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1日目

第21話 交渉材料

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 床に手枷で繋がれていた元奴隷達を
 シオンが手枷を紙の様に破り解放する。
 
 槍持ちを含め、総勢17人の元奴隷。
 下は8才から、
 上は17才の少年少女だった。

「あの……」

 槍を構えていた少年奴隷……、
 フランク=レインが話しかけてきた。

「何か用か?」

「僕はフランク=レイン。
 助けていただいた事、
 感謝しています」

「あぁ、別にいいよ。
 ファルシオンだ、シオンでいいぜ。
 助けたのは……、
 まぁ、モノのついでだから」

「ところで、
 先程の手枷は魔操術でしょうか?」

「あ、いや……」

「それに、このステータス……」

 フランクは空中に浮いているパネルを指した。
 
「あぁ、悪いな。
 槍下ろさねぇから、
 言語が違うのかと思って確認したんだ」

「先程の魔法もそうでしたが、
 僕が奴隷の間に魔法は
 随分進歩したのですね」

「いや、これは……」

 ソコまで言いかけ、
 国王に言われた事を漸く……、
 漸く思い出す。
 そう、自重……。

「……」

「どうしました?」

「いや、ちょっとな……。
 あぁ、そうだ。
 その麻袋みたいな服だと辛いだろ。
 これでも着とけ」

 導具鞄から、
 その場にいた少年少女17人分の
 衣類を取り出す。
 衣類と言っても、
 レトロなRPGの布の服である。
 茶色い長ズボンと白い長袖シャツ。
 下着等は無い。

 久々……もしくは、
 初めての布の衣類だったのか、
 皆喜んでいる。
 中には歓喜し泣き出す少女もいた。


 そんな少年少女の姿に見向きもせず、
 一人考え込むシオン……。

-村に対して色々な魔法を使っちまった。
-あれは、まぁ俺だとは
-言わなきゃわからんだろうが、
-コイツらの前で使ったのは、
-隷属解除くらいか?
-いや、音消しも使ったな……。
-でも、それくらいなら
-こっちの魔法でも、誤魔化せ……
-だから、ステータス開示は
-どう説明すんだよ!

 さて、国王も溜息をついていたが、
 この世界にはアイテムボックスや
 拡張収納の様な魔法はない。

 導具鞄、これも
 自重しないといけない部分なのだが
 シオンは気付いていない。

 その上、渡した衣類にも問題がある。
 レトロなRPGを考えると解ると思うが
 あの世界には、服のサイズが無い。
 そう、着た者のサイズに自動で合うのだ。
 そんな服は存在しない。

-コイツらをこのまま解散は、
-させられねぇよな。
-言いふらされたら困るし。
-俺の奴隷にしちまうのが
-一番手っ取り早いが……。
-奴隷扱いは、したくねぇなぁ……、
-仲間ならいいんだが……。
-……………………………………………………。

-まぁ、いいか。

 シオンが導きだした答は、
 なるようになれだった。

 ハッキリ言って、最悪な答えである。 

「なぁ、お前ら。
 俺はこれからこの国で
 冒険者をやろうと思ってんだが
 お前らもやらないか?」

「お誘いは嬉しいのですが、
 今の僕達には身分が無いも同じなので
 街へ入る事すら許されません」

「街へは……入れるな。
 身分は……兄貴に頼むか」

「身分を?
 ……まさか、偽造?
 お言葉ですが、
 身分詐称は重罪ですよ?」

「大丈夫だろ」

 顎に手をやり、

「…………あぁ、
 でもタダじゃやっては、
 くれねえよなぁ」

 タダじゃない。
 その言葉に反応するフランク。

「お金……ですか……、
 僕らはこのまま奴r……」

 『奴隷として』と言いかけた所、
 シオンが声を被せる。

「ちょっと、交渉材料集めてくる」

 聞いていなかったかの様に言い……、
 いや、多分……絶対聞いてない。

 洞窟内全域に
 [身体回復結界]、
 [不可侵結界]、[防御結界]
 を展開した。

 [不可侵結界]はここ・・にいる少年少女に
 危害を加えようとするモノ。

「ここから出なけりゃ安全だから、
 少し待っててくれ」

 展開し終えると、
 洞窟に出現させていた
 [シオからドア]に向かい、
 とある場所へ転移していった。

 シオンは少年少女の様子を
 確認していないが、
 洞窟内は
 怪我をしていた者や飢餓近かった者、
 部位欠損していた者など、
 完全回復生あるモノに万全をしていった。

 30分くらい経っただろうか、
 少年少女が、置いていかれたのでは?
 という不安を抱き始める者が出始めた頃、
 少年少女のいる奴隷の間の出入口にぶっ壊した扉
 鉄扉が出現する。
 [シオからドア]である。

 その扉をシオンが、
 開けて入ってきた。

 右手には2mはありそうな
 大きく立派な純白のキバを持ち、
 左肩に体長50cmくらいの
 ルビーの様なキレイな眼の
 漆黒のトカゲが張り付いていた。

「シオンさん……、
 戻って来てくれて、
 ありがとうございます」

「すまんな、少し時間かかった」

「それで……、
 その手の物と肩のトカゲは……」

「誰がトカゲじゃ!」

 どこからかドスの効いた声がした。
 いや、どこからではない。
 シオンの肩に乗るトカゲからだ。

「トカゲが喋った!?」

「だからトカゲじゃないわ!」

「なぁ、トカゲって喋らないのか?」

「ご主人まで某をそれがし
 トカゲと申すか!?」

 シオンはキバを床に刺し、
 右手で頭を抑え、深い溜息をした。

「はぁ、なぁクロエ・・・
 お前がトカゲになるつったよな?」

「…………!?
 そうじゃ、某はトカゲじゃ。
 トカゲじゃぞ?」

「普通のトカゲは喋りませんよ」

「うぐっ……」

 フランクから漆黒のトカゲクロエへの
 手痛いツッコミである。

「なぁ、
 やっぱりトカゲは無理じゃないのか?
 人化も出来るんだろ?
 そっちにしないか?」

「……やだ」

「だから何で?
 あ、なら鳥はどうだ?
 鳥なら喋るのいるだろ?」

「そうてすね。
 鳥でしたら人の言葉を
 真似るのがいますね」

「鳥じゃと!?
 あんな3歩、
 歩いたら全て忘れる様なバカには
 なりとう無いわ!」

-ピッタリじゃん。

「ご主人……、
 今良からぬ事を考えておらぬか?」

「き、気のせいだろ?」

「あの、結局そのイキモノは一体……」

 その答にシオンとクロエがハモる。

「ドラゴンだ」
「ドラゴンじゃ」

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