2,027 / 2,046
最強の妖魔退魔師編
2010.渾身の一撃を放つ為に
しおりを挟む ソフィが『力』の開放を終えた後、今度は視線をシゲンの構えに向けた。
この世界では確かに強い人間達の存在が顕著に目立っているが、その中で『妖魔退魔師』と『妖魔召士』の二種類の戦闘スタイルが際立っている。
もちろん細かく分ければ『妖魔退魔師』側には、下位と呼べる『予備群』。そして『妖魔召士』には『退魔士』という風に分かれてはいるが、大まかに『剣士』と『魔法使い』というシンプルな分け方が出来るだろう。
この世界の者達にとっては、戦いの対象となる相手が魔族や同じ人間というわけではなく、明確に『敵』とされているのが『妖魔』である為、ソフィ達の世界と同じ認識で語られると語弊があるかもしれないが、それでも『戦闘』に関しては近接の役割を持つ剣士と『魔』に特化した『魔法使い』で間違いはない。
そしてソフィは特に『近接戦闘』を行う『剣士』が相手の方が戦いやすいと感じている。
それは有利不利の戦局面という意味ではなく、単にこれまでの過去の『勇者』達との戦いや、剣を扱う魔族と気が遠くなる程の年月を戦い抜いて来たからに他ならない。
もちろんソフィは、対『魔法使い』としての戦闘経験も豊富な方ではあるのだが、戦いの数は圧倒的に『近接戦闘者』の方が上であった。
そもそも大魔王ソフィを相手に同じ『魔法使い』として戦った場合、相手になるどころの騒ぎではなく、もう戦闘の開始時の準備段階の時点でソフィとは勝負にはならないのが常と言えた。
『魔法使い』として戦うソフィを相手にした場合、すでに戦闘開始時の時点で数多の『スタック』が用意されており、その一つ一つの『スタックポイント』の『魔力』でさえ、通常の『魔法使い』の数倍もあるのだ。
そして何よりも戦闘にならない最大の理由が、大魔王ソフィの持つ『特異』と『魔力吸収の地』という『魔法』の存在である。
大魔王ソフィという『魔法使い』に『魔法』を使えば、その全てが無力化されてしまうか、巻き直されて『魔法』そのものが使えなくなる。そして一度術中に嵌ってしまえば、根こそぎ『魔力』を奪われて、下手をすればソフィに対して『魔法』で攻撃した瞬間に、ソフィが何をせずとも勝手に『魔力枯渇』を引き起こしてそのまま絶命してしまう恐れも考えられる。
こういった理由から、大魔王ソフィを相手に戦う『魔法使い』の存在は、その実力が確かな者達ほどに、直接的な戦いを避けてしまい、なし崩し的に『剣士』や『魔法』を使わない『近接戦闘者』が多くなってしまったというわけである。
そしてそう言った理由もあり、今度は『近接戦闘者』と戦う事にも慣れてしまい、ソフィは『魔法使い』だというのにも拘らず、並の剣士や近接戦闘を行う者よりも、更に物理戦闘の面で達人と呼べる程に、戦術面に関しての動きを理解して身につけてしまっている状況にある。
だからこそ、ソフィはシゲンの構えから一体どのような攻撃を行うのか、それを戦う前から予め予測立てを行っていたというわけである。
――ソフィはこの世界で実際に『妖魔退魔師』と手を合わせた経験もある。
それは副総長のミスズであるが、これまでの経験豊富なソフィにしては珍しく、ミスズの戦いぶりに驚かされた。
構えとしては『突き』を主戦型とする『霞の構え』というものであったが、構えから実際にミスズが斬り込んできた時、そのあまりの速度にソフィは当初の計画(プラン)を捨てざるを得なくなり、咄嗟に『魔法』を放ってしまう程であった。
妖魔退魔師たちは単なる『近接戦闘集団』では収まらないと、大魔王ソフィは考えている。
今の基本となる中段の構えから果たして、どのように彼は変化させるのか。そしてどのような攻撃を繰り出すのかが気に掛かるソフィであった。
当然にこれが殺し合いであれば、こんな至近距離でソフィも悠長に待ちなどしないが、これはシゲンの己の威信を掛けた腕試しである以上は、それを踏まえた上でソフィも動かざるを得ない。
しかしそうであっても、ソフィはわざと被弾を許すわけではない。シゲンが想像以下の実力であった場合、ソフィは何の遠慮もなしに無力化して見せるつもりである。
これは後にも先にもたった一度だけのシゲンに与えられた、大魔王ソフィを相手に実力を確かめられる唯一の機会となる。
果たして、妖魔退魔師総長シゲンは大魔王ソフィという『近接戦闘者キラー』を相手に、どのような展開を齎すのであろうか――。
ゆらりとシゲンは腕を動かしながら、渾身の一撃をソフィに繰り出す為の準備を整い始めるのだった。
……
……
……
この世界では確かに強い人間達の存在が顕著に目立っているが、その中で『妖魔退魔師』と『妖魔召士』の二種類の戦闘スタイルが際立っている。
もちろん細かく分ければ『妖魔退魔師』側には、下位と呼べる『予備群』。そして『妖魔召士』には『退魔士』という風に分かれてはいるが、大まかに『剣士』と『魔法使い』というシンプルな分け方が出来るだろう。
この世界の者達にとっては、戦いの対象となる相手が魔族や同じ人間というわけではなく、明確に『敵』とされているのが『妖魔』である為、ソフィ達の世界と同じ認識で語られると語弊があるかもしれないが、それでも『戦闘』に関しては近接の役割を持つ剣士と『魔』に特化した『魔法使い』で間違いはない。
そしてソフィは特に『近接戦闘』を行う『剣士』が相手の方が戦いやすいと感じている。
それは有利不利の戦局面という意味ではなく、単にこれまでの過去の『勇者』達との戦いや、剣を扱う魔族と気が遠くなる程の年月を戦い抜いて来たからに他ならない。
もちろんソフィは、対『魔法使い』としての戦闘経験も豊富な方ではあるのだが、戦いの数は圧倒的に『近接戦闘者』の方が上であった。
そもそも大魔王ソフィを相手に同じ『魔法使い』として戦った場合、相手になるどころの騒ぎではなく、もう戦闘の開始時の準備段階の時点でソフィとは勝負にはならないのが常と言えた。
『魔法使い』として戦うソフィを相手にした場合、すでに戦闘開始時の時点で数多の『スタック』が用意されており、その一つ一つの『スタックポイント』の『魔力』でさえ、通常の『魔法使い』の数倍もあるのだ。
