魔違った世界

不報 刀姫

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魔違った世界(上)

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高校2年生の4月1日、俺は『俺』と出会った。

無駄に日付は覚えている、というか覚えやすいしそのときの俺の第一声が━━

「エイプリルフールか……?」

━━であったから日付に誤りはないハズだ。

なぜ今になってあの時のことを思い出すのか、それは今でもこの世界の常識と秩序が嘘であればいいなと思った結果かもしれないが、今さら遅い。

もう覚悟を決めた。この間違った世界を壊す覚悟を決めた。



3月31日の夜、春休みを遊ぶに遊んで満喫にして満足の満載だった余韻に浸りながらベッドに寝転ぶ。
明日から学校に通うのかぁ。
そう思うと少し、いやかなり憂鬱だったが明日は始業式ぐらいで他にやる事もなく下校するだろうから、まあ楽といえば楽である。それに、明日は4月1日だ。
世に言うエイプリルフール。
学校に通う憂鬱さを消し去るほどの一大イベント。
誰に嘘をついてやろうか。
どんな嘘をついてやろうか。
今から構想に耽る。
そうしているうちに微睡んできた、春休みが始まって
今日に至るまで遊びに明け暮れていた疲労も相まって
瞼は次第に重くなっていく━━━



「……ん」

目が覚めて枕元のデジタル時計を見る。
ぼやけた視界を瞬きを繰り返して調節する。
4月1日  (月)  5時25分
はえぇな。
昨日寝るのが早かったからか。
明日学校だから早寝早起きに徹した…わけでなく
遊び疲れて俺の電池が切れたのである。
しかし、どうしたものか。
もう一度寝るにしても既に目は完璧に覚めてしまった。
この勿体ない感覚を読者の皆はわかるかな?

「なに考えてんだ俺」

なんてな。
この世界が物語の中の世界であるわけがない、
まぁそうやって否定できる根拠は何処にもないが
肯定できる根拠も同じくらい何処にもない。

「…………」

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「……ヒマだな」

やっと口を開いてもこれである。
ヒマなのである。
まだ家族と対面して挨拶を交わすにも早すぎる時間に起きるととてつもなく空虚な感覚にさいなまれる。
とりあえず部屋の電気でも点けるか…と。
その際部屋の中央に目を向けたら黒くて大きな円形状の穴があった。
黒い丸にも見えなくもないが奥行きがあるように見てとれたから穴だろう。
でもなんで?

「…よいしょっと」

「……!?」

聞き覚えのある声がした。
それはこの前春休み中に友達と遊んでるサマを録画した動画を見返したときであった。

その動画を見て映った俺の口から出た声を聞いたとき俺はこう思った。
『俺ってこんな声してんだなぁ』
そのが穴の奥から聞こえた。
そして、その声の主が現れた。

「ふぅ…穴から穴まではちょっと歩くんだな…意外だ」

それは『俺』だった。

「エイプリルフールか……?」

そういや俺は昨日エイプリルフールでつく嘘の内容を考えていたな。
誰に嘘をついてやろうか。
どんな嘘をついてやろうか。
まさか、俺が俺に嘘をついてこようとは。

「よっ!『俺』!ちょいと交代してくんね?」

「……はい?」

何を言ってるんだ?
この『俺』は。

「まあ簡単に言えば俺は平行世界にいるもう一人の『俺』だよ」

「へい…こう……せか…い?」

「おいおい。同じ俺なのにノリ悪いじゃん!中二病的知識皆無じゃん!」

「あ、いやつまりパラレル・ワールドってやつか?」

「そうそう!俺のいるこちら側の世界じゃ、魔法が存在しているんだぜ?日常生活レベルで」

え?なに?

「……魔法?」

「で、こっちの世界に来れたってワケ。まあ最も他の平行世界に行けるのは俺ぐらいなもんで、同学年はもちろん一般の社会人どもにもムリだろうけどな。なにせ禁術だから教科書のどこにも載ってない。でも俺は天才だからこの魔法が使えちった」

あははは。と、笑う『俺』。
そっちの俺な天才なのか?羨ましい限りだが。

「それで何しに来たんだ?禁術とか犯してまで何がしたいんだ?」

「だから言ったじゃん?交代してくんね?って。俺天才だから学校で受ける魔法の授業がメンドーでさ、頼むよぉ~」

いや頼むよと言われても。
俺魔法使えないし、行ったところでボロが出るに決まっている。

「……」

あと怪しい。
未だに俺はこの状況が手の込んだドッキリなんじゃないかと、俺の知人が仕掛けたエイプリルフールジョークなんじゃないかと思ってしまう。

「安心しろ俺の記憶と使う魔法全てをコピーしてお前にやるよ
そうすればお前はアッチの世界でも恙無つつがなくやっていけるだろう」

記憶と魔法を授けてくれるならやりやすい。
だが待て。

「やっていけるだろうって、いつまで交代してるんだ?」

「俺が飽きるまで……」

「なっ!」

「うそうそジョーダン♪うそジョーダン~♪
一日もあれば俺は飽きると思うよ。魔法のある世界よりない世界のほうが刺激が少ないだろうからね。でも俺は魔法のない世界を味わってみたいんだよ」

「……」

逆に俺は魔法のある世界に興味がある……のかもしれない。
アニメやマンガの世界みたいなことが体験できるとあらば
嘘でもなんでも味わってみたい。

「わかった。交代してみよう」

「おう!ありがとな」

穴から出た『俺』は俺と入れ替わり立ち替わり、俺は穴に入った。

「じゃあ俺の記憶と魔法をお前にコピーすっからデコだしな」

前髪を持ち上げ額を『俺』に晒す。
『俺』は俺の額に人差し指を当てて約一秒。
これも魔法でやるのだろう。

「……あ」

記憶が流れ込んできた。
絶え間なく、16年間の記憶が順々に刷り込まれていく。
おぉすげぇ。魔法の名前と使い方が猛スピードでインプットされる。

「よし、大丈夫みたいだな」

『俺』は俺の額から指を離した。

「じゃあまたな」

「…あ、あぁ。またな」

『俺』に別れを告げ、
穴の中で振り返り歩みを進める━━








「ああ!ちょっと待て!言い忘れてたことがあった!」



━━のは阻まれた。
なんだよ。

「どした?」

「そっちの世界行ったらよ、俺の家……に限らず他の住宅、学校、公園、その他至る施設に設置してある『赤い扉』は絶対に開けるなよ?」

「…え?赤い扉?」

「そう。元々こっちの世界の人間であるお前は、
その扉を開けちゃ駄目だ」

うーん。なんだかよくわからんが駄目だというなら駄目なのだろう。

「とりあえずわかったよ」

「ならよし。じゃあ頑張れよ『俺』」

「あぁ、そっちも頑張れ『俺』」

再び俺は穴の中で振り返り歩みを進める。
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