アナザーワールドシェフ

しゃむしぇる

文字の大きさ
173 / 200
第三章 魔族と人間と

第172話

しおりを挟む
 
「ん~!!今日も良い運動になったのじゃ~。」

「ね~?今日のはちょっと歯応えあったし~、思いっきり魔法を使えて楽しかったわ。」

 私とノノの事を抱えて運んでくれているカミルとヴェルの二人がスッキリしたような顔で言った。 

 彼女達は今さっき、魔物退治を終えて帰って来たところだった。

「二人とも……ちょっと痩せた?」

 私達と共に飛んでいるマームが二人の姿を見てポツリと問いかけた。

「うむ、無駄な肉が少し落とされたやもしれんな。」

「今までずっと、食っちゃ寝~の生活を続けてたからね~。」

 確かにマームの言うとおり、少し彼女達は痩せたかもしれない。
 ……ただ、この龍の状態の話だが。普段の人間のような姿ではまったく変化は感じられないような気がする。

「マームも太らぬように気を付けるのじゃぞ?」

「大丈夫……私はいっつも動いてるから。」

 キリッとした表情でマームは言う。

「それに……まだまだ成長期。だからお肉は全部ここにつく……はず。」

 マームは未だ絶壁と言っても過言ではない自身の胸を指差して言った。
 ちなみに……服を着ててもわかるんだが、ノノの方が多分……。

 大きく胸を張る彼女に一同が哀れみの視線を送るなか、話題を変えようとカミルが口を開いた。

「そういえば……妾達が相手をした、ホムンクルスどもはどうするのじゃ?」

「一応目覚めさせた分は魔王城で仕事をしてもらってるぞ。と言ってもまだまだたくさん残ってるんだけどな。」

 まったく、どうやってあんなにホムンクルスを産み出したんだか……。いちいち魔力をおきかえるこっちの身にもなってくれ。
 十体ぐらいで魔力が底をつくんだぞ。

 ちなみにアベル曰く、未だにオリジナルのノアとホムンクルスを間違えることがあるのだとか……。最近は服で見分けをつけるために様々な服を買い漁っているらしいが。

「妾の城もあれだけいれば管理も問題ないからのぉ~……。」

 もっぱら、最近のカミルの城は毎日ノアのホムンクルスが清掃を行っているため、常にピカピカだ。

「そういえば……彼女達の様子はどうなんだ?」

「相変わらずじゃな。命令されたことをただひたすらにこなすだけじゃ。」

「ふむ……。」

 以前カミルは彼女達に自我を芽生えさせられれば……と話していたが、その課題はどうやら未だ解決できていないらしい。
 難しい問題だからな、仕方ないな。……とそう思っていたとき、カミルがふと思い出したように言った。

「じゃが、最近……ピッピとモーモーと戯れておることがあるのじゃ。」 

「あ、それ私も見たわよ?あの子達結構懐いてるみたいじゃない。」

「ほぉ?」

 もしかすると……ピッピとモーモーが彼女達の自我を芽生えさせるきっかけになるか?

「城の掃除はきちんとしておるから、何も言わずに見守っていたのじゃが……。」

「あぁ、見守ってた方がいいかもしれない。もしかすると……もしかするからな。」

 だが、仮にもし……自我が芽生えたらどうなるんだ?

 …………ヤバイ、かなり哲学的なことになりそうな予感。生憎哲学は……理解できないものが多過ぎて、ほぼ知識がない。

 自我を持たないものが自我を持った結果……は正直なところかなり怖いところではある。
 どんな自我を持つのか……まったく予想ができない。

 しかし、ピッピ達と戯れてるってことは……ある程度優しい感情を持ったりするのだろうか?
 なんか、どこかで聞いた話だが……精神治療には愛らしい動物が効果的だとか、あっちの世界では耳にしたことがあるし。

 ひとまず様子見をしていくしかないな。仮に抱く自我が優しいものであると信じて……な。

「そうじゃな……っと見えてきたのじゃ~。」

 そんなことを話していると、私達の前に白一色の街が見えてきた。今回の目的地であるウルジアだ。

「大きなお魚市場……楽しみですお師様!!」

「私は葡萄……?が楽しみ。美味しかったから……蜜の原料にしても良いかも。」

「そういえば二人はここに来るのは初めてだったな。」

 前は水龍のウルがいるから……と連れてこられなかったからな。今日は思いっきり楽しんでもらいたいものだ。

「またあのドデカイ魚があると良いのぉ~。」

 空を飛びながら口元からよだれを垂らしそうになっているカミル。

「捌くの大変だったんだぞあれ……。」

 本格的に鮪包丁みたいなのを私も作ってもらおうか。流石に何回もあれを出刃包丁で下ろす気にはなれない。
 これは後でまた、あの鍛冶屋と相談してこないといけなさそうだな。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき
ファンタジー
冒険者ナザルは油使い。 魔力を油に変換し、滑らせたり燃やしたりできるユニークスキル持ちだ。 その特殊な能力ゆえ、冒険者パーティのメインメンバーとはならず、様々な状況のピンチヒッターをやって暮らしている。 実は、ナザルは転生者。 とある企業の中間管理職として、人間関係を良好に保つために組織の潤滑油として暗躍していた。 ひょんなことから死んだ彼は、異世界パルメディアに転生し、油使いナザルとなった。 冒険者の街、アーランには様々な事件が舞い込む。 それに伴って、たくさんの人々がやってくる。 もちろん、それだけの数のトラブルも来るし、いざこざだってある。 ナザルはその能力で事件解決の手伝いをし、生前の潤滑油スキルで人間関係改善のお手伝いをする。 冒険者に、街の皆さん、あるいはギルドの隅にいつもいる、安楽椅子冒険者のハーフエルフ。 ナザルと様々なキャラクターたちが織りなす、楽しいファンタジー日常劇。

処理中です...