たいして好みでは無い、と言われたので婚約解消した令嬢は、伯爵様と交渉する。

らりささ

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5.仕事編

6.執務室

 ドンドンドン!

執務室のドアを強く叩く音が響いた。

「イリス殿下!いらっしゃるのは分かっております!入りますよ!」
強い口調で、アスラン様の執務室にとある男性が入ってこられた。

「殿下!やっぱりここでしたか!まったく!」
「…ばれていたか…少し、休憩していただけなのに…」
「少しではないではないですか!?何時間ここにいらっしゃるのですか?!」

「ブライアン殿。殿下を早く連れて帰ってくださいよ。私の仕事にも支障が出ています。ちなみに、クルーズ様も連れて行って頂けるとありがたい」
アスラン様が、その方に言った。

その方は、イリス殿下の側近のお一人で、ブライアン侯爵様である。

「あら、そちらの方は…」
ブライアン侯爵様が私に気づいて、アスラン様に尋ねられた。
「あ、私の妻のルシンダです。挨拶はいりません。はやくお二人を連れて帰ってください」
アスラン様は、素っ気なく答えた。

 な、なんて??!

「あ、アスラン様、ご紹介くださいませんか…?お願いいたします」
私は、丁寧に頼んだ。

「仕方ないですねー。僕は、あんまり男性陣に知られたくないんですよねーあなたのこと。もう、みんな距離が近すぎる!なんなんだ!ルシンダに慣れ慣れしすぎるんですよ!!」
アスラン様は、ご機嫌斜めだった。

そんなアスラン様を横目に、ブライアン侯爵様は私の前に立たれた。
ブライアン侯爵様は、茶色の髪に薄い茶色の瞳をしていた。歳は、30歳を過ぎたくらいだろうか。
「あなたが噂の伯爵夫人ですね。私は、ライド・ブライアン侯爵です。イリス殿下の側近であります。魔術部ともそれなりに関わり合いがありますので、そのうち打ち合わせでもいたしましょう」
「アスラン・ターリー伯爵の妻、ルシンダと申します。宜しくお願いいたします」
ブライアン侯爵様は丁寧に挨拶をしてくださった。
私も丁寧にご挨拶をした。

「それくらいでいいですか?とにかく!あのお二人を連れて帰ってください」
アスラン様がやけにブライアン侯爵様を急かす。

「はいはい。イリス殿下。お仕事が山積みです。行きますよ!クルーズ様も、打ち合わせがこの後ありますでしょう?!出席必須です。行きますよ!」
「えー!僕も?!聞いてないよ!(嘘)」
「あなたが、忘れるなんてことないでしょ。わがまま言わないでください」

 ブライアン侯爵様は大変そうだな…

「ルシンダ!僕を魔術部に帰してくれ!」
クルーズ様が、私に訴えてきた。

「クルーズ様、どうぞそちらの超重要案件を先に片付けて来てください」
私は、手を振ってお見送りをした。

「ルシンダ!私もそのうち魔術部に顔をだすからね。魔術部はもう少し、実用的にならなければいけないしね」
イリス殿下が去り際に言った。

「はい。宜しくお願いいたします」
私はそう言って頭を下げた。

嵐のような御三方が去っていって、アスラン様の執務室が嘘のように静かになった。

「はぁ…」
アスラン様がため息をついた。

 お疲れなのだな。

私はそう思い、魔術部に戻ろうとした。

ところが、
「やっと二人きりになりましたね」
アスラン様が、そう言って椅子から立ち上がった。
「そ、そうですね」
私は、予想外のお言葉に何だかドキドキしてきた。

「あら?良からぬこと考えてます?」
アスラン様のお顔が、私の眼の前まで降りてきた。

 あ、相変わらず、お顔が…良い…!!

「か、考えてません!帰ったら、二人きりの時間がずっとあるじゃないですか。今さら…」
私は、アスラン様のお顔を直視できなくなって、目を逸らしてしまった。

「今さら?そんな顔しておいて、今さら、とか言うんですか?」
アスラン様が、私の耳を触った。

私は、どうやら耳まで真っ赤になっていたようだった。

「し、仕事に戻ります!」
私はそう言って、急いでアスラン様の執務室を出た。

「あとで魔術部まで迎えに行きますからね!」
後ろで、アスラン様のお声が聞こえた。

恥ずかしくて、振り向けなかった。

 既に夫婦なのに…何やってんだか、私は…トホホ
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