうだろう!やはり、アズーは私と気が合うな!そういえば、この前渡してやったメイドはどうだった!」
「すごく良かったです!特に泣き顔が!」
「ははは!それは良かった!是非アズーの調教の仕方についても教えてくれよ!実に愉快だ!」
そして、こいつらは信じられないような下品な話をはじめる。〈相手が嫌がっていればいるほどいい〉とかどうとか。
なんでこんなやつらの地位が高いんだ……こんなやつら……地獄に落ちればいい。
僕はベッドの下から、そいつらの足を睨み続けた。
♢
夕方になり、散々聞きたくもない話を聞いたら、あいつらは食事に向かい、また部屋に戻ってきて酒を飲み始めた。
よし、このくだらない宴会が終わって寝静まったら第四王子のギフトキーを奪い取ってやる。
そう思っていたのに、
「そういえば、アズー、おまえいい酒が手に入ったとか言ってなかったか?クワトゥル様に献上すると言っていたではないか?」
「そうだった!ありがと!兄上!すぐに持って参りますので!」
「よいよい!皆でアズーの部屋に行こうではないか!はははは!」
そして、大声を上げながら、3人とも連れだって部屋を出ていってしまった。追うかどうか迷う。いや、まだあと5日の猶予がある。こいつらが別荘にいる間に奪えばいいんだ。余計なリスクは犯さないようにしよう。僕ははやる気持ちを抑えて、その日はベッドの下で過ごすことにした。
♢
-翌日-
城のような別荘の中をこそこそと歩き回る。結局、あいつらはあの後戻ってこなかった。おそらく、アズーの部屋で飲み始めて、そのまま寝たのだろう。
僕の能力の特性上、第四王子が寝ている間に奪うのが1番リスクが低い。だから、あいつの寝室に潜り込んでいたのだが、昨日のように別の部屋で寝られては敵わない。せめてあいつの習性くらいは把握しておかないと、そう考えながら、キョロキョロしていると、使用人の服を着たカリンがキッチンへと入って行くのが見えた。
そして、そのカリンのことを、あいつが……第四王子がニヤけた顔で追いかけていくのを見つけてしまう。すごくイヤな予感がして、すぐに後を追った。見つからないように物陰に身を隠し、キッチンの中の会話に聞き耳を立てる。
「おまえ、新入りだな?」
「……はい。3日前から使えさせていただくことになりました」
カリンとあいつの声が聞こえる。
「いい身体してるじゃないか」
「おたわむれを……」
冷や汗が流れる。そっと、キッチンの中の様子を伺った。
カリンが第四王子に迫られ、壁に追いやられていた。両手を掴まれている。
『カリン!』すぐに出て行こうとしたが、カリンと目が合い睨まれる。『今は出てくるな』そう訴えかけられた。僕は、ぴたりと身体を止めて、元の位置に戻る。
ぎゅっと、棚の縁を強く握りしめて、カリンのことを見守った。
「あん?なんだその目は?私のことを舐めているのか?」
「滅相もございません……」
「おまえ、私に使えてるということは、私の所有物であるという自覚はあるな?」
「……」
「答えろ!」
「は、はい……」
「いい子だ。ふふふ……おまえ、今晩、私の部屋に来い、可愛がってやる」
「か、かしこまりました……」
クワトゥル第四王子は、カリンの同意を聞いて満足したのか。ニヤついた顔を浮かべたまま、キッチンを出ていった。
「……カリン!大丈夫!?」
僕は、あいつの気配が無くなってから、すぐにカリンに近づく。
「よく我慢されました、ご主人様」
焦っている僕とは裏腹にカリンは冷静だ。
「なんであんな約束!すぐに逃げよう!」
「いえ、逆に好都合です」
「なにがだ!」
「落ち着いてください、ご主人様」
そっと、唇に人差し指を当てられる。
「むぐ……でも……だって、カリンが……」
「心配していただけるのは嬉しく思います。しかし、目的はあいつからスキルを奪うことです。私のことは二の次で大丈夫です」
「でも……」
「いいですか?ご主人様。私はあいつに今晩呼ばれました。つまり、今晩あいつは自室で私と2人っきりになるということです。ご主人様は、昨日と同じようにベッドの下に隠れ、待機していてください。あいつが眠ったらギフトキーの奪取を」
「でも……カリンの身が危ないよ……」
「私は大丈夫です、私を信じてください。ほら、人が来ました、隠れて」
グッと背中を押され、廊下に出される。僕は不安な気持ちを抱えたまま、その場を後にした。
しばらくして、ガヤガヤと話し声が聞こえたかと思うと、バン!と部屋の扉が乱暴に開けられた。
「はははは!もうすぐ!もうすぐあの女が手に入る!どう思う!ブラウ、アズー!」
「はっ、クワトゥル様にもらわれてピアーチェス様もお幸せでしょう」
「生意気な女ほど楽しめると思います!」
「はは!そうだろうそうだろう!やはり、アズーは私と気が合うな!そういえば、この前渡してやったメイドはどうだった!」
「すごく良かったです!特に泣き顔が!」
「ははは!それは良かった!是非アズーの調教の仕方についても教えてくれよ!実に愉快だ!」
そして、こいつらは信じられないような下品な話をはじめる。〈相手が嫌がっていればいるほどいい〉とかどうとか。
なんでこんなやつらの地位が高いんだ……こんなやつら……地獄に落ちればいい。
僕はベッドの下から、そいつらの足を睨み続けた。
♢
夕方になり、散々聞きたくもない話を聞いたら、あいつらは食事に向かい、また部屋に戻ってきて酒を飲み始めた。
よし、このくだらない宴会が終わって寝静まったら第四王子のギフトキーを奪い取ってやる。
そう思っていたのに、
「そういえば、アズー、おまえいい酒が手に入ったとか言ってなかったか?クワトゥル様に献上すると言っていたではないか?」
「そうだった!ありがと!兄上!すぐに持って参りますので!」
「よいよい!皆でアズーの部屋に行こうではないか!はははは!」
そして、大声を上げながら、3人とも連れだって部屋を出ていってしまった。追うかどうか迷う。いや、まだあと5日の猶予がある。こいつらが別荘にいる間に奪えばいいんだ。余計なリスクは犯さないようにしよう。僕ははやる気持ちを抑えて、その日はベッドの下で過ごすことにした。
♢
-翌日-
城のような別荘の中をこそこそと歩き回る。結局、あいつらはあの後戻ってこなかった。おそらく、アズーの部屋で飲み始めて、そのまま寝たのだろう。
僕の能力の特性上、第四王子が寝ている間に奪うのが1番リスクが低い。だから、あいつの寝室に潜り込んでいたのだが、昨日のように別の部屋で寝られては敵わない。せめてあいつの習性くらいは把握しておかないと、そう考えながら、キョロキョロしていると、使用人の服を着たカリンがキッチンへと入って行くのが見えた。
そして、そのカリンのことを、あいつが……第四王子がニヤけた顔で追いかけていくのを見つけてしまう。すごくイヤな予感がして、すぐに後を追った。見つからないように物陰に身を隠し、キッチンの中の会話に聞き耳を立てる。
「おまえ、新入りだな?」
「……はい。3日前から使えさせていただくことになりました」
カリンとあいつの声が聞こえる。
「いい身体してるじゃないか」
「おたわむれを……」
冷や汗が流れる。そっと、キッチンの中の様子を伺った。
カリンが第四王子に迫られ、壁に追いやられていた。両手を掴まれている。
『カリン!』すぐに出て行こうとしたが、カリンと目が合い睨まれる。『今は出てくるな』そう訴えかけられた。僕は、ぴたりと身体を止めて、元の位置に戻る。
ぎゅっと、棚の縁を強く握りしめて、カリンのことを見守った。
「あん?なんだその目は?私のことを舐めているのか?」
「滅相もございません……」
「おまえ、私に使えてるということは、私の所有物であるという自覚はあるな?」
「……」
「答えろ!」
「は、はい……」
「いい子だ。ふふふ……おまえ、今晩、私の部屋に来い、可愛がってやる」
「か、かしこまりました……」
クワトゥル第四王子は、カリンの同意を聞いて満足したのか。ニヤついた顔を浮かべたまま、キッチンを出ていった。
「……カリン!大丈夫!?」
僕は、あいつの気配が無くなってから、すぐにカリンに近づく。
「よく我慢されました、ご主人様」
焦っている僕とは裏腹にカリンは冷静だ。
「なんであんな約束!すぐに逃げよう!」
「いえ、逆に好都合です」
「なにがだ!」
「落ち着いてください、ご主人様」
そっと、唇に人差し指を当てられる。
「むぐ……でも……だって、カリンが……」
「心配していただけるのは嬉しく思います。しかし、目的はあいつからスキルを奪うことです。私のことは二の次で大丈夫です」
「でも……」
「いいですか?ご主人様。私はあいつに今晩呼ばれました。つまり、今晩あいつは自室で私と2人っきりになるということです。ご主人様は、昨日と同じようにベッドの下に隠れ、待機していてください。あいつが眠ったらギフトキーの奪取を」
「でも……カリンの身が危ないよ……」
「私は大丈夫です、私を信じてください。ほら、人が来ました、隠れて」
グッと背中を押され、廊下に出される。僕は不安な気持ちを抱えたまま、その場を後にした。
72
あなたにおすすめの小説
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
転生 上杉謙信の弟 兄に殺されたくないので全力を尽くします!
克全
ファンタジー
上杉謙信の弟に転生したウェブ仮想戦記作家は、四兄の上杉謙信や長兄の長尾晴景に殺されないように動く。特に黒滝城主の黒田秀忠の叛乱によって次兄や三兄と一緒に殺されないように知恵を絞る。一切の自重をせすに前世の知識を使って農業改革に産業改革、軍事改革を行って日本を統一にまい進する。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる