鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸

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2章 呪われた炎

第64話 祝賀会と忍び寄る影

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「ぼー……」

「ジュナ?ジュナ!ジュナったら!」

「ん?なになに?」

「もう!乾杯しますわよ!グラスを持って!」

「ああ、うん、すぐ行くよ」

 僕はギフト授与式のことをリビングのソファに座りながら思い出していた。ナナリア第七王女、なんとも不気味な人だ。彼女は、なんで僕を見て笑った?なんでBランクなのに、Sランクを授与できた?
 謎は深まるばかりだ。さすがに、断り続けていたお茶会に参加して、ナナリア王女のことを探る必要があるかもしれない。そんな思考を巡らせているところだった。

 いや、今は目の前のことに集中しよう。僕は、ソファから立ち上がって、テーブルに置いてあるグラスを持って配置につく。僕の周りには、ピャーねぇにシューネ、ディセとセッテ、カリン、セーレンが勢揃いしていた。みんなグラスを持って僕のことを見ている。
 ん?あぁそっか、僕が挨拶する流れか。

「えー、それでは、この度は、シューネのSランク授与を祝しまして~」

「ジュナったら、オッサンみたいですわ」

 誰がオッサンやねん。

「えっと、じゃあ!シューネ!Sランク授与おめでとー!かんぱーい!」

「かんぱーい!」
「カンパーイ!」

 みんながグラスをあげ、それを軽く合わせる。グラス同士が触れ合う「チンッ」という小気味良い音が聞こえてきた。僕は、ノンアルコールのシャンパンを一口飲んでからシューネに話しかける。

「実家の方は大丈夫そう?」

「はい。いえ……正確には大丈夫とは言い難いですが、お姉様とお兄様のおかげでボルケルノ家自体の地位は保たれてます。ただ、お父様はギフト授与式でのマーダスお兄様の振る舞いを非常にお怒りになっていて、数年は牢から出さないとおっしゃってました」

「そっか」

 本心では、あいつが閉じ込められてるだけって状況も心配ではあった。いつか出てきて、また襲ってこないかと懸念してるのだ。まぁでも、シューネが頑張って庇った兄貴だし、牢の中で改心してくれることを祈ろう。これから、マーダスの牢にはシューネが定期的に通うと言ってるし、この子の優しさに触れて改心してほしいと願うばかりだ。

「でもさ、本当にこれで良かったのかな?シューネのことを虐待してる長男を放置してきた家族でしょ?」

 ボルケルノ家を守る価値なんてあったかな?と言いそうになる。

「それでも、わたしの肉親ですので……」

「そっか……」

 シューネがそう言うなら、もう何も言うまい。この子はすごく優しい子なのだ。

「シューネは偉くて優しくてすごい子ですわ!シューネはもっと褒められるべきですの!お姉様が撫でてあげますわ!」

 ピャーねぇがシューネに抱きつき、よしよしと頭を撫でる。

「お姉様、わたし、すごく幸せです。こんなに素敵なお姉様ができて……」

「まぁ!なんて可愛いのかしら!なんだかちょっと前のジュナのことを思い出しますわね!」

「お兄様を?」

「ええ!ジュナもシューネが来る前は、こんな感じでデレてましたのよ!きっとあれですわ!妹の前で姉に甘えるのが恥ずかしいんでしてよ!」

「デレてません。別に甘える気もありません」

「もう!すぐ照れるんですから!」

「あはは!ジュナ様照れてるー!」
「ご主人様はそういう素直じゃないところが可愛いのです。わからせがいがあります」
「ふふ、みんなが楽しそうでディセは幸せです」

 その日は、みんなの笑い声に包まれて、幸せな晩餐を楽しむことができた。



-第二王子デュオソーン居室-

「ヘキサシスが失敗しただと?」

 デュオソーンは、守護障壁を持つ従者の報告を聞いて、眉をひそめていた。

「はっ、Aランクのギフトキー所持者としては失敗だったと言われています。本日のギフト授与式にて、ヘキサシス様は2人の貴族にスキルを授与しようとしました。1人目はCランクを発現したのですが、もう1人は何も発現さえしませんでした」

「発現しなかっただと?授与相手は誰だ?」

「ボルケルノ家の長男です」

「……どういうことだ」

 独り言のようにデュオソーンがぼそりと呟く。

「今日は、ヘキサシス以外に、ピアーチェスとナナリアもいたな?2人の結果は?」

「それが……お2人とも、Sランクのスキルを授与されまして……」

「……」

 おかしい、どういうことだ。デュオソーンは再び考え込む。

 クワトゥルに続き、ヘキサシスも失敗しただと?
 Aランクの王子が立て続けにギフト授与式で失態を晒し、Eランクが2回連続でSランクを授与した?いや、ピアーチェスはいい、次のスキル鑑定で鑑定結果が間違っていたとなれば納得できる。しかし、ナナリアはBランクのはず、こちらも鑑定ミスか?それに、ボルケルノ家は代々高ランクのスキル発現者を排出してきた貴族。スキル無しなんてこと、ありえるのか?

「《スキル無し》……か……」

「デュオ様?」

「おい」

「はっ!」

「今日のギフト授与式に、ジュナリュシアはいたか?」

「第十七王子のジュナリュシア様のことでしょうか?」

「そうだ」

「……申し訳ございません。ジュナリュシア様には注目しておらず、確認しておりませんでした」

「そうか」

 クワトゥルのとき、ジュナリュシアがしゃしゃり出てきたことがずっと引っかかっていた。あいつが出てきたあと、ブラウ・ヴァンドゥーオが私に暴挙を働いたからだ。

 スキル無しが何かできるとは思っていない。しかし、あの場で1番目立っていたのはあいつだった。命懸けで、ピアーチェスが授けた治癒魔法の効果を示した男、ジュナリュシア・キーブレス。あいつが裏で何かを?いや……憶測だけでは何もわからぬ。

「おい、ピアーチェスとジュナリュシア、それとナナリアに書状を書く。筆と紙を」

「はっ!すぐにお持ちします」

 従者が部屋を出ていくのを見てから、私は窓の外を眺めた。
 めんどうだ。だが、なにか胸騒ぎがする。あいつらが何をしているかわからないなら、直接、そばにおいて見定めるとしよう。

 デュオソーンは、空を眺めながら、退屈そうに、しかし獲物を狙うような鋭い目で、ジュナたちのことを考えていた。
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