そして何よりも戦闘にならない最大の理由が、大魔王ソフィの持つ『特異』と『魔力吸収の地』という『魔法』の存在である。
大魔王ソフィという『魔法使い』に『魔法』を使えば、その全てが無力化されてしまうか、巻き直されて『魔法』そのものが使えなくなる。そして一度術中に嵌ってしまえば、根こそぎ『魔力』を奪われて、下手をすればソフィに対して『魔法』で攻撃した瞬間に、ソフィが何をせずとも勝手に『魔力枯渇』を引き起こしてそのまま絶命してしまう恐れも考えられる。
こういった理由から、大魔王ソフィを相手に戦う『魔法使い』の存在は、その実力が確かな者達ほどに、直接的な戦いを避けてしまい、なし崩し的に『剣士』や『魔法』を使わない『近接戦闘者』が多くなってしまったというわけである。
そしてそう言った理由もあり、今度は『近接戦闘者』と戦う事にも慣れてしまい、ソフィは『魔法使い』だというのにも拘らず、並の剣士や近接戦闘を行う者よりも、更に物理戦闘の面で達人と呼べる程に、戦術面に関しての動きを理解して身につけてしまっている状況にある。
だからこそ、ソフィはシゲンの構えから一体どのような攻撃を行うのか、それを戦う前から予め予測立てを行っていたというわけである。
――ソフィはこの世界で実際に『妖魔退魔師』と手を合わせた経験もある。
それは副総長のミスズであるが、これまでの経験豊富なソフィにしては珍しく、ミスズの戦いぶりに驚かされた。
構えとしては『突き』を主戦型とする『霞の構え』というものであったが、構えから実際にミスズが斬り込んできた時、そのあまりの速度にソフィは当初の計画(プラン)を捨てざるを得なくなり、咄嗟に『魔法』を放ってしまう程であった。
妖魔退魔師たちは単なる『近接戦闘集団』では収まらないと、大魔王ソフィは考えている。
今の基本となる中段の構えから果たして、どのように彼は変化させるのか。そしてどのような攻撃を繰り出すのかが気に掛かるソフィであった。
当然にこれが殺し合いであれば、こんな至近距離でソフィも悠長に待ちなどしないが、これはシゲンの己の威信を掛けた腕試しである以上は、それを踏まえた上でソフィも動かざるを得ない。
しかしそうであっても、ソフィはわざと被弾を許すわけではない。シゲンが想像以下の実力であった場合、ソフィは何の遠慮もなしに無力化して見せるつもりである。
これは後にも先にもたった一度だけのシゲンに与えられた、大魔王ソフィを相手に実力を確かめられる唯一の機会となる。
果たして、妖魔退魔師総長シゲンは大魔王ソフィという『近接戦闘者キラー』を相手に、どのような展開を齎すのであろうか――。
ゆらりとシゲンは腕を動かしながら、渾身の一撃をソフィに繰り出す為の準備を整い始めるのだった。
……
……
……
10
お気に入りに追加
446
あなたにおすすめの小説
異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!
コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。
何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。
本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。
何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉
何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼
※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。
#更新は不定期になりそう
#一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……)
#感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?)
#頑張るので、暖かく見守ってください笑
#誤字脱字があれば指摘お願いします!
#いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃)
#チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

素人作家、「自作世界」で覚醒する。~一人だけ「縛り(もしかしてチート?)」な設定で生きてます~
永礼 経
ファンタジー
自分だけどうしてか魔法を習得しない!? スキルも習得しない!? でも、パラメータだけは異常数値で伸びている!?そんな、「縛り(チート?)」な設定で冒険することに。
滑川夕日は趣味でWEB小説を書いている青年だ。ようやくのことで完結まで書き上げた一つの物語の最終話を投稿した後、疲れのあまり、深い眠りに落ちてしまう。と、思ったら、全く見ず知らずの街の真ん中に自分が立っているではないか!?
周囲には人ならないものが歩き回っている中、夕日は牛男に絡まれてしまう。ただ状況に当惑しているだけの夕日を助けてくれた若者、ルイジェン。ここは藁をもすがる気持ちで彼に助けを求めると、『魔酔い子』と勘違いされ、連れて行かれたのは国際魔法庁。
事情を説明した夕日だが、イマイチ伝わらず、結局成り行きで冒険者登録することに!?
冒険者ギルドに連れて行かれ、冒険者登録をする中で、この世界が自分が描いた物語の完結から1000年後の世界だと知ることになる。夕日はユーヒ・ナメカワとして冒険者となり、まずは創生神エリシアと対話することを目指すことにする。
これは、自分の描いた世界の1000年後に生きることになった一人の青年の、愛と感動と涙の物語(となるはず)である。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる