42 / 85
これも大好き?
しおりを挟む真夜中の聖堂で、初めてのキスに酔い痴れたイブは再び神の像の前に跪いた。
「イブ、今夜はもう祈らないでください。膝が傷みます」
「今ね、なんだかできそうな気がするの」
背後に立っていたネオに向かってイブが麗らかに微笑むと、ネオはその美しさに時間が止まるようだった。もっと、キスしていたかった。
「今ネオにもらった幸せをね、皆に分けてあげたいような気分なの。
神に感謝して、祈らずにいられないわ」
「神は死にましたよ、イブ」
「ネオはそう言うけれど!私はいると思うわ!」
イブが神々しいまでの優しさを滲ませて祈り始める。ネオはイブの祈りの姿は永遠に見ていたいくらいに美しいと思っている。
だが、雨なんて降らなくていい。
イブの命を吸い上げる雨など、降らなくていい。
イブが祈ると、聖堂の窓の外で細い雨が降り始める。
イブはついに、雨を操り始めてしまった。
「ネオ!ネオ見て!!雨が降ったわ!」
立ち上がったイブが青い瞳を輝かせて、ネオに抱きついてくる。ネオは慌ててイブを支えて、その背を撫ぜた。
だが、雨なんて降らなくていい。
イブが雨に殺されてしまう。
雨に殺されるくらいなら、僕が殺したい。
悦びに満ちるイブを抱きしめて、ネオは胸に生まれてしまった狂気の想いを見定めた。
(これも……大好き)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
38
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる