少年の脳を焼くリナさん

豚さん

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第4話 夏の残像

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真昼の公園は、熱の膜に包まれていた。
空気が震えるほどの陽射しの中、
少年はベンチのそばでしゃがみ込み、
手にしていたペットボトルを落としてしまった。

「……暑い……」

声にならない呟きとともに、
視界がぼやける。
そのとき、影がすっと差しこんだ。

「あらあら大丈夫? 顔が真っ赤よ」

柔らかな声。
次の瞬間、彼の前にひざをついた女性がいた。

アッシュブロンズの髪が光を受けて揺れる。
薄手のライトクリーム色のブラウスが、
木漏れ日の中で淡く透けるように光った。
襟元にはレース、胸元には小さなリボン。
膝丈のミントグリーンのスカートが、風にふわりと踊る。

リナ・ザーデル
ドイツからの留学生で、
この町の大学に通っているという。

彼女はカバンから新しい水のボトルを取り出し、
少年に差し出した。

「少しずつ、飲んでね。」

少年は震える手でそれを受け取り、喉を鳴らす。
冷たい水が体を通り抜け、
視界がゆっくりと戻ってくる。

「……ありがとう、優しいお姉ちゃん」

その言葉に、リナは微笑んだ。
少しだけ、寂しげに。

そして、木陰の光の粒を見つめながら、
囁くように言った。

「Du bist wie der Sommer selbst.」
(あなたは、夏そのものです)

その瞬間、少年の中で時間が止まった。
意味はわからなかった。
けれど、その声が、音よりも温度として焼きついた。

胸の奥が熱くなり、息をするのを忘れる。
脳の奥で、何かが静かに焦げつくような感覚。

――きっと、この瞬間を一生忘れない。

蝉の声が再び戻ったとき、
リナはすでに立ち上がり、
白い日傘を差して去っていった。

淡いスカートの裾だけが、
光と風の中でゆらゆらと揺れていた。

それは、永遠の一瞬だった。
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