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5.仕事編
5.片付け
「クルーズ様!こちらの本は、この棚に並べますね」
私が魔術部に所属することになって、まず始めたのは、もちろん、掃除だ。
「ちょっ!ちょっと!やめてーー!僕は、どこに何があるのか、この状態で把握してるんだ!それを勝手に動かされると分かんなくなるでしょ!」
クルーズ様は相当、抵抗された。
「そんなこと言ってらっしゃるから、こんな状態になって、新しい研究者も入れられないのではないですか?クルーズ様は天才なのですから、どこに何があるのか、把握し直せばよいことですよ!」
そう、クルーズ様は天才らしいのだ。
クルーズ様は、元は伯爵家の次男で、成人後は商売でもしようかというところをイリス第一王子に是非にと言われて、今の地位があるらしい。
クルーズ様曰く、“嫌々”公爵の爵位を与えられ、軍師となった、そうだ。
その代わりに、好きな研究ができるよう魔術部を与えられたと聞いた。
「クルーズは、とにかく頭がすこぶるキレる。しかし、人付き合いはそこまで上手くない。だから、クルーズとうまくやれる者をイリス殿下がうまく配置しているんですよ」
と、アスラン様が言っていた。
「そんなわがまま、許されるのですか?」
私にはよくわからない世界だ。
「クルーズの軍師としての才も、右に出る者はいないのです。誰も考えつかないようなことを常に考えています。天才とはこういうものなのか、と僕は思い知らされましたよ。だから、国王もクルーズ関連の人事はイリス殿下に一任されているとお聞きしています」
アスラン様は、なんだかんだ言って、クルーズ様を尊敬されている。
「あれ!??」
色々と考え事をしながら片付けていたら、いつの間にかクルーズ様が魔術部から居なくなってしまった。
「はぁ、まただわ…」
クルーズ様は、私の片付けが始まって暫くすると、すぐにあそこに行ってしまう。
「はぁ…私、王城をウロウロするのは気が引けるんですけど…」
かといって、勝手に片付けていくと、どこに何があるか分からない、とか、これはこっちに置いてほしかった、とか、後でクルーズ様が煩く言ってくるのだ。
「仕方ない、行きましょうか」
私は、魔術部の部屋を出て、ある場所に向かった。
目立たないように、廊下の端を歩く。
トントントンっ!
目的の場所に着いて、ドアを軽く叩いた。
「どうぞー」
アスラン様の優しいお声が聞こえた。
そう、ここはアスラン様の執務室。
「すいません…クルーズ様はいらしゃいますか?」
私は、そっとドアを開けた。
「ルシンダ、来ましたね。入って座って」
アスラン様にそう促されて、執務室に入った。
そこには、アスラン様とクルーズ様、そしてもう一人の男性がいらっしゃった。
とても高貴な方だと、私でもすぐに分かった。
「も、申し訳ございません。お邪魔いたしました。クルーズ様にご用がありましただけですので、すぐに戻ります」
私は焦った。
「あなたが、噂のルシンダ殿ですね。いや、ターリー伯爵夫人と呼ぶべきかな」
その高貴な方は、わざわざソファから立ち上がって、私の前まで来られた。
その方の背は高く、綺麗に整えられた黒髪に紫色の瞳。優しそうな面持ちなのに、どこか鋭さを感じる。
そして、アスラン様に負けず劣らずの
美形!!
「申し遅れました。私は、アスラン・ターリー伯爵の妻、ルシンダ・ターリーと申します。現在、魔術部に所属しておりまして…」
私が焦って挨拶を始めると、
「大丈夫大丈夫!知ってるから!」
その高貴な方が、突然、フランクな口調になった。
「あの…」
「殿下。お人が悪いですよ」
アスラン様が間に入ってくれた。
「ごめんごめん。思ってた以上に可愛らしい方で、反応が見たくなったんだよ。私は、イリス第一王子です。ルシンダ殿、お噂はこの二人とノースラントから聞いてますよ」
「イリス殿下!し、失礼をいたしました」
私は頭を下げた。
「頭を上げて。ルシンダ殿。ここでは堅苦しいのはなしね」
イリス殿下はそう言ってくれたが、そんなことは無理である。
「ルシンダ、いいんだよ。こっちにおいで」
アスラン様が、そう私に声をかけてくれた。
私は、居た堪れなくなって、コソコソっとアスラン様の側に行った。
「だいたい、あなた達は何かあったらここに逃げてくるの、もういい加減やめてくれませんかね??」
アスラン様が、イリス殿下とクルーズ様に言った。
何かあったら、って、クルーズ様は片付けをしていただけでは??
私が魔術部に所属することになって、まず始めたのは、もちろん、掃除だ。
「ちょっ!ちょっと!やめてーー!僕は、どこに何があるのか、この状態で把握してるんだ!それを勝手に動かされると分かんなくなるでしょ!」
クルーズ様は相当、抵抗された。
「そんなこと言ってらっしゃるから、こんな状態になって、新しい研究者も入れられないのではないですか?クルーズ様は天才なのですから、どこに何があるのか、把握し直せばよいことですよ!」
そう、クルーズ様は天才らしいのだ。
クルーズ様は、元は伯爵家の次男で、成人後は商売でもしようかというところをイリス第一王子に是非にと言われて、今の地位があるらしい。
クルーズ様曰く、“嫌々”公爵の爵位を与えられ、軍師となった、そうだ。
その代わりに、好きな研究ができるよう魔術部を与えられたと聞いた。
「クルーズは、とにかく頭がすこぶるキレる。しかし、人付き合いはそこまで上手くない。だから、クルーズとうまくやれる者をイリス殿下がうまく配置しているんですよ」
と、アスラン様が言っていた。
「そんなわがまま、許されるのですか?」
私にはよくわからない世界だ。
「クルーズの軍師としての才も、右に出る者はいないのです。誰も考えつかないようなことを常に考えています。天才とはこういうものなのか、と僕は思い知らされましたよ。だから、国王もクルーズ関連の人事はイリス殿下に一任されているとお聞きしています」
アスラン様は、なんだかんだ言って、クルーズ様を尊敬されている。
「あれ!??」
色々と考え事をしながら片付けていたら、いつの間にかクルーズ様が魔術部から居なくなってしまった。
「はぁ、まただわ…」
クルーズ様は、私の片付けが始まって暫くすると、すぐにあそこに行ってしまう。
「はぁ…私、王城をウロウロするのは気が引けるんですけど…」
かといって、勝手に片付けていくと、どこに何があるか分からない、とか、これはこっちに置いてほしかった、とか、後でクルーズ様が煩く言ってくるのだ。
「仕方ない、行きましょうか」
私は、魔術部の部屋を出て、ある場所に向かった。
目立たないように、廊下の端を歩く。
トントントンっ!
目的の場所に着いて、ドアを軽く叩いた。
「どうぞー」
アスラン様の優しいお声が聞こえた。
そう、ここはアスラン様の執務室。
「すいません…クルーズ様はいらしゃいますか?」
私は、そっとドアを開けた。
「ルシンダ、来ましたね。入って座って」
アスラン様にそう促されて、執務室に入った。
そこには、アスラン様とクルーズ様、そしてもう一人の男性がいらっしゃった。
とても高貴な方だと、私でもすぐに分かった。
「も、申し訳ございません。お邪魔いたしました。クルーズ様にご用がありましただけですので、すぐに戻ります」
私は焦った。
「あなたが、噂のルシンダ殿ですね。いや、ターリー伯爵夫人と呼ぶべきかな」
その高貴な方は、わざわざソファから立ち上がって、私の前まで来られた。
その方の背は高く、綺麗に整えられた黒髪に紫色の瞳。優しそうな面持ちなのに、どこか鋭さを感じる。
そして、アスラン様に負けず劣らずの
美形!!
「申し遅れました。私は、アスラン・ターリー伯爵の妻、ルシンダ・ターリーと申します。現在、魔術部に所属しておりまして…」
私が焦って挨拶を始めると、
「大丈夫大丈夫!知ってるから!」
その高貴な方が、突然、フランクな口調になった。
「あの…」
「殿下。お人が悪いですよ」
アスラン様が間に入ってくれた。
「ごめんごめん。思ってた以上に可愛らしい方で、反応が見たくなったんだよ。私は、イリス第一王子です。ルシンダ殿、お噂はこの二人とノースラントから聞いてますよ」
「イリス殿下!し、失礼をいたしました」
私は頭を下げた。
「頭を上げて。ルシンダ殿。ここでは堅苦しいのはなしね」
イリス殿下はそう言ってくれたが、そんなことは無理である。
「ルシンダ、いいんだよ。こっちにおいで」
アスラン様が、そう私に声をかけてくれた。
私は、居た堪れなくなって、コソコソっとアスラン様の側に行った。
「だいたい、あなた達は何かあったらここに逃げてくるの、もういい加減やめてくれませんかね??」
アスラン様が、イリス殿下とクルーズ様に言った。
何かあったら、って、クルーズ様は片付けをしていただけでは??
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