アナザーワールドシェフ

しゃむしぇる

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第一章 龍の料理人

第105話

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 鍛冶屋を後にした私達は、毎度お馴染みになりつつあるあの肉屋へと向かって歩いていた。

「今日はどんな肉が置いてあるかのぉ~たのしみじゃぁ~。」

「いっつもいろんなお肉があるものね。」

「珍しいのとかがあればいいんだけどな。」

 皆各々期待をしながら肉屋へと向かっていると、道の先にそれが見えてきたのだが……いつもと何か様子が違う。

「ん?何か妙な雰囲気だぞ?」

 というのも、焦ったように肉屋の店主であるシーラが店の前を行ったり来たりしているのだ。
 異様な雰囲気に疑問を覚えながらも、店へと向かって歩みを進めると、彼女がこちらに気がついた。

「あっ!!い、いらっしゃい……ませ。」

「何かあったのか?ずいぶん落ち着かないようだが?」

「そ、そのですね……こちらを見ていただければ……。」

「……?」

 彼女が指差した、いつもたくさんの肉が並んでいるケースの中には今日は一つも肉が並べられていなかった。

「なっ!?に、肉がないのじゃ!?」

 びったりと顔をガラス張りのケースにくっつけて絶望的な表情を浮かべるカミル。

「仕入れで何か問題でもあったのか?」

「そ、その~……実は今日到着する予定の仕入れ先の荷車が魔物に襲われちゃったらしくて……。」

「「あ゛?魔物?」」

 原因が魔物にあるとわかった瞬間にカミルとヴェルの二人の額に青筋が浮かぶ。

「で……品物が全く無いって状況か。」

「はい……せっかくいつもご贔屓にしてもらってるのにすみません。」

 ペコリと深く頭を下げ、シーラは私達に謝ってくる。

「構わない。まぁ、また今度品物が入ったら来るよ。」

「ありがとうございます!!」

 そして店を後にしようとしたところ、カミルとヴェルの二人が彼女に詰め寄っていた。

「お主、その不躾な魔物は何か聞いておるか?ん?」

「ちょっと教えてほしいんだけど~?私達そいつに用があるの。」

「あ……えと、確かベネノボアだったって聞いてます。」

 荷車を襲った魔物の名を聞いて二人は顔を見合わせると、ずんずんとこちらに歩いてきて私の手をとった。

「お!?ちょ……カミル?どこに行くんだ?」

「決まっておるじゃろ?今日の飯を狩りに行くのじゃ!!」

「狩りに行く……ってまさか。」

「ベネノボアを今日の飯にしてやるのじゃ~っ!!」

「ふふふっ……私達のお肉を奪った罪はその身をもって償ってもらわないとねっ?」

 だよなぁ~……。そうなると思ったよ。そのベネノボアとか言うやつを今日の飯にするのは一向に構わないが、その前に。

「ちょっと待ってくれよカミル。魔物の名前がわかってもどこにそいつがいるのか聞かないといけないんじゃないのか?」

「お、それもそうじゃな。頭に血が上ってすっかり忘れておったわ。おい主、肉を積んだ荷車はどこで襲われたのじゃ?」

「湖の近くの街道だったって聞いてます……。」

「湖……この近くで湖と言ったらあそこしか無いのぉ~。」

「前にキラーフィッシュを採ったところか?」

「うむ!!そうとわかれば今すぐ向かうのじゃ!!」

 まだ街中だと言うのにカミルは龍の姿に戻り、私のことを抱えて大きく羽ばたいた。
 そして初めてカミルと狩りを共にした湖へと勢いよく飛んでいくのだった。












 湖へと向かい飛んでいると、カミルが地上に何かを見付けたようだ。

「あそこに壊れた荷車があるのじゃ。」

「それが襲われた荷車で間違いなさそうだな。」

 すぐ先には湖も見える。カミルが目視している荷車が件の荷車で間違いないだろう。
 地上に降下して、その荷車に近付いてみると……凄惨な状況なのが見てとれた。

「酷いなボロボロじゃないか。」

 荷車はボロボロに破壊されており、辺りには木片が散らばっている。しかし、肝心の積み荷である肉は一切見当たらない。

「……肉は全部食われちゃったみたいだな。」

「くあぁぁぁっ!!許せん……どこじゃ……どこに行ったのじゃ!!」

 キョロキョロと辺りを見渡すが、辺りに魔物の気配はない。しかし、気配はないものの痕跡は残っていた。

「足跡がこっちに続いてるな……。」

 街道を逸れて湖の方へと大きな猪の足跡のようなものが続いている。

「カミル、その……なんだっけベネノボア?とか言うやつは湖の方に行ったみたいだぞ?」

「なんじゃと!?」

「ほら、ここに足跡がある。」

 私の足元にあった足跡をカミルに指差して教えあげると、彼女の視線は足跡の続く方へと向けられた。

「むっふっふ、痕跡を残していくとは愚かな魔物らしいのぉ~。今狩りに行ってやるのじゃ~っ!!」

 カミルがそう意気込んだ次の瞬間だった……。

 ズンッ…………。

「な、なんだ!?」

 湖の方でズン……と何か響くような音が聞こえた。それのせいで辺りの森にいた野鳥達が一斉に飛び立ってしまっている。

「どうやら何かあったらしいのぉ~。行くぞミノル!!」

 そしてカミルに引きずられて湖へとやって来ると、そこで待っていたのは……。

「ん?やぁ!!皆お揃いでこんなとこに何しに来たの?」

 頭の上に大きなたんこぶを作ってピクピクと痙攣している大きな猪と、右手をきゅっと握りしめたアベルがいた。
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