アナザーワールドシェフ

しゃむしぇる

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第一章 龍の料理人

第66話

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 そしてカミルの住処である城へと帰ってくると……ふてくされ、ぷっくりと頬を膨らませたマームが私達を待ち構えていた。

「……遅い。何でこんなに時間かかった?」

「すまない、色々と予想外の出来事に見舞われてな……後、街に寄って色々買い物していたから遅れたんだ。」

「ふぅん……そう、理由はわかった。でもずっと待ってたから私のお腹ペコペコ……だから早くご飯作っ…………て?」

「あぅ……。」

 私の手を引こうとこちらにズンズンと歩み寄ってきたマームは、私の後ろに隠れていたノノと目が合ってしまった。そこで初めて彼女の存在に気が付いたらしい。

「……ミノル。その子誰?」

「この子はノノ……あ~何て言うか私の新しいお手伝いさんだ。」

「ふぅん?」

 私の後ろに視線を恐れるように隠れていたノノにマームはゆっくりと近づき話しかけた。

「私マーム。」

「あぅ?」

「マーム。」

 マームは自己紹介をしたが、ノノが名前を呼んでくれないので何度も自分の名前をノノに教えている。

「あ~……マーム。すまない、その子言葉を話せないらしいんだ。」

「言葉……話せないの?」

 マームがノノのことを見て問いかけると、ノノは少し怯えながらコクリと頷いた。
 そんな時、マームがノノの額にポン……と手を置いた。その瞬間、ノノが驚いた表情を浮かべる。

「あ、あぅ!?」

「ビックリした?頭の中で私の声……聞こえたでしょ?」

 すっ……とマームがノノの額から手を離すと、マームの言葉に何度もノノは頷いた。

「あなたの声も私に聞こえる。口で話さなくても……頭で思うだけでいい。」

「あぅ……。」

 そしてもう一度マームがノノの額に手を置くと、ノノは目をつぶり何かを必死に念じるようにしていた。マームがノノの額から手を離すと……マームはノノの顔を覗き込みながら言った。

「よろしく……ノノ?」

「あ……あうっ!!」

 自分の思いがマームに伝わったのが嬉しかったのか、ノノはとても喜んでいるように見える。……というのもノノは今、頭で忙しなくピコピコと猫のような耳をうごかしながら、ふりふりと尻尾を振っている。多分……喜んでいるという解釈で合っていると思う。

「あう!!あうっ!!」

「ん……どうしたの?またやってほしい?」

 突然ぎゅっと、ノノはマームの手を握り自分の額に押し付けようとしている。どうやらまだ何か伝えたいことがあるらしい。

「わかった。それじゃあ……はいっ。」

 再びマームがノノの額に手を当てると、マームが私の方を振り返って言った。

「ノノはミノルに伝えたいことがあるみたい。」

「私に?」

「うん。」

「通訳……してくれるか?」

「わかった。」

 そしてマームはノノの思いに耳を傾け、何度か頷いた後……私に向き直る。

「えっと……先ずはノノを買ってくれてありがとうだって。」

 マームと一緒にこちらを向いているノノは何度も頷く。

「それで、今は皆と同じように言葉は話せないけど……頑張って話せるようになるって言ってる。」

「……そっか。無理はしないようにな。」

 ポンポンと私はノノの頭を撫でる。

「さてっと……料理を作る前に、ノノのことをお風呂で綺麗にしてくるから、皆は先にいってて良いぞ?」

「む?ミノルは一日の最後に水浴びするのではなかったのかの?」

「私は湯には浸からない。ただ、ノノを洗ってあげないといけないだろ?」

 今のノノは今の今まで奴隷としての扱いを受けていたせいもあって、正直清潔……とはとても言いがたい。料理を食べるにしろ、何にしろ、一度体を洗ってさっぱりとして貰った方が良いと思ったのだ。

「確かに……少々汚れが目立つの。今の今まで奴隷として家畜以下の扱いを受けておったのだから仕方がないかもしれぬが……。」

「ま、そういうわけだ。しかし、ノノは女の子だから……できれば私以外にお願いしたかったが……。」

 そうポツリと呟くとノノは更に力を込めて私にぎゅっと抱きついてくる。

「こういうわけだから……な。」

「良い良い、じゃが……なるべく早く済ませるのじゃぞ?妾達の腹と背中がくっつく前にな。」

「じゃあ先に行って待ってるからね~?」

 そしてカミル達は私とノノを中庭に残し、城の中へと入っていった。 
 その姿を見送って一つ大きく息を吐き出していると……。

「ピィ~~~ッ!!」

 特徴的な鳴き声を発しながらピッピがこちらへと向かってきた。

「あぅ!?」

 ノノはそれにとても驚いてしまったようですぐに私の後ろに隠れてしまった。

「あ、そういえばノノに紹介するの忘れてたな。この子はこの城でペットとして飼っているコカトリスのピッピだ。」

「ピィ~?」

 ピッピはこの城の新たな住人となったノノのことを見て首をかしげている。

「ピッピ、この子はノノ。私達の新しい家族だ。カミル達みたいに強い力を持ってるわけじゃないから驚かしたり、過度なじゃれつきは控えるんだぞ?」

「ピッ!!」

 ビシッとまるで敬礼するような姿勢をとり、わかったということを体全身でアピールするピッピ。いったいどこでそんなポーズを覚えたのだろうか。
 ……まぁわかってくれたのなら何よりだ。

「このピッピの他に後一匹……モーモーってペットもいるんだけど、その子はまた後で紹介するよ。」

 後でまた牛乳を絞りに来ないといけないしな。そのときにノノには紹介しよう。

「あぅ~……あうっ!!」

 ピッピはノノの事が気に入ったようで、ノノの顔をペロペロとその長い舌で舐めている。当のノノは少し困っているようだが……。

「っと、さてそろそろ行かないと……ノノ、こっちだ。」

「あうっ!!」

 顔がピッピの唾液でベトベトになってしまったノノを抱えあげ、私は新しく出来たばかりの浴室へと足を運ぶのだった。
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