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第一章 龍の料理人
第99話
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街での用事を済ませて、城へと帰って来た私は一先ずカミル達の空腹を満たすため料理を作り始めた。ノノに野菜の洗いかた等を教えながら、ちゃくちゃくと作業していると私はふとあることに気がついた。
「……そういえば今日はまだアベルが来てないな。」
いつもは食事の時間ともなれば私達のもとに現れるのだが……今日は魔王としての仕事が長引いているのだろうか?
「魔王様はお忙しい身じゃからな。こういう日もあるじゃろう。」
「普段アベルって何をしてるんだろうな?魔王の仕事ってどんなことをしてるか……カミル知ってるか?」
「うむ、ある程度は知っておる。魔王様の主な仕事は国の平和を保つことじゃ。」
「国の平和を保つ?」
「その通り、まぁ一重に平和を保つ……と言っても色々あるがの。例えば攻めて来た人間どもを倒したり、突然発生した災害級の魔物を討伐したりすることじゃな。」
なるほど……な。かなり大変そうだ。……ってかアベルぐらいの力がある者じゃないと務まらない仕事かもしれない。災害級の魔物ってやつは初耳だが、聞く限り恐らくかなり強い魔物の事なのだろう。
「大変な仕事なんだな。」
「まぁ魔物なんぞは相手にならんとしても……攻めて来た人間の方は特に厄介じゃな。皆殺しにするなら話しは別じゃが、魔王様は皆生かして返しておるからの~。」
まぁ確かに……殺すことよりも生かすことの方が遥かに難易度は高い。
「黙って殺しちゃえばいいのにね~。生かして返したら付け上がって戻ってくるだけなんだし……。」
「まぁ、魔王様には魔王様のお考えがあるのじゃ。そのお考えは妾達には到底分かり得ぬ。」
「……そうだよな。」
やる気にさえなれば簡単に殺せるだろうに、わざわざ生かして返すのはアベルなりの考えがあってのことなんだろう。
「う~ん、せっかくアベルの分の食材も買ったんだけどな。…………そうか、なら弁当にすればいいか。」
アベルの分は弁当にして、あの人に持っていってもらおう。多分呼べば出てくると思うしな。
私はカミル達の分の料理を作る傍らで、アベルの弁当を盛り付ける。そしてアベルの弁当が完成したところで私は自分の影に向かって声をかけた。
「シグルドさん、居ませんか?」
そう声をかけると、私の影からヌッ……と魔王の執事のシグルドが姿を現した。やっぱり影に潜んでいたんだな。
「これはこれはミノル様、私に何か御用でしょうか?」
「これをアベルに持っていって欲しいんです。」
私は出来立ての弁当をシグルドに手渡す。すると彼は首をかしげながら問いかけてきた。
「これは……いったい?」
「今日はアベルが食べに来れないみたいなんで……作った料理を盛り込んでおきました。」
「おぉ、なるほど……お心遣い感謝致します。では温かいうちに魔王様に手渡して参ります。」
「よろしくお願いします。」
そして私に向かってペコリと一礼すると、シグルドは再び影の中へと消えていった。
◇
場所は変わり、魔族と人間の国を分かつ国境にて……
「魔王様、お疲れ様です。人間は皆撤退していきました。」
「あぁ、うん。君達もご苦労様……怪我人はいない?」
ボクはその辺の岩に背を預けながら、国境を警備している魔族の兵士長に問いかける。
「はい、魔王様のお力のお陰で今日も怪我人はおりません。全員無事です。」
「そっか……。」
怪我人無し……という報告にホッと胸を撫で下ろしながらも、ボクは心の底では少し残念な気持ちを抱いていた。というのも、今日はいつもよりも多くの人間の軍隊が攻め込んできて対処に時間がかかってしまった。今頃カミル達はミノルの料理を食べてるんだろうなぁ~……。
「……はぁ~。」
「魔王様?いかがいたしました?」
「あ、いや……何でもないんだ。ボクのことはいいから君達はもう休んで。」
「は、はい……失礼します。」
心配そうに問いかけてきた兵士長に休むように促す。そして兵士達が皆、監視所へと入っていったのを確認して再びボクは大きなため息を吐いた。
「はぁ~……お腹減ったなぁ~。」
ため息を吐くと、それと同時にボクのお腹から空腹の悲鳴が上がる。
でももう多分カミル達はご飯食べちゃってるだろうしな~。がっくりと項垂れていると、ボクの影の中に気配を感じた。
「あれ?シグルド、いるの?」
「はい、居りますよ。」
「今日はミノルの護衛を頼んでたはずだけど……。」
「それがですね、ミノル様にこちらを預かって参りました。」
そう言ってシグルドはボクに四角い箱を手渡してきた。手に持つとほのかに温かい。そして……とってもいい匂いがする。
「こ、これってもしかして?」
「はい、ミノル様が魔王様に……と料理を入れてくださいました。直ぐに持ってきましたのでまだ温かいかと。」
「やった……やったぁ!!もぅお腹ペッコペコだったんだよ~。何が入ってるのかな~♪」
四角い箱の蓋を開けると中には色んな料理が入っていた。中でもボクの目を引いたのは、ぷっくりと膨らんだ大きなお肉の塊。
「あはっ♪美味しそ~……それにこの匂い……もう我慢できないや、いっただっきまーす!!」
お肉の塊にかぶりつくと、じゅわっ……と肉汁が口いっぱいに溢れ、お肉の中からトロリとした物が零れ出してきた。それがいったい何なのかはわからないけど……とっても美味しい。
「ふわぁ~……美味しい。すんごいお腹減ってたから余計に美味しく感じちゃうね。後でお礼言っとかないとな~。」
味わいながらも、あっという間にミノルが作ってくれた料理は全てボクのお腹の中に収まってしまう。満腹になって満足していると、そんなボクにシグルドが声をかけてきた。
「魔王様、お礼を告げに行くのであれば今すぐに行くのがよろしいかと。」
「へ?どうして?」
「ちょうど今頃、カミル様達がミノル様が作ったお菓子を食べる頃ですので……。」
お菓子っ!!
「良し、じゃあ今すぐ行こう!!ボクもお菓子食べたいしねっ♪」
それにあの温かいお湯にも浸かりたいしね~。
空間に切れ目を入れて、ボクはそこに飛び込む。そしてミノル達が住む城へと向かうのだった。
「……そういえば今日はまだアベルが来てないな。」
いつもは食事の時間ともなれば私達のもとに現れるのだが……今日は魔王としての仕事が長引いているのだろうか?
「魔王様はお忙しい身じゃからな。こういう日もあるじゃろう。」
「普段アベルって何をしてるんだろうな?魔王の仕事ってどんなことをしてるか……カミル知ってるか?」
「うむ、ある程度は知っておる。魔王様の主な仕事は国の平和を保つことじゃ。」
「国の平和を保つ?」
「その通り、まぁ一重に平和を保つ……と言っても色々あるがの。例えば攻めて来た人間どもを倒したり、突然発生した災害級の魔物を討伐したりすることじゃな。」
なるほど……な。かなり大変そうだ。……ってかアベルぐらいの力がある者じゃないと務まらない仕事かもしれない。災害級の魔物ってやつは初耳だが、聞く限り恐らくかなり強い魔物の事なのだろう。
「大変な仕事なんだな。」
「まぁ魔物なんぞは相手にならんとしても……攻めて来た人間の方は特に厄介じゃな。皆殺しにするなら話しは別じゃが、魔王様は皆生かして返しておるからの~。」
まぁ確かに……殺すことよりも生かすことの方が遥かに難易度は高い。
「黙って殺しちゃえばいいのにね~。生かして返したら付け上がって戻ってくるだけなんだし……。」
「まぁ、魔王様には魔王様のお考えがあるのじゃ。そのお考えは妾達には到底分かり得ぬ。」
「……そうだよな。」
やる気にさえなれば簡単に殺せるだろうに、わざわざ生かして返すのはアベルなりの考えがあってのことなんだろう。
「う~ん、せっかくアベルの分の食材も買ったんだけどな。…………そうか、なら弁当にすればいいか。」
アベルの分は弁当にして、あの人に持っていってもらおう。多分呼べば出てくると思うしな。
私はカミル達の分の料理を作る傍らで、アベルの弁当を盛り付ける。そしてアベルの弁当が完成したところで私は自分の影に向かって声をかけた。
「シグルドさん、居ませんか?」
そう声をかけると、私の影からヌッ……と魔王の執事のシグルドが姿を現した。やっぱり影に潜んでいたんだな。
「これはこれはミノル様、私に何か御用でしょうか?」
「これをアベルに持っていって欲しいんです。」
私は出来立ての弁当をシグルドに手渡す。すると彼は首をかしげながら問いかけてきた。
「これは……いったい?」
「今日はアベルが食べに来れないみたいなんで……作った料理を盛り込んでおきました。」
「おぉ、なるほど……お心遣い感謝致します。では温かいうちに魔王様に手渡して参ります。」
「よろしくお願いします。」
そして私に向かってペコリと一礼すると、シグルドは再び影の中へと消えていった。
◇
場所は変わり、魔族と人間の国を分かつ国境にて……
「魔王様、お疲れ様です。人間は皆撤退していきました。」
「あぁ、うん。君達もご苦労様……怪我人はいない?」
ボクはその辺の岩に背を預けながら、国境を警備している魔族の兵士長に問いかける。
「はい、魔王様のお力のお陰で今日も怪我人はおりません。全員無事です。」
「そっか……。」
怪我人無し……という報告にホッと胸を撫で下ろしながらも、ボクは心の底では少し残念な気持ちを抱いていた。というのも、今日はいつもよりも多くの人間の軍隊が攻め込んできて対処に時間がかかってしまった。今頃カミル達はミノルの料理を食べてるんだろうなぁ~……。
「……はぁ~。」
「魔王様?いかがいたしました?」
「あ、いや……何でもないんだ。ボクのことはいいから君達はもう休んで。」
「は、はい……失礼します。」
心配そうに問いかけてきた兵士長に休むように促す。そして兵士達が皆、監視所へと入っていったのを確認して再びボクは大きなため息を吐いた。
「はぁ~……お腹減ったなぁ~。」
ため息を吐くと、それと同時にボクのお腹から空腹の悲鳴が上がる。
でももう多分カミル達はご飯食べちゃってるだろうしな~。がっくりと項垂れていると、ボクの影の中に気配を感じた。
「あれ?シグルド、いるの?」
「はい、居りますよ。」
「今日はミノルの護衛を頼んでたはずだけど……。」
「それがですね、ミノル様にこちらを預かって参りました。」
そう言ってシグルドはボクに四角い箱を手渡してきた。手に持つとほのかに温かい。そして……とってもいい匂いがする。
「こ、これってもしかして?」
「はい、ミノル様が魔王様に……と料理を入れてくださいました。直ぐに持ってきましたのでまだ温かいかと。」
「やった……やったぁ!!もぅお腹ペッコペコだったんだよ~。何が入ってるのかな~♪」
四角い箱の蓋を開けると中には色んな料理が入っていた。中でもボクの目を引いたのは、ぷっくりと膨らんだ大きなお肉の塊。
「あはっ♪美味しそ~……それにこの匂い……もう我慢できないや、いっただっきまーす!!」
お肉の塊にかぶりつくと、じゅわっ……と肉汁が口いっぱいに溢れ、お肉の中からトロリとした物が零れ出してきた。それがいったい何なのかはわからないけど……とっても美味しい。
「ふわぁ~……美味しい。すんごいお腹減ってたから余計に美味しく感じちゃうね。後でお礼言っとかないとな~。」
味わいながらも、あっという間にミノルが作ってくれた料理は全てボクのお腹の中に収まってしまう。満腹になって満足していると、そんなボクにシグルドが声をかけてきた。
「魔王様、お礼を告げに行くのであれば今すぐに行くのがよろしいかと。」
「へ?どうして?」
「ちょうど今頃、カミル様達がミノル様が作ったお菓子を食べる頃ですので……。」
お菓子っ!!
「良し、じゃあ今すぐ行こう!!ボクもお菓子食べたいしねっ♪」
それにあの温かいお湯にも浸かりたいしね~。
空間に切れ目を入れて、ボクはそこに飛び込む。そしてミノル達が住む城へと向かうのだった。
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