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第三章 魔族と人間と
第154話
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一通りホムンクルスに関しての知識を頭に入れることができたので、禁書庫を立ち去ろうとしたときだった。
ボトッ……
そう鈍い音を立てて私の前に一冊の本が棚から落ちてきた。
「ん?」
この光景は何度か目にしたことがある。カミルの城の書庫でも2度……こんな風に私の前に本が落ちてきた。
「っ!!ミノル様!!」
「え…………。」
焦ったように叫ぶシグルドさん。しかし、その声が私に届いた刹那……本がひとりでに開きまぶしい光が溢れてきた。
「うっ……。」
本の中から溢れた光に思わず目をつぶってしまう。
そして光が収まった後……私の頭の上にずっしりと重い何かの存在を感じる。
「貴様が姉様が送ってきた使いか。ずいぶん小さいのだな。」
突然頭の上から声が聞こえたかと思い、上を見上げるが……頭に乗せられている大きな何かによって遮られていて、声の主の顔を見ることができない。
ようやく眩んでいた視界がハッキリとしてくると、私の頭に乗っているものの正体がわかった。
「っ!!な、ち……近い!!」
自分の頭に乗せられていたのが、大きな胸……だったことに気がついた私は急いで距離をとる。
すると、目の前に大きな女性が立っていた。
「む、すまぬな。目の前に呼び出したが故の事故だ。」
よくよく上を見上げて女性の顔を見てみると、この女性もエルザの面影がある。身長は倍以上あるが……。
「姉様から聞いているかもしれないが、我は理を司る女神……セレーネだ。」
やはり思った通り……容姿は違えど顔が似てるんだよな。エルザの姉妹の女神達は。
「それで?何の用があって私を?」
「無論、貴様が姉様の力を授かり、我等と邂逅できるようになったから呼び出したまで。それで……姉様は達者か?」
「あぁ元気そうではあったぞ?」
「ふむ、そうかそうか、それはなりより。……それで……それでだな。」
「……?」
エルザが元気なことを聞くと、彼女はホッと胸を撫で下ろした。しかし、それよりももっと気になることがあるようで……。
「あ、姉様は怒ってなかったか?」
「私が会ったときはそんな素振りはなかったけどな。」
「そ、そうか!!な、なら良かった……姉様の怒りの拳は本当に……ほんと~にっ!!痛いのだ。」
私からそう聞いた彼女はホッと胸を撫で下ろした。
「そういえば、レラはどうなっている?もう会ったのだろう?あいつも達者でやっているか?」
「あ~……達者か達者でないかと言われると少し答えづらいんだが……。」
「なっ!?レラに何かあったのか!?」
セレーネは大きな手で私の肩を掴み、揺さぶりながら問いかけてくる。
「ちゃ……ちゃんと話すから、そう焦るなって!!」
「むっ!!す、すまない……我を忘れてしまっていた。」
ハッと我に返った彼女に解放された私は、今何が起こっているのかをセレーネに話し始めた。私の話を彼女は真剣な面持ちで聞いていた。
「と、いうわけだ。」
「ふむ、つまりレラの力がホムンクルスに奪われてしまっていると。それで今躍起になって取り返しているところだったか。なるほどな。」
納得した彼女に私はあることを問いかけた。
「女神なのに今起こっていることを把握できないのか?」
「ぐ……い、痛いところを突くな貴様。我だって下界のことを把握したいとは思っている。だが、我等は女神。普通は下界に干渉することは許されん立場なのだ!!故に我は、今代の魔王の力の源でしかない!!」
「でもレラは普通に私の前に現れてたぞ?」
「レラは自由奔放過ぎるのだ!!まったく、下界に降りたら理が崩れるとあれほど言ったのに我の言葉を無視して……。」
それからずっと私はセレーネのレラへの愚痴に付き合わされてしまった。しかし、時折彼女は愚痴を言いつつもレラのことを心配しているようだった。
それが彼女の本心なのだろう。
「……っと、少し話しすぎたか。我としたことが熱くなってしまった。」
「いや、問題ない。充分にあんたがレラのことを思ってるってことは伝わったよ。」
「なっ!?そ、そういうわけではないぞ!!わ、我はただ……。あぁもう!!この話はここでお終いだ。」
半ば強引に話に区切りをつけると、彼女は私にむけて言った。
「次に貴様の元にレラが現れ、レラがもし……天界に戻る意思を固めていたら、貴様の力で勇者と魔王の力を混ぜろ。それで我等は天界へと戻れる。我はしっかりと伝えたぞ!!我が下界に干渉するのはこれっきりだ。」
「あ、ちょっとまっ…………。」
私の制止の言葉も届かず、彼女がパタン……と本を閉じるような動作をしたと思った次の瞬間だった。
「っ!!」
「ミノル様!!」
次の瞬間には私はさっきまでいた禁書庫へと戻ってきていた。そして私の前には全ページが白紙の本が一冊落ちていた。
「お体に異常はございませんか?」
「あ……え、えぇ。だ、大丈夫です。」
「ほっ……安心いたしました。何も効果のない本で助かりました。」
シグルドさんはそっと落ちていた本を棚へと戻す。
そして私は禁書庫を後にしたのだった。
ボトッ……
そう鈍い音を立てて私の前に一冊の本が棚から落ちてきた。
「ん?」
この光景は何度か目にしたことがある。カミルの城の書庫でも2度……こんな風に私の前に本が落ちてきた。
「っ!!ミノル様!!」
「え…………。」
焦ったように叫ぶシグルドさん。しかし、その声が私に届いた刹那……本がひとりでに開きまぶしい光が溢れてきた。
「うっ……。」
本の中から溢れた光に思わず目をつぶってしまう。
そして光が収まった後……私の頭の上にずっしりと重い何かの存在を感じる。
「貴様が姉様が送ってきた使いか。ずいぶん小さいのだな。」
突然頭の上から声が聞こえたかと思い、上を見上げるが……頭に乗せられている大きな何かによって遮られていて、声の主の顔を見ることができない。
ようやく眩んでいた視界がハッキリとしてくると、私の頭に乗っているものの正体がわかった。
「っ!!な、ち……近い!!」
自分の頭に乗せられていたのが、大きな胸……だったことに気がついた私は急いで距離をとる。
すると、目の前に大きな女性が立っていた。
「む、すまぬな。目の前に呼び出したが故の事故だ。」
よくよく上を見上げて女性の顔を見てみると、この女性もエルザの面影がある。身長は倍以上あるが……。
「姉様から聞いているかもしれないが、我は理を司る女神……セレーネだ。」
やはり思った通り……容姿は違えど顔が似てるんだよな。エルザの姉妹の女神達は。
「それで?何の用があって私を?」
「無論、貴様が姉様の力を授かり、我等と邂逅できるようになったから呼び出したまで。それで……姉様は達者か?」
「あぁ元気そうではあったぞ?」
「ふむ、そうかそうか、それはなりより。……それで……それでだな。」
「……?」
エルザが元気なことを聞くと、彼女はホッと胸を撫で下ろした。しかし、それよりももっと気になることがあるようで……。
「あ、姉様は怒ってなかったか?」
「私が会ったときはそんな素振りはなかったけどな。」
「そ、そうか!!な、なら良かった……姉様の怒りの拳は本当に……ほんと~にっ!!痛いのだ。」
私からそう聞いた彼女はホッと胸を撫で下ろした。
「そういえば、レラはどうなっている?もう会ったのだろう?あいつも達者でやっているか?」
「あ~……達者か達者でないかと言われると少し答えづらいんだが……。」
「なっ!?レラに何かあったのか!?」
セレーネは大きな手で私の肩を掴み、揺さぶりながら問いかけてくる。
「ちゃ……ちゃんと話すから、そう焦るなって!!」
「むっ!!す、すまない……我を忘れてしまっていた。」
ハッと我に返った彼女に解放された私は、今何が起こっているのかをセレーネに話し始めた。私の話を彼女は真剣な面持ちで聞いていた。
「と、いうわけだ。」
「ふむ、つまりレラの力がホムンクルスに奪われてしまっていると。それで今躍起になって取り返しているところだったか。なるほどな。」
納得した彼女に私はあることを問いかけた。
「女神なのに今起こっていることを把握できないのか?」
「ぐ……い、痛いところを突くな貴様。我だって下界のことを把握したいとは思っている。だが、我等は女神。普通は下界に干渉することは許されん立場なのだ!!故に我は、今代の魔王の力の源でしかない!!」
「でもレラは普通に私の前に現れてたぞ?」
「レラは自由奔放過ぎるのだ!!まったく、下界に降りたら理が崩れるとあれほど言ったのに我の言葉を無視して……。」
それからずっと私はセレーネのレラへの愚痴に付き合わされてしまった。しかし、時折彼女は愚痴を言いつつもレラのことを心配しているようだった。
それが彼女の本心なのだろう。
「……っと、少し話しすぎたか。我としたことが熱くなってしまった。」
「いや、問題ない。充分にあんたがレラのことを思ってるってことは伝わったよ。」
「なっ!?そ、そういうわけではないぞ!!わ、我はただ……。あぁもう!!この話はここでお終いだ。」
半ば強引に話に区切りをつけると、彼女は私にむけて言った。
「次に貴様の元にレラが現れ、レラがもし……天界に戻る意思を固めていたら、貴様の力で勇者と魔王の力を混ぜろ。それで我等は天界へと戻れる。我はしっかりと伝えたぞ!!我が下界に干渉するのはこれっきりだ。」
「あ、ちょっとまっ…………。」
私の制止の言葉も届かず、彼女がパタン……と本を閉じるような動作をしたと思った次の瞬間だった。
「っ!!」
「ミノル様!!」
次の瞬間には私はさっきまでいた禁書庫へと戻ってきていた。そして私の前には全ページが白紙の本が一冊落ちていた。
「お体に異常はございませんか?」
「あ……え、えぇ。だ、大丈夫です。」
「ほっ……安心いたしました。何も効果のない本で助かりました。」
シグルドさんはそっと落ちていた本を棚へと戻す。
そして私は禁書庫を後にしたのだった。
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