アナザーワールドシェフ

しゃむしぇる

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第二章 平和の使者

第135話

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 そして幾度か、座標をもとに転移する練習を繰り返しているうちに、行ったことがない場所でも地図をもとに転移すれば正確な場所に行けるようになった。

 それに全て付き合わされた私の苦労は言うまでもない。たまに変な場所に転移することがあって、魔物の巣のど真ん中に転移したり、あるときは空中だったり、またあるときは海中だったり……

 正直ここまでの道のりは散々だった。何度死を覚悟したことかわからない……。いや、マジで……。

 だけどまぁ、その甲斐あってアベルは地図さえあればどこでも行けるようになったから、良しとしよう。



 そして時は夜……月明かりもなく辺りは真っ暗だ。

「さて……じゃあ行こっか。」

「……何で私まで一緒にいかないといけないんだ?」

「当たり前じゃん!!君が一番人間に近い存在なんだし……それにこんな可愛いボク一人だと夜道で荒くれ者に襲われちゃうかもしれないでしょ?」

 少なくともアベルのことを襲おうとする荒くれ者は、五体満足で帰ることはできないだろうな。どちらかと言えばアベルの方が襲う側だと思うしな。

 と、そんなことを思っていると……

「む~……何か言いたげだね?」

「いいや?別になにも思ってないさ。さ、行くなら早く行こう。月明かりが隠れてるうちにな。」

「まぁ、いいや。それじゃあ……いくよ。」

 ピッ……とアベルが手を横に凪ぎ払うと空間にヒビが入り、何処かへと繋がった。
 もちろん予定地は人間の国の首都……王都だ。

 もし本当に勇者が監禁されているのであれば……シルヴェスターの目の届くところが一番可能性が高い。つまり、奴の根城である王都が一番有力なのだ。

「念のため入る前にボクたちに隠密の魔法をかけておくよ。」

 アベルがパチンと指を鳴らすと、私の体とアベルの体がキラキラした光で覆われた。

「これ、お互いには見えてるけど……他人からはボクたちの姿は見えない魔法ね。でも声とか物音は聞こえちゃうから、そこだけ注意して。」

「わかった。」

 便利な魔法だ。こんな魔法が現代に存在したら……どれだけの男児が喜んだだろうか……。
 いや、犯罪が増えるだけだな。やはり無い方がいい。

「良し……それじゃ行こ。」

 アベルに手を引かれ私は空間の切れ目の中に入った。











 そして空間の切れ目の出口から体を出すと、目の前に大きな城がそびえ立っていた。

「あれが王都の城らしいな。」

「うん、転移は成功だね。」

 さて、第一段階は成功だ。次にやることは……

「次は件の勇者が囚われている場所を探さないとな。」

「…………その必要は無いかも。」

 普通からそびえ立つ城の上の方を見上げるものだが、アベルはその下……つまり地下にずっと視線を送っていた。

「どういうことだ?」

「あのね、どうしても勇者と魔王って惹かれ合う性質があるんだ。勇者の強い気配を下から感じるんだよね。」

「なるほどな。じゃあ城の地下で決まりだな。」

 早速動こうとした時、アベルに手を引かれる。

「待ってミノル、でも……変なんだよ。」

「何が変なんだ?」

「その……勇者の強い気配も感じるんだけど、その他にも何人か弱い勇者の力をもった人間の気配を感じるんだ。」

「は!?」

 なんだ?つまり……勇者のなりそこないか、クローンみたいなのがいるってことか!?

「多分……本物の勇者は、強い気配の方だと思うけど。その他のはなんなんだろう……。」

「……その勇者もどきはアベルの気配を感じてる様子はあるのか?」

「いや、気が付いてるのは本物だけだね……ずっとこっちを見てるよ。」

「なら、何の問題もない。本物の勇者を連れ出して、その勇者もどきのことを聞き出してやればいい。」

 そこまでうまくいけばの話だがな。

「アベル、その勇者の気配を辿ることってできるか?」

「うん、できる。こっちだよ。」

 私はアベルの後ろについていく。城の周りには当然ながら武装した騎士のような人達が警備しているが、私達が目の前を通っても何の反応も見せない。
 本当にこの魔法というやつは良くできている。

「あそこ、あそこから地下に行けるみたい。勇者の気配もすんごい近くに感じる。」

 そう言ってアベルが指差した方には大きな一体の女神像があった。地下への階段は見当たらないが……いったいどうやって。

 悩んでいると、おもむろにアベルが女神像に両手を添えて……

「えいっ!!」

 バコォォォン!!

「なっ!?なにしてんだ!!」

 女神像に手を添えたアベルは、あろうことかそれを粉々に破壊してしまった。

 派手に音をならしてしまったせいで、周りでざわざわと衛兵たちの声が聞こえ始める。

「あはっ♪どうせ後は勇者を連れて逃げるだけだし~、ボクこういうめんどくさそうなのは苦手なんだよね~。……まぁまぁ、地下への入り口も見えたし?早く行こ~!!」

「はぁ……もうどうにでもなれ。」

 そしてアベルと共に女神像を破壊して現れた階段をひたすらに下っていくと、その先にはみすぼらしい牢屋があった。その中には痩せ細り、今にも死にそうになっている一人の女性がいる。

「あっ!!あの子が勇者で間違いないよ!!」

「わかった。」

 アベルが無理やり牢屋を抉じ開けて、中に入り彼女を助け私が抱き抱える。
 そしてすぐに脱出しようとしていたときだった。

「これはこれは……誰かと思ったら平和主義の魔王ではないですか?」
 
 私達の後ろからきらびやかな服を身に纏った、白髪の男性が現れた。彼の頭には大きな王冠が乗っかっている。

「お前がシルヴェスターだね?」

「ご名答です……それで?そのボロクズをどうしようというのですか?」

 ニヤニヤと笑いながらシルヴェスターは私が抱えている勇者を指差した。

「ボロクズって……この子はお前たちの勇者じゃないの!!」

「勇者?……はて、私の勇者はここにいますよ?」

 首をかしげながらもニタニタとした表情を崩さない彼の後ろから、私が抱えている女性と全く同じ容姿の武装した女性が何人も姿を現した。

「っ!!お前……まさかッ!!」

「ハハハハハ!!その表情……良いですねぇ~。そそりますよ。そう……そこの元勇者の力を使って、造ったんですよ。をね。」

「っ!!ミノル!!早くこっち!!」

 ぐいっとアベルに手を引かれ私は空間の裂け目へと引きずり込まれた。
 私が引きずり込まれる刹那……人工勇者と呼ばれていた一人がこちらに向かって剣を振っていたのが見えた。

 あと一歩遅かったから……私は死んでいたかもしれない。
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